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第二部 『呪いの序曲。イーガの魔王』 (少年編から青年編の間のエピソード。)
03 聖なる魔の王③
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人型の魔族であった!
いいや、まるでニンゲンそのものの様なそれらは全部で8人。匕首や斧を持ってコーザに殺到する。どれもが身長190はありそうな、体躯ががっちりとした金髪の男達だった。
脚の早さは尋常ではない。オーガの脚力といい勝負。その内の左右2人がコーザを囲み武器をふるった。教主は武器を持って戦うことを嫌ったが、動き方はエルフの戦士以上に機敏だった。
物言わず襲い掛かる彼等を、コーザは冷静に観察して何者かと判別した。口からは鋭い犬歯がのぞいている。瞳は赤紫色。魔の者に先祖返りをしつつあるニンゲンによくある色だ。
ただ、眼球は血走っていて顔色は黄色い。それから寒い土地でも熱帯の夏の様ににおってくる強い腋臭のにおい。悪臭そのものだが淫魔と同じ、異性を篭絡する力があるとコーザは解析した。
(強い体臭。鋭い牙……吸血鬼でしょうか?)
いいや違う。きっとあの一族だろう。コーザは父が教えてくれた魔法の印を切った。エルフやドワーフらが言う、祟りの精霊たちの末裔らの力を封じるものだ。魔界の魔族ではない。
「うおあっ!」
周囲を囲んでいた男達がのけぞり、武器を落としてその場に倒れた。コーザは彼等の額に次々と指を付け、身動きを出来なくさせた。
他の4人の暴漢らはコーザの警護達と戦っていた。身のこなしが断然違うから、殺されるのはパラッツォ側だった。
ただその中の2人が兵士から切り離した腕をかじり、肉を美味しそうに噛んでいるのを見てコーザはいよいよ確信した。司祭騎士らが応戦しているがなかなかに苦戦している。コーザは助けてやった。
「……ふう」
8人の動きを全て止め、それ用の束縛術式をかけて身動きさせなくすると、コーザは彼等の顔をじっくりと見直した。あの村長に顔がよく似ている。
被害は相当にあった。30人の兵士がたった4人に討たれてしまった。司祭騎士もうち1人が右腕を斬り落とされた。コーザは負傷した者達に治癒魔法をかけて回った。
「教主様。この者達は?」
副官の司祭騎士が尋ねると、コーザは邪悪な精霊の末裔の一派だと答えた。魔族ではなく亜人種だ。寿命は70年から100年。それほどではない。
「エルフやドワーフ達が言うところの、ゴールと呼ばれる種族です」
ゴール。食人を好む亜人種。オーガの系統に含まれるが祖先が違う。吸血鬼と並ぶ死にまつわる精霊の子孫だ。
世界各地の大陸に分布しているが、その数は殆ど無く実際の被害の件数もわずか。人の肉を喰らうのは「たまに」程度だという。しかし彼等は人殺しや墓荒らしを好む。
「とはいえ戦士としては優れていて各地の領主は彼等をよく、傭兵として迎え入れる事があったそうです……この一族がまだ表立って人食いをする頃までは」
「そんな奴らがどうして、この村の近辺に?」
「つまり……この村こそがゴールの一族の村という事になるでしょう」
村に戻りましょう。私を先頭にするように。今度ばかりは副官も従わざるを得なかった。この食人鬼達に勝てなかったからだ。
コーザを一番前にしてパラッツォの軍は村へと引き返した。果たして、入口をくぐった先に村長達は待ち構えていた。
男達が20名ほど。彼等は斧や鉈を手に持っていた。どの顔も村長に似通っている。コーザはゴールについてあることを思い出した。
男だけがあの圧倒的な力を得る。ゴール族の女はニンゲンと大差無い。それからかの男達は、ニンゲンの女を何人も妻にして沢山の子を産ませる。
「村長。これはいかなる事でしょうか?」
コーザは親しげに語り合った老人に呼びかける。かの男は顔こそ皺ばかりなれど、あの時見せた老いの気配は全く見せなかった。まるで30歳若返ったみたいにだ。
「知れたことを! 儂らはイナーヴァニアの王様に忠誠を誓う一族じゃ! エチウのやつらにこのイナーヴァニアを荒らされるのを、黙って見ているつもりは無いわい!」
