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第二部 『呪いの序曲。イーガの魔王』 (少年編から青年編の間のエピソード。)
18 ホーデンエーネンからの留学生⑦
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「ふはははは! わはははは!」
書斎の机に置いた水晶版の前で、アドルフは1人爆笑していた。まさか世のイーガ人女性の多くに「たっくさん種付けされたい♥」と言われる程の若武者イズヴァルトに、こんな趣味があったとは。
「下半身以外は清廉潔白な美少年騎士にこんな趣味があったとはな! 見てみろオットー。こいつは傑作だ!」
彼の小姓、凛々しい美童の様な美少女のオットーはふてくされていた。私には全く興味がありません。イズヴァルトとマイヤの盗撮映像は何度も見せてもらったが、主の様に笑えなかった。
(趣味が悪すぎる。しかも悪趣味極まりないヘンタイどもの隠し撮りを見せられるなんて……)
「オットー。興味が無さそうだな! そこにいるマレーネはそうでも無いようだが?」
はい、と女の子の声がした。アドルフの娘の1人のマレーネの声だった。子供達のうち彼女だけ、この隠し撮りを見せてもらうことが出来た。
父がたまたま見ていた時に書斎に入り、見つけてしまったからである。父の妾や姉妹達には内緒という事で毎日一緒に見ていた。
彼女は父が悪いことをしていると思っていない。リアリティーショー番組を視聴している程度の感覚だ。
彼女はイズヴァルトよりもマイヤに愛着を覚えていた。映像の中の彼女はつんとしたところがどこにも無く、愛嬌たっぷりで打ち解けやすそうに思えたからだ。
それと、うんちをよくするのも気に入っていた。なんだか赤ちゃんみたい。盗撮の魔法はトイレにもかけられていた。
「おとうちゃま。今日もマイヤちゃんはまた鏡の前で元気にうんちをひねっているのですか?」
「ああそうだ。今度はイズヴァルトとつながりながら糞をひねっておる!」
大鏡には盗撮の為の術式を仕込んでいた。イズヴァルトがマイヤに鏡の前で排泄させる様になったのは、今日で6日目である。
「マレーネ。イズヴァルトが『赤ちゃん』の尻を拭きだしたぞ」
「見せてください!」
びっこを引きながらマレーネが水晶版の前に。大鏡の前でイズヴァルトがマイヤの尻に水をかけ、手ぬぐいで拭くところが映っていた。マレーネは嬉しそうに笑うとオットーに呼びかけた。
「オットー、おしっこ出た?」
「……はい」
オットーは床の上に敷かれた毛布の上に寝転がっていた。彼女はおむつをつけさせられていた。マレーネがあかちゃんごっこをしたいとせがんだからだ。
(何でまた私がこんな事を……)
マレーネがやって来ておむつを取り外す。布は尿で濡れていた。マレーネはそれを2つある桶の内の空っぽの方に投げ込んだ。
「さあさあ。きれいにしましょうね。オットーちゃん!」
マレーネは水を入れた桶の中に入っていたてぬぐいを絞り、オットーの陰部を清め始めた。男根状になっているクリトリスやラヴィアの溝など、丹念に拭き清めて来る。
「あ……っ……」
感じてしまってオットーは甘いため息をついた。それをマレーネはとがめた。赤ちゃんが変な声を出すんじゃない。
「ばぶー、とか、あきゃあ、とか笑うものでしょ?」
「そ、そうでしたね。ばぶー」
「いいこねオットーちゃん。まだまだ拭き足りないから大人しくしててね」
「ばぶー」
やれやれだ、と思いながらオットーは任せる。マレーネは尿口だけでなく産道の入口手前まで清める。がしがしという拭き方では無い。布がそっと触れる様にして感じさせる様なやり方だった。
「ば、ばぶううう!」
「あらあらいいこ! オットーちゃん。もうちょっときれいにしないとねー!」
「ばあぶうう……。 (そろそろ止めていただきたいのですが。)」
マレーネはオットーのペニスが勃起し、ラヴィアとその周囲が盛り上がっていたのに気づいていた。陰裂から蜜がとろとろとあふれ出る。あらあら、汚しちゃっているわよ赤ちゃん。
