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第二部 『呪いの序曲。イーガの魔王』 (少年編から青年編の間のエピソード。)
19 ホーデンエーネンからの留学生⑧
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馬車に乗り込んで扉が締まった後、急に視界が暗くなった。目が見える様になると馬車は目的地の屋敷の入口に停まっていた。
その入口はトンネルの様になっていて、入り口と出口しか外の景色が覗けなかった。いいや、光が当たるなだらかな登り道しか見えない。
御者によればここは、裏の出入口だそうだ。この邸宅は表の入口はとても長い。中庭を突っ切る直線の道である。
しかし表側に馬車をつけると周囲の景色がわかってしまい、この屋敷がどこにあるのかがわかってしまうから裏から入ったのだと聞かされた。
(相当に用心深いなあ。もしかしたらやんごとなきところのお方なのかもしれない。)
マイヤは照明石で照らされる長い地下道を歩いた。魔法王国ではあるけれどこういうところは横着させてくれないんだなあ。
(『えくすぷれす』とか動く歩道とかあるのに。健康のためなのかな?)
5分程歩いた。突き当りに大きな昇降機が。柵を外した御者がマイヤに呼びかける。乗ってください。
「『えれべーたー』があるなんて。何から何までイーガは凄いところなのですね?」
「その名前をよくご存じで。我が国には300年程前からあるのですよ」
深々と帽子をかぶっていたその御者は、口ひげを撫でながら上の階にあがるボタンを押した。
「300年! そんな昔から!」
「発明したのはとある魔道士。どうも転生人らしくこれの原型を存じていた様ですね。その魔道士はこれのことを、お嬢さんがおっしゃる『えれべーたー』と名づけたそうですよ」
そうだったのか、マイヤは御者に笑顔を向ける。この男は神経質そうな顔をしていた。整った顔立ちをしているが背はそれほど高くない。165センチあるか無いか。優男である。
エレベーターはしばらくしてから停まった。御者が柵を閉じる。出入口には金髪の少年が待っていた。背が高く、とても良いにおいを放つ怜悧そうな美少年だった。
「はじめまして。マイヤ=カモセンブルグ様。この館のあるじの秘書の、オットー=オーズローでございます」
マイヤはスカートを手で掴んで少し上げ、お辞儀をする。
「お若いとお見受けいたしましたが、失礼ですがお歳をお聞きしてよろしいでしょうか?」
「15になります。ホーデンエーネンで言うところの火龍の月……5月の3日の産まれになりますので、もう少しで16になりますね」
「うふふ。私の4歳年上でございますのね。私は走狼の月……10月の1日になりますの」
そうですか。オットーはそっけなく答えた。秘書としてはまだ見習いだと付け加えた。
「まあ! 他にも秘書の方はいらっしゃるのですか?」
オットーは薄く笑っただけで何も答えなかった。これからあるじの『慰み人形』にされる女に興味など無い。さあこちらへ、と出口を手で指し示す。
(あ、コイツ、私のことが気に食わないタイプなんだな!)
オットーは無駄話に乗るつもりはなかった。それよりもマイヤの言葉遣いや、でかい乳房に邪魔されながらも優美そうに振舞う姿に嫌悪を覚えていた。
(なんだこの子は? 実際はうんちぶりぶりひねるちっこいがきんちょみたいな性格をしているくせに、成金令嬢みたいな言葉遣いと礼儀作法を覚えているとはね。)
オットーはそういう女が大嫌いだった。裏と表の差が激しいのは好きになれない。そういう奴は得てして悪知恵が働くものだとあるじの友人を何人か見て判別の手段にしていた。
エレベーターの入口で2人のことをうかがっていた御者が、にやりと笑った。オットーの頭の中に直接声が響いてきた。
「お前はどうもこの手の娘が苦手なようだな、オットー?」
「心を読んでおりましたか。あいかわらず殿下は性格が悪い」
そう言うな。御者は入り口の扉を開けたオットーに念話魔法で呼びかける。この御者こそこの屋敷のあるじであるアドルフ=トードヴェル=キョウゴクマイヤーだった。
□ □ □ □ □
屋敷の子供達は驚いていた。ホーデンエーネンで最も有名な美少女である『おしゃぶり姫』が、まさか自分達の前にいるとは。
(うわあああ……おっぱいでっかい。)
アドルフの娘達はただただマイヤの乳に視線を注いでいた。上着をかけていても胸のあたりの盛り上がりが目立ってしまう。