狙うのはあの首だ。かかれ、と村長が男どもに命じた。オーガの様な戦闘力を持つ食人鬼達がコーザに殺到した。さっきより多勢だ。なかなかに手こずるだろう。しかし先ほどの8人よりはいくらか弱そうだった。
「……たったの20人ですか。それでは私に傷1つもつけられませんよ?」
□ □ □ □ □
捕縛した村長から仔細を聞いた。この村の男は皆、王国の戦士として常に給金を与えられ、国の各地から身よりの無い若い女達を集められてあてがわれた。
一番の娯楽である食人だが、国王より毎月3人贈られた。良く肥えた犯罪者が選ばれた。食人鬼は子供の肉が食いたかったが、硬くてまずい大人の肉で我慢した。
村の裏手にある谷は、彼等が食べ続けた者らの骨が捨てられていた。それを見せられてコーザ達はため息をついた。、ちなみにだがこのゴールの一族は、サイゴークで唯一生き残った。
「ふん。チンゼーとシマナミスタンにはまだ、5000だか10000だかはおるらしいがの。どいつもこいつも月に1度に処刑者を喰らって生きておる、と伝え聞いておるよ」
サイゴークのゴール族はやりすぎてしばしば、ドワーフとゴブリンらの討伐対象となった。特に暗黒卿がこの種族の撲滅に躍起になった。とても強い男ばかりだから、腕を鍛える為に殺して回ったそうだ。
「おかげで残るのは我らだけよ。しかもなあ。お前様が捕らえたこの村の男達全員だけじゃ」
子供や赤ん坊も含めて35名。最近は種族としての滅びの時がいよいよ近づき、女の子ばかりしか産まれなくなっているという。毎日食人を致せば男児が産まれやすくなるのだが。
「仕方が無いことです。ヒトを喰らうのは獣でよろしい……違う種族ゆえに細かいことは申せませんが」
「しかしコーザ。お前さんが我らの力を封じる魔法を知っておったとは。流石は史上最強の魔道士の息子じゃな。コージュがエチウの同胞を数多く滅したことを聞いておるよ……」
村長はうなだれた。コーザは彼等をエチウに移住させる事に決めた。だがその前に改宗をしてもらう。食人など二度とさせぬ。神の教えに背くからだ。『共食い』は病も引き起こす。
とはいえゴールの戦闘能力は捨てがたい。コーザはこうした人食いの者が人肉を食わずにある程度の力を引き出せるとある秘法を知っていた。母のクラリスから教わった魔界の方法だ。
クラリスは魔界で薬品会社の研究員をしていたからその手の事に詳しかった。『甘露(アームリータ)』の秘法を進化させたのは彼女だった。
その方法。人糞と尿、それからニンゲンの精液を混ぜて精製した薬液を作る。それから『甘露(アームリータ)』と混ぜる。薬液が2で甘露が8という割合で。
それだけではない。この一族にはふんだんに獣肉や魚肉を喰らわせる。コーザは捕らえた人食いの魔獣で実験した。効果はそこそこあった。
魔獣では秘めた力の6割ほどが引き出せた。ゴール達ではいかほどになるか予測はつかぬが、先ほどの戦いでは全力の7割と言っていたから期待できる。
「殺しは致しません。パラッツォの教えを学び、心を穏やかにしていただければ我らは貴方がたを友として、家族として迎え入れるでしょう」
「……この土地を離れにゃならんのだな?」
「是非もなし、にございます。長老がたとその子孫の男児にはいずれ、教団の剣となっていただければと……」
「儂らはいつでも牙を隠しておるぞ? それでも良いのか?」
構わないとコーザは答えた。荒ぶる心が収まらぬのは、拠り所というものが無いからだ。それと他者との深い愛情を結べない事でもある。
コーザは副官に、拠点にいる女性兵士と教典の巫女達を連れて来るようにと告げた。儀式を始め、それからゴール達の子をその場で宿させる為にだ。
□ □ □ □ □
「長老様。私達はこの村を離れなければならないのでしょうか?」
「なるようにしかなるまい。儂らはコーザに負けたのじゃ」
天幕の上を見上げる村長に呼びかけたのは、彼の義理の娘であるマーサだ。
「では、雪蚕はどうするのです? まだ繭を作っていないのに」
「しばらくはここにとどめ置くという事じゃ。そなたらはな」
村長は義理の娘に目を向けた。妻によく似た釣り目がちな金髪の美女。その腕に抱かれていたのは産まれたばかりの赤ん坊のヘラだった。
「しかし……これだけ大きな天幕とこんなりっぱな敷き物を戦場に持ち運んでいるとは。パラッツォ教はとてもお金持ちなのですね?」