濡れ布巾による愛撫でオットーは身もだえした。それをマレーネが「だめ!」と叱る。アドルフはげらげらと笑ってそれを見ていた。
マレーネとオットーの『赤ちゃんごっこ』が終わると、マレーネは他の妹達とやって来ると言って部屋から出て行った。服を着直したオットーはあるじに尋ねた。
「野放しにして良いのですか?」
「構わんよ。他の娘達や妾どもも、ああいう娯楽を覚えればいいと思っているぐらいだ」
「殿下はなかなかに度量がおありですね……ところで」
オットーは魔道学問所の校長を通して、マイヤに家庭教師の仕事の案内したと告げた。今のところマイヤだけ学問所の講義は1時間短いが、月曜と水曜にもう1時間短くすることにしたと。
「家庭教師としての仕事は2時間。内容はホーデンエーネンについての諸々。給料は日当でイーガ銀貨15枚というまあまあの破格の値になりますが」
「学校から馬車で迎える。この屋敷の場所とどういう家族かは臥せる。イーガの貯蓄暮らしの大富豪とでも名乗るよ。家族や使用人にもマイヤの前では王族だと言わせない様に申し伝えておく」
授業を受けるマルティン達には、講師となるマイヤがスパイの疑いで内偵を続けていると嘘を教えるつもりだ。
賢いマルティンはどうして敵を招き入れるのかと反発しそうだが、あの『おしゃぶり姫』はイーガの貴族社会に人脈を作り、度が過ぎる親ホーデンエーネン派を築こうと考えていると諭すつもりだ。
ホーデンエーネンとは不戦条約を締結しているが、いつ何時攻めて来るかわからない。内部工作で結束を瓦解させようと目論む恐れもある。
貴族や富豪達からは、イズヴァルトとマイヤを招いてパーティを行いたいという話があったが、アドルフはそれを止めさせていた。2人によって篭絡されるかもしれない。
(間諜どもの話によれば、イーガと戦争をした記憶がある向こうの大貴族の長老どもがいまだイーガの領土に固執しているそうだからな。やれやれだ。戦争で勝った事が殆どないのに諦めが悪い。)
□ □ □ □ □
「イズヴァルト。私、お仕事をする事になったの!」
「どういうお仕事でござる?」
「家庭教師よ。ホーデンエーネンの歴史や文化を教えるだけでいいって」
しかも2時間足らずの1回の授業で、イーガ銀貨15枚もくれるという。おいしい話でござるな、とイズヴァルトは笑った。
「……正直、ホーデンエーネンにいる時よりお金は稼げないけどね」
彼女が言うのは事業の他に貴族や富豪に楽しませていた『おしゃぶり』のアルバイトのことである。ホーデンエーネンでは日に銀貨20枚得られた。
それをほぼ毎日やって彼女は銀行に専用の金庫を設ける事が出来た。イズヴァルトに額は内緒だが、既に大きな邸宅を建てるぐらいは貯めている。
イズヴァルトが何かあった時、あるいは彼と別れた時に自立する為と総合大学を建てる夢の資金だった。
別れるつもりはもう無い。そもそもイズヴァルトと一緒に死にたいとまで思える程愛しているし、異国でだが結婚式をあげた。赤ん坊も出来た。
「しかし。そんなにお金を欲しがってどうするつもりでござるか? 王様から毎月のお給料はもらっておるし、この家もタダで住まわせて貰っているでござるのに?」
「こうしておいしいお料理屋さんで食べたいからに決まっているじゃない?」
マイヤはテーブルの上に出された大エビのクリームがけ料理の皿に手を伸ばした。海に隣接するイーガでは海鮮料理が多い。
むき出しにされたエビの肉にフォークを突き立てると、マイヤはそれを口の中に入れる。ぷりぷりしていて美味しい。
「イズヴァルトも食べなよ。私のおごりだから!」
「ま、まあ。いただくでござるよ……」
イズヴァルトはヒラメのムニエルの皿を取った。なかなかの味である。学問所で知り合った美食好きの学生が教えてくれた事はある。この店の料理はなかなかに良い。
「けど、どこに家があるのかわからない様にするとか、どんなお名前の一家かは教えられないみたいなの。それと、そこのおうちの家庭教師をしていることをみんなにしゃべっちゃ駄目だとか、いろいろとね」
「と、なればかなり位の高い大貴族になるでござろうな。きっと用心をしたいのでござるよ」
