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第二部 『呪いの序曲。イーガの魔王』 (少年編から青年編の間のエピソード。)

15 ホーデンエーネンからの留学生④

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 風が強い街は窓ガラスがほこりで汚れて曇りきり、テレパシーっぽいことでやりとりするのがなんだか切ない。

 愛する女性と別れてから、自分の命は葉隠に記されたような軽いものだと思い込む。

 離別の日に肩を落として背中を丸めながら婚約指輪を抜き取った愛する女性はそれを自分に返そうとしたが、武士は食わねど高楊枝の精神で捨てろと言ったからそうしてくれた。

 けれども誕生石が付いたそれは返してもらえば質屋で高く売れたのに、と後悔が頭の中でうずまいて、現実主義になると真夏の盛りのプロポーズして永遠の愛を確かめ合い、まさぐった時の夢見心地があっさりと無くなってしまう。
 
 寂しいなあ……

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 と、いうように意訳できる異世界の詩がある。ルビーで出来た指輪がうんたらかんたら、という題名だ。マイヤはイズヴァルト歌唱と演奏を日々、仕込ませていたた。

「窓がくもって外が見えないが、お外は風がびゅーびゅー吹いているでござーる! だまってないでなんとか言えでござーる!」

 ちなみにだがイズヴァルトは音程を外したことが無い。しかもよく通る美声だ。ギターの腕もそこそこ良い。別に剣を振るわなくても、これ一本で食えるぐらいの才能があった。

「誕生石はルビーでござーる! 貴殿の仰せが頭の中でぐるぐるするでござーる!」

 イズヴァルトはその他にも、『紅いジャコウエンドウの花』や『ロックンロールが大好きな未亡人』といった感じの異世界の歌を、マイヤから仕込まれていた。

「うあああー! とんでもなくすっごい夢を追いかける為に大空を飛び回るようにいそがしいでござるー!」
「涙は流れるものでござーる! 伝うものでござーる! 飾りなんかではないでござる! 覇ッ! 覇ッ! 覇ーッ! 砲ーッ!」
「硝子の様に繊細な少年時代を過ごす世代は、革命好き世代が熱く語る正義論が良心に突き刺さるから、そういうのはさよならしたいでござーる! ていうか、石畳道のブリキを蹴っ飛ばして、武勇伝ばかり語るつまらぬ大人になりたくないでござーる! もういちど拙者にちゅっちゅっちゅー!」

 何度も言おう。イズヴァルトは美声かつ音程を外さず、しかもマイヤが膣を潤わせるぐらい繊細に、ギターを弾ける。詩を作るのはともかく、吟遊詩人としての才能を持っていた。

「わあーっ! すごーい! イズヴァルト、とっても歌とギターがうまーい!」

 演奏が終わるとマイヤはいつも拍手をしてはしゃぐ。天はこの若者に武勇と魔力と体格と美貌と大きな逸物と優れた陰嚢だけでなく、音楽の才能も与えていたのである。田舎貴族だがお坊ちゃんでもあった。才や天運に乏しき者にとって、不公平そのものだ。

「イズヴァルト、私も『装飾用の偽黄金(注:そういう感じになる題名)』を唄うから弾いてー!」
「それなら弾けるでござるよ!」

「うあっ、うあっ、うあー! 装飾用の偽黄金! うあっ、うあっ、うあっ、肌がやけるようにあついなー! うあっ、うあっ、うあー! 装飾用の偽黄金! 今年のおまんこ友達は若いわねー!」

 声と歳と女を口説く用に語る夢とほくろの数が去年のセフレと違う、などという歌詞のそれをマイヤは、たいへんにへったくそで音程を外しながらも気持ちよく唄い続けた。

 歌い終えた後、どう、とマイヤはイズヴァルトに問う。彼は実に何を言えばいいのかわからぬという顔をして、目元をこわばらせながら笑った。

「うん! マイヤがとてもこの歌を愛しているのがわかる唄い方でござった!」
「ほんと! いつも友達からは『騒音公害』と笑われているけど?」
「本当のことでござるよ! ござる! あははは!」

 マイヤはわかっていた。自分は壊滅的に歌の才能が無い。自分の声で相手を喜ばせる時は限られている。

 甘えた声でおねだりするときと、セックスの愛撫の最中に「しゅてき……」などと舌っ足らずなささやきをする時だけだ。それでいいやと諦めている。

 なので、イズヴァルトが一生懸命考えてくれた『ごまかし』に喜んでいた。それからセックスへともつれ込む。

 彼等の部屋でのその光景を、監視魔法でもってアドルフは逐一見聞していた。アドルフはイズヴァルトの演奏と歌声を聞いて涙をにじませていた。

(……なぜだ。なぜ涙が出るのだ?)