決して太っている訳ではない。妊娠してお腹がぽっこりとし出していたが、マイヤは細身のほうである。自分達と大して歳が変わらないのにこれだけ育つのはどういう事だと不思議でならなかった。
子供達の中で平然としていたのは、今のマイヤがどれだけ『でかぱい』なのかを見て知っていたマレーネだけ。マルティンはマイヤを見たきり、胸の鼓動が早くなって声が出なかった。
(ど、ど、どうしよう……)
マルティンは勃起していた。それを知られない様にわざとしゃがみこんで気分が悪いふりをする。
「坊ちゃまはお加減が悪いようです」
オットーはマルティンの今日の講義は中止させようと考えてマイヤに言った。しかしマルティンはオットーに訴える様な目を向ける。このレッスンは是非とも参加したい。何せ初恋の相手がいるのだ。
「……どうやら大丈夫なそうです。では、案内いたしますのでよろしくお願い致します」
マイヤは講義を行う部屋に通された。窓の外は庭ばかり。ここが街のどこに当たるかわからない。彼女はそれとなく子供達のうち1人に問いかけた。
「コーヅケーニッヒの郊外です。南のほうとだけしか教えられないと、おじいちゃまに言われました」
そのコーヅケーニッヒの郊外というものだが、大貴族や富豪の邸宅はごまんとある。どこにあたるか判別がつかない。時計を見て出発してから30分程経っているのではないかと考えた。
南の方角なのはわからなくもない。学問所は街の南側にある。『えくすぷれす』の駅から大体南西に500メートルほどだ。
30分ぐらいあれば馬車で急げば郊外に出られるだろう。マイヤはうなずくことにした。
「……このおうちはどこのお家なのか、こっそり教えていただけますか?」
「それだけは言えません。おじいちゃんはお仕事を止めてここに移り住んでいるんです」
屋敷は彼女達の祖父の隠居所。その人物はどこの誰かは教えられないと女の子は答えた。他の子に尋ねても「だめです」と返される。マイヤは諦める事にした。
(ずいぶんな秘密主義だなあ。大富豪はたぶん嘘。もっと凄いところのおうちなのかもしれないね。けど、余計な詮索はやめておこう。)
子供達は皆、自分が王太子アドルフの子ではなく、さる隠居富豪の孫達と言え、と厳命されていた。もちろん使用人や妾達にも。屋敷はコーヅケーニッヒに郊外にある、と答える様にも約束させられていた。
王太子の屋敷でその住人であることがばれたら、マイヤを利用してイーガの機密を知ろうとする悪党が出て来るかもしれない。そういう理由をつけた。
「……では、これから皆さまにホーデンエーネンの事を語ろうといたしますが、まずどういった事をお話していけばよろしいでしょうか?」
知っている限りのホーデンエーネンの歴史と地理から始めるか、と思ったその時に、クララの娘で7歳になるザビーネがマイヤの胸をじっと見ながら問いかけた。
「ホーデンエーネンの女の人は、おっぱいがすぐに大きくなるんですか?」
マイヤがうふふと笑う。触ってみるかね、おじょうちゃん。減るもんじゃないから揉んでみても良いのだぞ。そんな余裕の台詞を吐けそうな優越感に浸りながら答えた。
「おっぱいの大きさはホーデンエーネンでも人それぞれですけれど……ウシさんや山羊さんのおちちを毎日飲むと、私みたいにおおきなものになると向こうでは言われておりますよ」
牛や山羊のミルクを飲むのは健康にいい、と言われているのは万国共通。南のシマナミスタンでは女の多くは乳房がでかかった。乳を使った料理が多いからと言われている。
マイヤも幼い頃からコップ1杯のミルクを飲む事にしていた。とはいえ彼女のおっぱいを男好みに魔改造したのは男の精を求めるサキュバスの祖先の血と、とんでもない栄養ドリンクであるイズヴァルトの精液を日に何べんも呑んだからである。
「なるほど。おちちを飲むとそうなるのですね!」
「はい。なので毎日コップ1杯でもいいので、ウシさんや山羊さんのおちちを飲むようにつとめてください。先生からはそれだけを助言いたしますね」
「わかりました! ザビーネもマイヤせんせいみたいに、でかでかなおっぱいになりたいと思います!」
他の女の子達も「わたしも!」と叫んだ。万国共通、男が巨根になりたがるのと同じく、女達は巨乳を欲する。知性や技術、美貌が手に入っても大きなおっぱいが無ければと皆が思う。
少年のペニスサイズのクリトリスを持つオットーは、横で聞いていて内心苛立っていた。彼女は平板である。自分はあまり育たずに第二次性徴を終えてしまったという劣等感があった。