イーガにはまだ反ホーデンエーネンの気持ちを持った大貴族が中枢にいて、ホーデンエーネン人がそうした貴族の家に出入りするのを嫌がっているのではないのかとイズヴァルトは語った。
「でもイズヴァルト。ホーデンエーネンとイーガで最後の戦いがあったのは50年近く前だよ?」
「きっと長老衆でござろう。ホーデンエーネンもおじいさんたちの中にはイーガを嫌う方が多くいるでござる。何よりあのエレクトラを差し向けた者こそ、イーガのそうした勢力から、かもしれぬでござるな」
「……そうだね」
途端に食事が味気ないものになってしまった。この国で陰謀に巻き込まれるのは嫌だ。特にイーガは魔道が世界中のどこよりも発達している。暗殺なんて得意芸みたいなものだろう。
「まあでも、マイヤが家庭教師をやりたいのであればそう致すでござる」
「イズヴァルトは誰かにお呼ばれされないの?」
「今のところは、でござるよ」
彼は最近、学問所の女生徒達からじろじろと見られている事に気が付いていた。彼女達からよからぬお誘いが来るかもしれない。しかしマイヤが妊娠したので断るつもりだ。
店で食べた料理はその後も味気なかった。その代わり精がついた。家に帰るとイズヴァルトとマイヤはいつもの様に激しく愛し合い、深い眠りについた。
マイヤの寝相はとにかく悪い。イズヴァルトは彼女に口の中にかかとを突っ込まれたり、夢を見ながらちんぽをしゃぶられたりもした。しかし射精を伴うその時に見るのは、恋人との甘い物語だった。
□ □ □ □ □
学問所の講義が始まってから丁度1カ月以上が経った。講義は理論から実践に入り、ようやくマイヤも本腰を入れる様になった。
とはいえ彼女の身体が秘める魔法の量は少なく、実技の考査では落第、と講師に言われる程。しょんぼりとしたマイヤはイズヴァルトをトイレに連れ込み、彼のペニスをしゃぶりたてた。
「ちゅぱちゅぱちゅぱ! (くやしいよう!)」
「そ、そんなに音をたててしゃぶり込まないで欲しいでござる!」
「ちゅぴいい! (イズヴァルトのばかばかばか! 理論では及第点程度なのに、実技では満点を取るなんてひどいよ!)」
「ま、マイヤ……あふう!」
イズヴァルトが濃い精液をマイヤの口に含ませる。美味しい飲み物を得たマイヤはそれから口を離し、鈴口にキスをした。
「悔しい時に美味しい飲み物をくれてありがとう。だいすき!」
もう一度ペニスにキスを。イズヴァルトは便所の外に物音がしない事に安心していた。これがばれたら停学になるだろうか。
「試験はともかく、今日が家庭教師のお仕事の最初の日でござるな?」
「うん。私を励ましてくれるかな?」
マイヤはまたも勃起を頬張り始めた。吸い立てがきつい。仕事前に活力が得られるもう一本の栄養ドリンクを飲むつもりだ。
口をすぼめて亀頭と雁に刺激を与える。イズヴァルトは悶えるのを抑えて息をひそめた。マイヤが自分のペニスをしゃぶる音だけが聞こえ、彼の欲情はますます高ぶった。
「うう……」
甘美な時間だ。しかし早々に終わらせなければならない。イズヴァルトは腹に力を込めてマイヤが欲しいもう一本を与えた。
「だめだよイズヴァルト。気持ちを和らげなくちゃ。たっぷり精液を放つためには、リラックスしなくちゃいけないんだよ?」
「それはおうちに帰ってからにするでござるよ。さあ、まだ誰も入って来てないからそそくさと出るでござる。支度を整えたら向かうのでござろう?」
ええ、とマイヤはうなずいてトイレの個室から出ると、洗面所で顔を洗い口をゆすいだ。トイレの前には誰もいなかった。後から出てきたイズヴァルトに行って来ると呼びかけた。
「夕方には戻って来るから! その後昨日のお店で食事に行こうよ!」
「わかったでござる!」
マイヤは妊娠しているのに廊下を走る。どうやって行くのだろうとイズヴァルトは興味を示した。印を切り音を消す魔法を靴にかけると、マイヤの後をついていく。
校門を出てすぐ右側に馬車が停まっていた。やや古ぼけた木肌にニスを塗っただけの安手のものだ。しかも車輪がついている。イーガのそこそこの馬車なら『浮き板』を使うものだが。
(あれがそうでござるな?)