テントの中には絨毯が敷かれており、暖房魔法がかかって温かかった。ゆえにマーサはこの2カ月湯あみをしていなかった自分のにおいにが煩わしいと思った。
彼等を含む400人余りは、村の外にパラッツォ教徒が広げた巨大なテントの中に集められた。全員が着ているものを全て脱がされた。
マーサは義父のペニスを見ないように心掛けた。夫のそれよりも太くて発達していたからだ。
改宗の儀式は始まっていた。村の男達から局部を湯で洗い、『甘露(アームリータ)』を飲まされた後にコーザが呼び寄せた教典の巫女と交わっていた。
彼女の夫もエチウ人とはっきりわかる栗毛の美女の上に乗り、夢中になって腰を振っていた。夫は自分のペニスの短さを気にしていたが、マーサが気持ちよくなる様に尽くしてくれたから3人も子を為せた。
マーサの一番上の男の子は、父が見知らぬ女の上に乗って腰を動かすのを不思議そうに見ていた。父母が自分と妹が寝ている横で、6歳になる幼児は何度か目撃していた。
その息子にも教団の少女が優し気によびかけて抱き寄せた。胸が平らで小柄な娘。まだ12歳にもならないだろう。しかし腰だけは大きく広がっていた。この少女は2回出産していた。
楽にして、とささやきかけると、マーサの息子のペニスの皮をめくった。行為の前に洗えと命じられたから垢はきれいに取ってある。少女の口がペニスを咥える。まだ幼児の少年が、牡のうめき声をあげはじめた。
マーサは目を背けた。見ていられない。しかしどうすることも出来なかった。上の娘は彼女の足元でしゃがみ、湯を張った桶の中で己の陰部を洗っていた。
まだ小さな子供だから挿入こそされないが、愛撫の得意な信徒によって女の喜びを学ばされるのだ。教えられた通りにあそこを洗い、敏感な部分を指でいじくってきゃはは、と笑っていた。
「あまりいじくっちゃだめよ?」
「はあい。でもここいじくるの、しょっちゅうやっているよ!」
「うん、おかあさんもいじくってたわ。でもそればっかりしちゃう子になるからあまりやらないでね?」
はあいと答えて娘は桶から腰を出した。そういうマーサもクリトリスをいじるオナニーは毎日の日課であった。こうすると膣がほぐれ、気持ちよくペニスを迎えられるからだ。
マーサは決して小さくはない乳房を吸うヘラに目を向けた。産まれた時に旅の占い師に偉大な魔道士になる才能があると告げられた。
(私も言われたらしいわ。産まれた時に。おかあさんも……)
マーサとその母はイナーヴァニアの高名な魔道士の家系に産まれた。とはいえ人里離れたゴールの村に移住し、嫁入りしたのは理由があった。
彼女の母の父にあたる人物が、南部の領主達を糾合して独立国家を作る謀反計画に加担したのがばれたのだ、祖父は先代の国王付きの魔道士。大きな信頼を得ていた。
だが計画は途中で露呈し、祖父とまとめ役は斬首の憂き目にあった、そのまとめ役こそが母の前の夫だった。中南部地方の領主で、王家と同じ祖先を持っていたのだが。
(おかあさんは言ってたわ。男達の野心はもうこりごりだって。私はここに来て幸せだった。だって、貧しくても平穏な暮らしが得られたもの。)
マーサは娘のヘラを抱きしめる。夫は生殖器を交えている相手の教典の巫女に、とても濃い精液を流し込んだ。十月十日後に子をひねり出させる事となる。
そしてマーサの息子は少女にしゃぶられ続けた後に、身体の中で激しく起こった感激に戸惑い、泣き始めた。精液こそ出さなかったが、生まれて初めてのエクスタシーを覚えたからである。
いいや、まるでニンゲンそのものの様なそれらは全部で8人。匕首や斧を持ってコーザに殺到する。どれもが身長190はありそうな、体躯ががっちりとした金髪の男達だった。
脚の早さは尋常ではない。オーガの脚力といい勝負。その内の左右2人がコーザを囲み武器をふるった。教主は武器を持って戦うことを嫌ったが、動き方はエルフの戦士以上に機敏だった。
物言わず襲い掛かる彼等を、コーザは冷静に観察して何者かと判別した。口からは鋭い犬歯がのぞいている。瞳は赤紫色。魔の者に先祖返りをしつつあるニンゲンによくある色だ。
ただ、眼球は血走っていて顔色は黄色い。それから寒い土地でも熱帯の夏の様ににおってくる強い腋臭のにおい。悪臭そのものだが淫魔と同じ、異性を篭絡する力があるとコーザは解析した。
(強い体臭。鋭い牙……吸血鬼でしょうか?)