 謀略を巡らせる日々を送っていたとはいえ、彼とて芸術を愛し、心の琴線に触れるものには感激を覚える事があった。

(しかしイズヴァルトのやつ、なかなかに優れた楽師になりそうだ……楽師であれば、長生きしてご自慢の長い物で女達に胤を振りまき続けたであろうに。残念だ。)

 アドルフは策士である。情から理への頭の切り替えが早い。頬に伝った涙に驚くも、ハンカチで拭いて何事も無かった様に取り繕った。

 窓の外を見る。まだ日は明るい。時計を見れば午後3時ではないか。なのに水晶版に映るイズヴァルトとマイヤは、ベッドの上で素っ裸にもつれあっていた。

 マイヤがパイズリフェラで攻めたてて精液を得ると、イズヴァルトはクンニリングスで対抗する。女への愛撫をなかなかにやらないアドルフは熱心にイズヴァルトの舌技を眺め見ていた。

(なるほど。ああして陰核を舌先でゆっくりくすぐるのか。速度を変えたな。果てそうになるからか。男のナニとそう変わらんかもしれん。)

 マイヤが嬉しそうに涙をこぼしながら果てた。それから互いの性器を結びつけての行いが始まる。イズヴァルトもマイヤも嬉しそうだ。欲情こそするが、どちらかといえばほっこりするという感覚をアドルフは覚えていた。

(身も心も結びついている……エレクトラを思い出す。)

 息子を置いて出てしまった愛妾・エレクトラとの思い出をアドルフは思い出していた。彼女はベッドでも私生活でも、一番充実した時間をもたらしてくれる人物だった。

 アドルフの3歳年上。武将を輩出した大貴族ガモーコヴィッツの息女で、もとは天才美少女と讃えられた将来を嘱望された女騎士だった。

 しかし魔法剣の訓練中に魔力が暴走し、右手を失ってしまった。それがもとで騎士団を退団し、代わりにアドルフの警護の任に就いた。アドルフは彼女に恋をした。彼が12の時だ。

(エレクトラにはたっぷりと女の愛で方を教わったな。他の妾に使う事は無かったが。)

 どうにも女の秘所というのは独特のにおいがして好きになれなかった。しかしエレクトラのは違った。あの茂みの奥で濡れて待つ谷に、いつまでも包まれていたい気を起こさせた。

(今はどうしているのだろうな。エレクトラ。)

 アドルフは印を切って水晶版からの映像と音を消すと、窓からのぞくものを見上げた。イーガの空と鬱陶しく伸びあがる尖塔群があった。


□ □ □ □ □


「ほう。そういう分析結果が出たか?」
「はい。昨日の健康診断でマイヤ=カモセンブルグに妊娠していると医師から報告がありました。3カ月だそうです。確か、12歳でしたっけ?」
「まだ11だそうだ。10月1日が誕生日だそうだからな。ちなみにイズヴァルトは1月の2日らしい。正月は出産で大忙しだったみたいだ。はははは……」

 真夜中に呼び出しを喰らったオットーは、またもぬいぐるみを抱えて現れた。今度は赤ん坊サイズの猫のぬいぐるみだ。彼と親しいマレーネによれば、頬ずりしながら寝る癖があるらしい。

「明後日に診断結果を、マイヤ本人に報告するそうです」
「妊娠の事は伝えぬように、と医者には申し伝えておけ」
「は?」
「なあに。本人はとっくにわかっているだろうさ。しかしおめでたいことだな。そろそろ産まれてくる子の為にも強い後ろ盾が必要になるだろう。私はあることを考えているんだ」