どの様な雇い主なのだろう。イズヴァルトは興味が湧いていた。動き出す馬車を追いかける事にした。
コーヅケーニッヒの道は広く、ナントブルグの倍近くもある。それから街は碁盤の目の様に区画が整えられていた。戦争での防衛よりも居住性や経済を重視した造りの街だ。
学問所が面している大通りは特に、車道と歩道がしっかりと区別されていた。馬車が進行方向から右に曲がろうとする。
この時間帯は車道での殆ど通行が無かった。イズヴァルトはぶつかる恐れも無く横断し、曲がって言った馬車を追いかけようと横道に入った。
しかしである。視線の向こうには馬車の姿は無かった。石畳を転がる車輪の音や馬のにおいも何もかも。
(どういう事でござるか?)
相当に高度な『隠し』の魔法を使ったのだろうか。そうまでして人目に触れさせたくないという魂胆は何なのだろうか。イズヴァルトは道の向こうに目を向けたまま、疑念を抱いていた。
書斎の机に置いた水晶版の前で、アドルフは1人爆笑していた。まさか世のイーガ人女性の多くに「たっくさん種付けされたい♥」と言われる程の若武者イズヴァルトに、こんな趣味があったとは。
「下半身以外は清廉潔白な美少年騎士にこんな趣味があったとはな! 見てみろオットー。こいつは傑作だ!」
彼の小姓、凛々しい美童の様な美少女のオットーはふてくされていた。私には全く興味がありません。イズヴァルトとマイヤの盗撮映像は何度も見せてもらったが、主の様に笑えなかった。
(趣味が悪すぎる。しかも悪趣味極まりないヘンタイどもの隠し撮りを見せられるなんて……)
「オットー。興味が無さそうだな! そこにいるマレーネはそうでも無いようだが?」
はい、と女の子の声がした。アドルフの娘の1人のマレーネの声だった。子供達のうち彼女だけ、この隠し撮りを見せてもらうことが出来た。
父がたまたま見ていた時に書斎に入り、見つけてしまったからである。父の妾や姉妹達には内緒という事で毎日一緒に見ていた。
彼女は父が悪いことをしていると思っていない。リアリティーショー番組を視聴している程度の感覚だ。
彼女はイズヴァルトよりもマイヤに愛着を覚えていた。映像の中の彼女はつんとしたところがどこにも無く、愛嬌たっぷりで打ち解けやすそうに思えたからだ。
それと、うんちをよくするのも気に入っていた。なんだか赤ちゃんみたい。盗撮の魔法はトイレにもかけられていた。
「おとうちゃま。今日もマイヤちゃんはまた鏡の前で元気にうんちをひねっているのですか?」
「ああそうだ。今度はイズヴァルトとつながりながら糞をひねっておる!」
大鏡には盗撮の為の術式を仕込んでいた。イズヴァルトがマイヤに鏡の前で排泄させる様になったのは、今日で6日目である。
「マレーネ。イズヴァルトが『赤ちゃん』の尻を拭きだしたぞ」
「見せてください!」
びっこを引きながらマレーネが水晶版の前に。大鏡の前でイズヴァルトがマイヤの尻に水をかけ、手ぬぐいで拭くところが映っていた。マレーネは嬉しそうに笑うとオットーに呼びかけた。
「オットー、おしっこ出た?」
「……はい」
オットーは床の上に敷かれた毛布の上に寝転がっていた。彼女はおむつをつけさせられていた。マレーネがあかちゃんごっこをしたいとせがんだからだ。
(何でまた私がこんな事を……)
マレーネがやって来ておむつを取り外す。布は尿で濡れていた。マレーネはそれを2つある桶の内の空っぽの方に投げ込んだ。
「さあさあ。きれいにしましょうね。オットーちゃん!」