生理というのも訪れていない。医者からは子供ができない身体だと診断されてしまっていた。マイヤに対して嫌悪感を抱いていたのは、彼女が巨乳でしかも妊娠しているという事実もあったからだ。
マイヤは打ち解け始めたと思い、まずはホーデンエーネンの歴史から教える事にした。知っているかもしれないが、という態で語りかける。
ホーデンエーネンはキンキ大陸中南部のアスカウとその西にあるタカイチゲンシュタットという土地を領していた豪族であった。
キンキ大陸の戦国時代に数多くの敵国を征服し、キンキ大陸の大部分を制圧した。しかしこのイーガと魔竜が住むアカサカチハヤには連戦連敗。海外遠征も失敗に終わった。
「つまりは、キンキ大陸でしかイキることが出来ない軍事国家なのですが、そのへんは皆さんもご存じですよね?」
「はーい! イキリ武者ばかりだってのは、他の先生からも教えられてまーす!」
「よろしい事ですわ。大体ある程度まで領土を広げると、途端に戦争が負け続ける様になるのが国家の常だと歴史家先生がたも語っておいでです。占領された地域のみんなが、占領した国に対して愛着を持っていなかったり、反発心を抱いているからそうなるんだと先生は思いますけど……」
ホーデンエーネンは滅ぼした各王国の傍流に姫を嫁がせ、王家に近い大貴族としてその地方を分け与えるやり方をしていたから失敗した、などと訳知り顔で語って講義を続けた。
それから地理の話もつづけて約1時間半。マイヤは初の講義を終えた。オットーから約束の銀貨15枚を渡されると、送り迎えてくれる子供達に手を振って馬車に乗って帰って行った。
□ □ □ □ □
マイヤが戻って来るとイズヴァルトは彼女に、馬車を追いかけた事とすぐに見失ってしまった事を話した。それからどうにもうさんくさい気配がする。
「マイヤ。このおしごとは止めにするでござるよ」
「どうして? 何も悪いことされなかったよ?」
「今はそうでござろうが、いずれ何かをされるかもしれないでござる。だいたい、どこのお屋敷でなんというお家なのかも教えられぬとは、やはり何かがにおうでござるよ」
「なかなかに良いお屋敷と礼儀正しい子供達だったのに……でも、イズヴァルトが言う事もわからなくもないよ。何で秘密にしたがるんだろうかって私も疑っていたし」
マイヤも仕方なく今回はあの講義を1回きりに、と申し出る事を決めた。お金の事もイズヴァルトの父に頼んで送金して貰えばいい。
そもそもこのアルバイトも半分が気分転換する為に始めようとした事だ。うん。そうしよう。マイヤは今夜は夜遅くまでやっている店で食べようと告げ、イズヴァルトに抱き着いた。
「はああ。疲れたよ……」
1時間半のアルバイトでも仕事は仕事。気が疲れる。そのままベッドに抱え込まれ、スカートの中に顔を突っ込まれてクンニリングスを受け始めた。
「ああっ! いじゅばると!」
クリトリスとラヴィアが愛でられ、うごめいたと同時に子宮からも何かが盛んに動く気配がした。強い悦楽の波に飲まれてそれから、イズヴァルトのペニスを散々に貪った。
セックスの時間が彼女の心と体を癒してくれる。行為の後、白濁液を沢山吸い取ったヴァギナを見て、このペースだと2人目の赤ちゃんもすぐに来てくれるだろうなとマイヤは思った。
(留学は1年と聞いたけれど、もう1年続くかな。でもおそらく、1年後には2人目の赤ちゃんをお腹の中に収めて帰国するかも。)
しかしだ。その後はパラッツォ教との戦争が待っているかもしれない。イズヴァルトはきっと自分を置いて戦場に出て行くこととなるだろう。それは辛い。
(それだけは嫌だ。私はイズヴァルトといつでも一緒だと決めたんだもの。)
子供達には悪いが、そうなったら一緒に旅をしてもらう。赤ん坊が旅に耐えられる道具や方法も考えないと。
前世の記憶があるとはいえ、マイヤはまだ11歳の少女だ。やれるはずだという根拠なき自信に満ち溢れていた。
その入口はトンネルの様になっていて、入り口と出口しか外の景色が覗けなかった。いいや、光が当たるなだらかな登り道しか見えない。
御者によればここは、裏の出入口だそうだ。この邸宅は表の入口はとても長い。中庭を突っ切る直線の道である。
しかし表側に馬車をつけると周囲の景色がわかってしまい、この屋敷がどこにあるのかがわかってしまうから裏から入ったのだと聞かされた。
(相当に用心深いなあ。もしかしたらやんごとなきところのお方なのかもしれない。)
マイヤは照明石で照らされる長い地下道を歩いた。魔法王国ではあるけれどこういうところは横着させてくれないんだなあ。
(『えくすぷれす』とか動く歩道とかあるのに。健康のためなのかな?)