 その考えとは、息子のマルティン達の家庭教師になってもらおうというものだった。今も家庭教師をつけているが、彼女にはホーデンエーネンの事を教えてほしい。

「意味があるのでしょうか?」
「オットー。学問に意味というものを考えてはいかんぞ。あくまで人生の余興というものだ。深く考え込むな」

 はあ、とオットーはうなずいて書斎から出て行こうとする。しかしアドルフが手を掴んで引き留めた。オットーは恥ずかしそうにうつむいた。

「最近、お前の相手をしてやれなかったな?」
「わ、私は……」

 わかつている、とささやきながらアドルフは彼の唇を塞いだ。オットーは背が高い。15の歳であるがアドルフと5センチしか背が変わらなかった。

「んぐ……」

 アドルフはオットーの唇と唾液を確かめる。少年のそれではなかった。むしろ、少女のものである。それと砂糖菓子の様な不思議な甘味があった。 
 
 唇を離したアドルフは、オットーの寝巻着の下をめくりあげた。この美しい小姓のそこには、めくれあがって亀頭をむき出しにしたペニスがあった。

 しかし歳に比べていささか小さい。8センチもあるか無いかだ。その先端には鈴口というものが無かった。その理由は竿の下に潜んでいた。

 陰嚢はどこにも見当たらなかった。代わりに女の子のそれと同じの無毛の割れ目のみがある。アドルフはしゃがみ、オットーのペニスをしゃぶり始めた。

「あ、アドルフさま……」

 アドルフはオットーのそれを口に含み、丹念に舐め磨く。この様な行いをしているからこの王子は少年愛も好きであるという訳では無い。

 小さなファルスの下の割れ目、そこから蜜が滴って来るからそうするのだ。オットーは身体に起こった波を感じてため息をついた。よだれを少しだけこぼしながらソファの縁に腰掛ける。

 オットーは脚を開いた。割れ目が広がり、サーモンピンクの艶めかしい割れ目が現れた。オットーは彼ではなく、彼女。ペニスと思しきそれは異様に発達したクリトリスであった。

「お前はわかりやすいな。オットー」

 アドルフはガウンの前をはだけた。その下には何も身に着けていない。早く精通が起こる様にと赤ん坊の時に整えられた中身丸出しの怒張が現れた。

 彼のそれは虚弱で細い身体に比べればいささか大きかった。跡継ぎに恵まれるよう、赤ん坊の頃より乳母や侍女に口で愛でられたり、精巣が中に引っ込まないようにマッサージを受けて育てられていたからだ。

 オットーは弓なりに反る硬直を見てつばを飲み込んだ。これが欲しいのだろう。ごくり。彼女は他の女達とは違い、ヴァギナの中の感度がいささか良過ぎるところがあった。

 愛撫の最中でも手放さなかった猫のぬいぐるみを両腕できつく抱きしめ、蜜を滴らせながらあるじの到来を待ち望んでいた。

「どうだ? これが欲しいのだろう?」
「は、早く入れてください、殿下。私は……」
「お前の『女陰茎』は硬直していたぞ? マレーネとよからぬ遊びをしてからか?」

 オットーは答えなかった。代わりに顔を赤らめて目を背ける。いつもは凛々しい美童の顔であるが、この時はいけない遊びを覚えてしまった箱入り娘という、頼り無さげな貌を見せていた。

「答えぬのか? ずるい『おとこおんな』だ」

 アドルフはオットーの亀頭を手で包んだ。それを優しく揉みながら小姓を喘がせる。本当はこの偽のちんぽで、マレーネの幼いつぼみをほじくり続けていたのだろう?