マレーネは水を入れた桶の中に入っていたてぬぐいを絞り、オットーの陰部を清め始めた。男根状になっているクリトリスやラヴィアの溝など、丹念に拭き清めて来る。
「あ……っ……」
感じてしまってオットーは甘いため息をついた。それをマレーネはとがめた。赤ちゃんが変な声を出すんじゃない。
「ばぶー、とか、あきゃあ、とか笑うものでしょ?」
「そ、そうでしたね。ばぶー」
「いいこねオットーちゃん。まだまだ拭き足りないから大人しくしててね」
「ばぶー」
やれやれだ、と思いながらオットーは任せる。マレーネは尿口だけでなく産道の入口手前まで清める。がしがしという拭き方では無い。布がそっと触れる様にして感じさせる様なやり方だった。
「ば、ばぶううう!」
「あらあらいいこ! オットーちゃん。もうちょっときれいにしないとねー!」
「ばあぶうう……。 (そろそろ止めていただきたいのですが。)」
マレーネはオットーのペニスが勃起し、ラヴィアとその周囲が盛り上がっていたのに気づいていた。陰裂から蜜がとろとろとあふれ出る。あらあら、汚しちゃっているわよ赤ちゃん。
濡れ布巾による愛撫でオットーは身もだえした。それをマレーネが「だめ!」と叱る。アドルフはげらげらと笑ってそれを見ていた。
マレーネとオットーの『赤ちゃんごっこ』が終わると、マレーネは他の妹達とやって来ると言って部屋から出て行った。服を着直したオットーはあるじに尋ねた。
「野放しにして良いのですか?」
「構わんよ。他の娘達や妾どもも、ああいう娯楽を覚えればいいと思っているぐらいだ」
「殿下はなかなかに度量がおありですね……ところで」
オットーは魔道学問所の校長を通して、マイヤに家庭教師の仕事の案内したと告げた。今のところマイヤだけ学問所の講義は1時間短いが、月曜と水曜にもう1時間短くすることにしたと。
「家庭教師としての仕事は2時間。内容はホーデンエーネンについての諸々。給料は日当でイーガ銀貨15枚というまあまあの破格の値になりますが」
「学校から馬車で迎える。この屋敷の場所とどういう家族かは臥せる。イーガの貯蓄暮らしの大富豪とでも名乗るよ。家族や使用人にもマイヤの前では王族だと言わせない様に申し伝えておく」
授業を受けるマルティン達には、講師となるマイヤがスパイの疑いで内偵を続けていると嘘を教えるつもりだ。
賢いマルティンはどうして敵を招き入れるのかと反発しそうだが、あの『おしゃぶり姫』はイーガの貴族社会に人脈を作り、度が過ぎる親ホーデンエーネン派を築こうと考えていると諭すつもりだ。
ホーデンエーネンとは不戦条約を締結しているが、いつ何時攻めて来るかわからない。内部工作で結束を瓦解させようと目論む恐れもある。
貴族や富豪達からは、イズヴァルトとマイヤを招いてパーティを行いたいという話があったが、アドルフはそれを止めさせていた。2人によって篭絡されるかもしれない。
(間諜どもの話によれば、イーガと戦争をした記憶がある向こうの大貴族の長老どもがいまだイーガの領土に固執しているそうだからな。やれやれだ。戦争で勝った事が殆どないのに諦めが悪い。)
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「イズヴァルト。私、お仕事をする事になったの!」
「どういうお仕事でござる?」
「家庭教師よ。ホーデンエーネンの歴史や文化を教えるだけでいいって」
しかも2時間足らずの1回の授業で、イーガ銀貨15枚もくれるという。おいしい話でござるな、とイズヴァルトは笑った。