5分程歩いた。突き当りに大きな昇降機が。柵を外した御者がマイヤに呼びかける。乗ってください。
「『えれべーたー』があるなんて。何から何までイーガは凄いところなのですね?」
「その名前をよくご存じで。我が国には300年程前からあるのですよ」
深々と帽子をかぶっていたその御者は、口ひげを撫でながら上の階にあがるボタンを押した。
「300年! そんな昔から!」
「発明したのはとある魔道士。どうも転生人らしくこれの原型を存じていた様ですね。その魔道士はこれのことを、お嬢さんがおっしゃる『えれべーたー』と名づけたそうですよ」
そうだったのか、マイヤは御者に笑顔を向ける。この男は神経質そうな顔をしていた。整った顔立ちをしているが背はそれほど高くない。165センチあるか無いか。優男である。
エレベーターはしばらくしてから停まった。御者が柵を閉じる。出入口には金髪の少年が待っていた。背が高く、とても良いにおいを放つ怜悧そうな美少年だった。
「はじめまして。マイヤ=カモセンブルグ様。この館のあるじの秘書の、オットー=オーズローでございます」
マイヤはスカートを手で掴んで少し上げ、お辞儀をする。
「お若いとお見受けいたしましたが、失礼ですがお歳をお聞きしてよろしいでしょうか?」
「15になります。ホーデンエーネンで言うところの火龍の月……5月の3日の産まれになりますので、もう少しで16になりますね」
「うふふ。私の4歳年上でございますのね。私は走狼の月……10月の1日になりますの」
そうですか。オットーはそっけなく答えた。秘書としてはまだ見習いだと付け加えた。
「まあ! 他にも秘書の方はいらっしゃるのですか?」
オットーは薄く笑っただけで何も答えなかった。これからあるじの『慰み人形』にされる女に興味など無い。さあこちらへ、と出口を手で指し示す。
(あ、コイツ、私のことが気に食わないタイプなんだな!)