「マレーネだけでない。お前に言い寄る俺の娘。妾達にも身体を預けたな?」
「い、いいえ。私は……」
「しらばっくれるな。お前のこれを見てあのどすけべ女どもが放っておく訳が無い。オットー。俺は優しい男だ。そんな事で叱ったりはせんよ」

 アドルフは己の怒張をオットーの蜜壺の中に閉じ込め、ゆっくりと中をこねていった。前後にではなく上下と左右に。腰をまわしながら膣壁をまさぐる。

「う……あっ! で、殿下!」

 オットーは歓喜のあまりに涙を流していた。ラヴィアとヴァギナの奥はかなり感じやすいという。クリトリスを撫でられるぐらいの快感を得るそうだ。

 性交が義務と思っている様な女や、がばがばになってしまった老いた娼婦がよく使う、『ひろぽん』を使わずともそこまで感じるのは、彼女の産まれに秘密があった。

 オットーはサキュバスの血脈にあった。但しペニスと陰嚢と女性器を併せ持つ、妙なタイプの女淫魔だという。射精もできれば相手の女に子を産ませる事が出来た。

 サファイアという名前の女淫魔がオットーの『祖父』だった。ナニはばかでかく30センチ近くあったという。祖母はイーガの片田舎の小貴族・オーズロー家にたった1人残った娘だった。

 サファイアは侍女としてオーズロー家の令嬢の世話をしていたが、男に興味を持たない彼女は射精も出来るペニスを持つ侍女に子胤を求めた。

 そうして令嬢の腹から生まれたのがオットーの母だった。彼女はニンゲンとして生を受けたが、サファイアと同じく両性具有だった。

 射精と生理が始まった頃、興味本位でスポイトに入れた精液を膣の中に放ち、オットーを宿した。オットーが産まれて3年後ぐらいにオーズロー家の当主であった彼女の母は病で死んだ。

 その前にサファイアは何かの理由でオーズロー家を去り、オットーの母であり父である人物は娘が5歳の時に変な病にかかって亡くなった。アドルフがオットーを小姓にしたのはその後だ。

 オットーには20歳になったらオーズロー家の家督を継がせてやると約束していた。それまでは小姓として、こうした睦み事の相手として彼女を側に置いていた。

 しかしである、この娘はなかなかに面白い。美少年と思いきや美少女。昼間は凛々しく気性は少年のそれみたいなのに、夜になるとぬいぐるみを抱えて眠る様な可愛いところがある。

(しかし、私が高貴な精液を馳走してやっているのに、一向に孕まぬのがおかしいのだがな。)

 やせっぽちの外側に比べ、中は肉付きが豊かで吸いついていた。こうしてペニスでかきこねるだけでも心地が良い。

「今夜はとっくに3発、妾どもにくれてやったからお前には精液を下賜してやらんぞ!」
「ああっ……! あああ……!」
「よがると途端に小娘の顔になるよな、オットー! 先ほどまでお前はマレーネを、今のお前みたいな貌にさせたのだろう?」

 喘ぎ狂いながらオットーはうなずく。マレーネは彼女の大きなクリトリスで処女膜を破られていた。しかしイーガでも処女は尊ばれる事は無い。むしろ大事なのは締りが良く、孕みやすいか否かである。

「ふふふ。段々と余裕が無くなってきているぞ。もう降参するか?」
「降参なんて……してます! とっくの昔に、殿下!」
「ならば俺のことを好きだと言え! 俺にこうされてメスの貌にされるのが大好きだと告白しろ!」

 オットーは気弱そうな表情になって応えた。

「で、でんかがだいすき。それから、でんかのちんぽでこねられるのに弱いの」
「ほう。よく言った!」
「で、殿下だけのおんなのこになりたい……オットーをいつまでもずっとお側に置いて? お妾さんにしてください……」

 アドルフは腹の中で笑ってしまった。馬鹿を言うな。俺をこれ以上困らせる気か。彼には既に10人以上の側室がおり、30人近くの姫がいる。

(オットー。俺はお前に目をかけているのだよ。お前の夫は……俺ではない!) 
 
 彼はあることを考えていた。オットーは万事雑務をそつなくこなし、頭もきれる。ゆえに自分の数いる側室よりもうってつけの『就職先』があった。

(オットー。お前はな、マルティンの妻にするつもりだよ! ははは!)

 まだ9歳だが、マルティンの正室としていずれはオットーをつけることを考えていた。彼の息子は異母妹のマレーネと同じくオットーに懐いていた。いや、この小姓は御曹司の年の離れた親友でもあったのだ。
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