「……正直、ホーデンエーネンにいる時よりお金は稼げないけどね」
彼女が言うのは事業の他に貴族や富豪に楽しませていた『おしゃぶり』のアルバイトのことである。ホーデンエーネンでは日に銀貨20枚得られた。
それをほぼ毎日やって彼女は銀行に専用の金庫を設ける事が出来た。イズヴァルトに額は内緒だが、既に大きな邸宅を建てるぐらいは貯めている。
イズヴァルトが何かあった時、あるいは彼と別れた時に自立する為と総合大学を建てる夢の資金だった。
別れるつもりはもう無い。そもそもイズヴァルトと一緒に死にたいとまで思える程愛しているし、異国でだが結婚式をあげた。赤ん坊も出来た。
「しかし。そんなにお金を欲しがってどうするつもりでござるか? 王様から毎月のお給料はもらっておるし、この家もタダで住まわせて貰っているでござるのに?」
「こうしておいしいお料理屋さんで食べたいからに決まっているじゃない?」
マイヤはテーブルの上に出された大エビのクリームがけ料理の皿に手を伸ばした。海に隣接するイーガでは海鮮料理が多い。
むき出しにされたエビの肉にフォークを突き立てると、マイヤはそれを口の中に入れる。ぷりぷりしていて美味しい。
「イズヴァルトも食べなよ。私のおごりだから!」
「ま、まあ。いただくでござるよ……」
イズヴァルトはヒラメのムニエルの皿を取った。なかなかの味である。学問所で知り合った美食好きの学生が教えてくれた事はある。この店の料理はなかなかに良い。
「けど、どこに家があるのかわからない様にするとか、どんなお名前の一家かは教えられないみたいなの。それと、そこのおうちの家庭教師をしていることをみんなにしゃべっちゃ駄目だとか、いろいろとね」
「と、なればかなり位の高い大貴族になるでござろうな。きっと用心をしたいのでござるよ」
イーガにはまだ反ホーデンエーネンの気持ちを持った大貴族が中枢にいて、ホーデンエーネン人がそうした貴族の家に出入りするのを嫌がっているのではないのかとイズヴァルトは語った。
「でもイズヴァルト。ホーデンエーネンとイーガで最後の戦いがあったのは50年近く前だよ?」
「きっと長老衆でござろう。ホーデンエーネンもおじいさんたちの中にはイーガを嫌う方が多くいるでござる。何よりあのエレクトラを差し向けた者こそ、イーガのそうした勢力から、かもしれぬでござるな」
「……そうだね」
途端に食事が味気ないものになってしまった。この国で陰謀に巻き込まれるのは嫌だ。特にイーガは魔道が世界中のどこよりも発達している。暗殺なんて得意芸みたいなものだろう。
「まあでも、マイヤが家庭教師をやりたいのであればそう致すでござる」
「イズヴァルトは誰かにお呼ばれされないの?」
「今のところは、でござるよ」
彼は最近、学問所の女生徒達からじろじろと見られている事に気が付いていた。彼女達からよからぬお誘いが来るかもしれない。しかしマイヤが妊娠したので断るつもりだ。
店で食べた料理はその後も味気なかった。その代わり精がついた。家に帰るとイズヴァルトとマイヤはいつもの様に激しく愛し合い、深い眠りについた。
マイヤの寝相はとにかく悪い。イズヴァルトは彼女に口の中にかかとを突っ込まれたり、夢を見ながらちんぽをしゃぶられたりもした。しかし射精を伴うその時に見るのは、恋人との甘い物語だった。
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学問所の講義が始まってから丁度1カ月以上が経った。講義は理論から実践に入り、ようやくマイヤも本腰を入れる様になった。