オットーは無駄話に乗るつもりはなかった。それよりもマイヤの言葉遣いや、でかい乳房に邪魔されながらも優美そうに振舞う姿に嫌悪を覚えていた。
(なんだこの子は? 実際はうんちぶりぶりひねるちっこいがきんちょみたいな性格をしているくせに、成金令嬢みたいな言葉遣いと礼儀作法を覚えているとはね。)
オットーはそういう女が大嫌いだった。裏と表の差が激しいのは好きになれない。そういう奴は得てして悪知恵が働くものだとあるじの友人を何人か見て判別の手段にしていた。
エレベーターの入口で2人のことをうかがっていた御者が、にやりと笑った。オットーの頭の中に直接声が響いてきた。
「お前はどうもこの手の娘が苦手なようだな、オットー?」
「心を読んでおりましたか。あいかわらず殿下は性格が悪い」
そう言うな。御者は入り口の扉を開けたオットーに念話魔法で呼びかける。この御者こそこの屋敷のあるじであるアドルフ=トードヴェル=キョウゴクマイヤーだった。
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屋敷の子供達は驚いていた。ホーデンエーネンで最も有名な美少女である『おしゃぶり姫』が、まさか自分達の前にいるとは。
(うわあああ……おっぱいでっかい。)
アドルフの娘達はただただマイヤの乳に視線を注いでいた。上着をかけていても胸のあたりの盛り上がりが目立ってしまう。
決して太っている訳ではない。妊娠してお腹がぽっこりとし出していたが、マイヤは細身のほうである。自分達と大して歳が変わらないのにこれだけ育つのはどういう事だと不思議でならなかった。
子供達の中で平然としていたのは、今のマイヤがどれだけ『でかぱい』なのかを見て知っていたマレーネだけ。マルティンはマイヤを見たきり、胸の鼓動が早くなって声が出なかった。
(ど、ど、どうしよう……)
マルティンは勃起していた。それを知られない様にわざとしゃがみこんで気分が悪いふりをする。
「坊ちゃまはお加減が悪いようです」
オットーはマルティンの今日の講義は中止させようと考えてマイヤに言った。しかしマルティンはオットーに訴える様な目を向ける。このレッスンは是非とも参加したい。何せ初恋の相手がいるのだ。
「……どうやら大丈夫なそうです。では、案内いたしますのでよろしくお願い致します」
マイヤは講義を行う部屋に通された。窓の外は庭ばかり。ここが街のどこに当たるかわからない。彼女はそれとなく子供達のうち1人に問いかけた。
「コーヅケーニッヒの郊外です。南のほうとだけしか教えられないと、おじいちゃまに言われました」
そのコーヅケーニッヒの郊外というものだが、大貴族や富豪の邸宅はごまんとある。どこにあたるか判別がつかない。時計を見て出発してから30分程経っているのではないかと考えた。
南の方角なのはわからなくもない。学問所は街の南側にある。『えくすぷれす』の駅から大体南西に500メートルほどだ。
30分ぐらいあれば馬車で急げば郊外に出られるだろう。マイヤはうなずくことにした。
「……このおうちはどこのお家なのか、こっそり教えていただけますか?」
「それだけは言えません。おじいちゃんはお仕事を止めてここに移り住んでいるんです」
屋敷は彼女達の祖父の隠居所。その人物はどこの誰かは教えられないと女の子は答えた。他の子に尋ねても「だめです」と返される。マイヤは諦める事にした。
(ずいぶんな秘密主義だなあ。大富豪はたぶん嘘。もっと凄いところのおうちなのかもしれないね。けど、余計な詮索はやめておこう。)
子供達は皆、自分が王太子アドルフの子ではなく、さる隠居富豪の孫達と言え、と厳命されていた。もちろん使用人や妾達にも。屋敷はコーヅケーニッヒに郊外にある、と答える様にも約束させられていた。
王太子の屋敷でその住人であることがばれたら、マイヤを利用してイーガの機密を知ろうとする悪党が出て来るかもしれない。そういう理由をつけた。
「……では、これから皆さまにホーデンエーネンの事を語ろうといたしますが、まずどういった事をお話していけばよろしいでしょうか?」
知っている限りのホーデンエーネンの歴史と地理から始めるか、と思ったその時に、クララの娘で7歳になるザビーネがマイヤの胸をじっと見ながら問いかけた。
「ホーデンエーネンの女の人は、おっぱいがすぐに大きくなるんですか?」
マイヤがうふふと笑う。触ってみるかね、おじょうちゃん。減るもんじゃないから揉んでみても良いのだぞ。そんな余裕の台詞を吐けそうな優越感に浸りながら答えた。
「おっぱいの大きさはホーデンエーネンでも人それぞれですけれど……ウシさんや山羊さんのおちちを毎日飲むと、私みたいにおおきなものになると向こうでは言われておりますよ」
牛や山羊のミルクを飲むのは健康にいい、と言われているのは万国共通。南のシマナミスタンでは女の多くは乳房がでかかった。乳を使った料理が多いからと言われている。
マイヤも幼い頃からコップ1杯のミルクを飲む事にしていた。とはいえ彼女のおっぱいを男好みに魔改造したのは男の精を求めるサキュバスの祖先の血と、とんでもない栄養ドリンクであるイズヴァルトの精液を日に何べんも呑んだからである。
「なるほど。おちちを飲むとそうなるのですね!」
「はい。なので毎日コップ1杯でもいいので、ウシさんや山羊さんのおちちを飲むようにつとめてください。先生からはそれだけを助言いたしますね」
「わかりました! ザビーネもマイヤせんせいみたいに、でかでかなおっぱいになりたいと思います!」
他の女の子達も「わたしも!」と叫んだ。万国共通、男が巨根になりたがるのと同じく、女達は巨乳を欲する。知性や技術、美貌が手に入っても大きなおっぱいが無ければと皆が思う。
少年のペニスサイズのクリトリスを持つオットーは、横で聞いていて内心苛立っていた。彼女は平板である。自分はあまり育たずに第二次性徴を終えてしまったという劣等感があった。
生理というのも訪れていない。医者からは子供ができない身体だと診断されてしまっていた。マイヤに対して嫌悪感を抱いていたのは、彼女が巨乳でしかも妊娠しているという事実もあったからだ。
マイヤは打ち解け始めたと思い、まずはホーデンエーネンの歴史から教える事にした。知っているかもしれないが、という態で語りかける。
ホーデンエーネンはキンキ大陸中南部のアスカウとその西にあるタカイチゲンシュタットという土地を領していた豪族であった。
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「つまりは、キンキ大陸でしかイキることが出来ない軍事国家なのですが、そのへんは皆さんもご存じですよね?」
「はーい! イキリ武者ばかりだってのは、他の先生からも教えられてまーす!」
「よろしい事ですわ。大体ある程度まで領土を広げると、途端に戦争が負け続ける様になるのが国家の常だと歴史家先生がたも語っておいでです。占領された地域のみんなが、占領した国に対して愛着を持っていなかったり、反発心を抱いているからそうなるんだと先生は思いますけど……」
ホーデンエーネンは滅ぼした各王国の傍流に姫を嫁がせ、王家に近い大貴族としてその地方を分け与えるやり方をしていたから失敗した、などと訳知り顔で語って講義を続けた。
それから地理の話もつづけて約1時間半。マイヤは初の講義を終えた。オットーから約束の銀貨15枚を渡されると、送り迎えてくれる子供達に手を振って馬車に乗って帰って行った。
□ □ □ □ □
マイヤが戻って来るとイズヴァルトは彼女に、馬車を追いかけた事とすぐに見失ってしまった事を話した。それからどうにもうさんくさい気配がする。
「マイヤ。このおしごとは止めにするでござるよ」
「どうして? 何も悪いことされなかったよ?」
「今はそうでござろうが、いずれ何かをされるかもしれないでござる。だいたい、どこのお屋敷でなんというお家なのかも教えられぬとは、やはり何かがにおうでござるよ」
「なかなかに良いお屋敷と礼儀正しい子供達だったのに……でも、イズヴァルトが言う事もわからなくもないよ。何で秘密にしたがるんだろうかって私も疑っていたし」
マイヤも仕方なく今回はあの講義を1回きりに、と申し出る事を決めた。お金の事もイズヴァルトの父に頼んで送金して貰えばいい。
そもそもこのアルバイトも半分が気分転換する為に始めようとした事だ。うん。そうしよう。マイヤは今夜は夜遅くまでやっている店で食べようと告げ、イズヴァルトに抱き着いた。
「はああ。疲れたよ……」
1時間半のアルバイトでも仕事は仕事。気が疲れる。そのままベッドに抱え込まれ、スカートの中に顔を突っ込まれてクンニリングスを受け始めた。
「ああっ! いじゅばると!」
クリトリスとラヴィアが愛でられ、うごめいたと同時に子宮からも何かが盛んに動く気配がした。強い悦楽の波に飲まれてそれから、イズヴァルトのペニスを散々に貪った。
セックスの時間が彼女の心と体を癒してくれる。行為の後、白濁液を沢山吸い取ったヴァギナを見て、このペースだと2人目の赤ちゃんもすぐに来てくれるだろうなとマイヤは思った。
(留学は1年と聞いたけれど、もう1年続くかな。でもおそらく、1年後には2人目の赤ちゃんをお腹の中に収めて帰国するかも。)
しかしだ。その後はパラッツォ教との戦争が待っているかもしれない。イズヴァルトはきっと自分を置いて戦場に出て行くこととなるだろう。それは辛い。
(それだけは嫌だ。私はイズヴァルトといつでも一緒だと決めたんだもの。)
子供達には悪いが、そうなったら一緒に旅をしてもらう。赤ん坊が旅に耐えられる道具や方法も考えないと。
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