とはいえ彼女の身体が秘める魔法の量は少なく、実技の考査では落第、と講師に言われる程。しょんぼりとしたマイヤはイズヴァルトをトイレに連れ込み、彼のペニスをしゃぶりたてた。
「ちゅぱちゅぱちゅぱ! (くやしいよう!)」
「そ、そんなに音をたててしゃぶり込まないで欲しいでござる!」
「ちゅぴいい! (イズヴァルトのばかばかばか! 理論では及第点程度なのに、実技では満点を取るなんてひどいよ!)」
「ま、マイヤ……あふう!」
イズヴァルトが濃い精液をマイヤの口に含ませる。美味しい飲み物を得たマイヤはそれから口を離し、鈴口にキスをした。
「悔しい時に美味しい飲み物をくれてありがとう。だいすき!」
もう一度ペニスにキスを。イズヴァルトは便所の外に物音がしない事に安心していた。これがばれたら停学になるだろうか。
「試験はともかく、今日が家庭教師のお仕事の最初の日でござるな?」
「うん。私を励ましてくれるかな?」
マイヤはまたも勃起を頬張り始めた。吸い立てがきつい。仕事前に活力が得られるもう一本の栄養ドリンクを飲むつもりだ。
口をすぼめて亀頭と雁に刺激を与える。イズヴァルトは悶えるのを抑えて息をひそめた。マイヤが自分のペニスをしゃぶる音だけが聞こえ、彼の欲情はますます高ぶった。
「うう……」
甘美な時間だ。しかし早々に終わらせなければならない。イズヴァルトは腹に力を込めてマイヤが欲しいもう一本を与えた。
「だめだよイズヴァルト。気持ちを和らげなくちゃ。たっぷり精液を放つためには、リラックスしなくちゃいけないんだよ?」
「それはおうちに帰ってからにするでござるよ。さあ、まだ誰も入って来てないからそそくさと出るでござる。支度を整えたら向かうのでござろう?」
ええ、とマイヤはうなずいてトイレの個室から出ると、洗面所で顔を洗い口をゆすいだ。トイレの前には誰もいなかった。後から出てきたイズヴァルトに行って来ると呼びかけた。
「夕方には戻って来るから! その後昨日のお店で食事に行こうよ!」
「わかったでござる!」
マイヤは妊娠しているのに廊下を走る。どうやって行くのだろうとイズヴァルトは興味を示した。印を切り音を消す魔法を靴にかけると、マイヤの後をついていく。
校門を出てすぐ右側に馬車が停まっていた。やや古ぼけた木肌にニスを塗っただけの安手のものだ。しかも車輪がついている。イーガのそこそこの馬車なら『浮き板』を使うものだが。
(あれがそうでござるな?)
どの様な雇い主なのだろう。イズヴァルトは興味が湧いていた。動き出す馬車を追いかける事にした。
コーヅケーニッヒの道は広く、ナントブルグの倍近くもある。それから街は碁盤の目の様に区画が整えられていた。戦争での防衛よりも居住性や経済を重視した造りの街だ。
学問所が面している大通りは特に、車道と歩道がしっかりと区別されていた。馬車が進行方向から右に曲がろうとする。
この時間帯は車道での殆ど通行が無かった。イズヴァルトはぶつかる恐れも無く横断し、曲がって言った馬車を追いかけようと横道に入った。
しかしである。視線の向こうには馬車の姿は無かった。石畳を転がる車輪の音や馬のにおいも何もかも。
(どういう事でござるか?)
相当に高度な『隠し』の魔法を使ったのだろうか。そうまでして人目に触れさせたくないという魂胆は何なのだろうか。イズヴァルトは道の向こうに目を向けたまま、疑念を抱いていた。
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