いいや違う。きっとあの一族だろう。コーザは父が教えてくれた魔法の印を切った。エルフやドワーフらが言う、祟りの精霊たちの末裔らの力を封じるものだ。魔界の魔族ではない。
「うおあっ!」
周囲を囲んでいた男達がのけぞり、武器を落としてその場に倒れた。コーザは彼等の額に次々と指を付け、身動きを出来なくさせた。
他の4人の暴漢らはコーザの警護達と戦っていた。身のこなしが断然違うから、殺されるのはパラッツォ側だった。
ただその中の2人が兵士から切り離した腕をかじり、肉を美味しそうに噛んでいるのを見てコーザはいよいよ確信した。司祭騎士らが応戦しているがなかなかに苦戦している。コーザは助けてやった。
「……ふう」
8人の動きを全て止め、それ用の束縛術式をかけて身動きさせなくすると、コーザは彼等の顔をじっくりと見直した。あの村長に顔がよく似ている。
被害は相当にあった。30人の兵士がたった4人に討たれてしまった。司祭騎士もうち1人が右腕を斬り落とされた。コーザは負傷した者達に治癒魔法をかけて回った。
「教主様。この者達は?」
副官の司祭騎士が尋ねると、コーザは邪悪な精霊の末裔の一派だと答えた。魔族ではなく亜人種だ。寿命は70年から100年。それほどではない。
「エルフやドワーフ達が言うところの、ゴールと呼ばれる種族です」
ゴール。食人を好む亜人種。オーガの系統に含まれるが祖先が違う。吸血鬼と並ぶ死にまつわる精霊の子孫だ。
世界各地の大陸に分布しているが、その数は殆ど無く実際の被害の件数もわずか。人の肉を喰らうのは「たまに」程度だという。しかし彼等は人殺しや墓荒らしを好む。
「とはいえ戦士としては優れていて各地の領主は彼等をよく、傭兵として迎え入れる事があったそうです……この一族がまだ表立って人食いをする頃までは」
「そんな奴らがどうして、この村の近辺に?」
「つまり……この村こそがゴールの一族の村という事になるでしょう」
村に戻りましょう。私を先頭にするように。今度ばかりは副官も従わざるを得なかった。この食人鬼達に勝てなかったからだ。
コーザを一番前にしてパラッツォの軍は村へと引き返した。果たして、入口をくぐった先に村長達は待ち構えていた。
男達が20名ほど。彼等は斧や鉈を手に持っていた。どの顔も村長に似通っている。コーザはゴールについてあることを思い出した。
男だけがあの圧倒的な力を得る。ゴール族の女はニンゲンと大差無い。それからかの男達は、ニンゲンの女を何人も妻にして沢山の子を産ませる。
「村長。これはいかなる事でしょうか?」
コーザは親しげに語り合った老人に呼びかける。かの男は顔こそ皺ばかりなれど、あの時見せた老いの気配は全く見せなかった。まるで30歳若返ったみたいにだ。
「知れたことを! 儂らはイナーヴァニアの王様に忠誠を誓う一族じゃ! エチウのやつらにこのイナーヴァニアを荒らされるのを、黙って見ているつもりは無いわい!」
狙うのはあの首だ。かかれ、と村長が男どもに命じた。オーガの様な戦闘力を持つ食人鬼達がコーザに殺到した。さっきより多勢だ。なかなかに手こずるだろう。しかし先ほどの8人よりはいくらか弱そうだった。
「……たったの20人ですか。それでは私に傷1つもつけられませんよ?」
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捕縛した村長から仔細を聞いた。この村の男は皆、王国の戦士として常に給金を与えられ、国の各地から身よりの無い若い女達を集められてあてがわれた。
一番の娯楽である食人だが、国王より毎月3人贈られた。良く肥えた犯罪者が選ばれた。食人鬼は子供の肉が食いたかったが、硬くてまずい大人の肉で我慢した。
村の裏手にある谷は、彼等が食べ続けた者らの骨が捨てられていた。それを見せられてコーザ達はため息をついた。、ちなみにだがこのゴールの一族は、サイゴークで唯一生き残った。
「ふん。チンゼーとシマナミスタンにはまだ、5000だか10000だかはおるらしいがの。どいつもこいつも月に1度に処刑者を喰らって生きておる、と伝え聞いておるよ」
サイゴークのゴール族はやりすぎてしばしば、ドワーフとゴブリンらの討伐対象となった。特に暗黒卿がこの種族の撲滅に躍起になった。とても強い男ばかりだから、腕を鍛える為に殺して回ったそうだ。
「おかげで残るのは我らだけよ。しかもなあ。お前様が捕らえたこの村の男達全員だけじゃ」
子供や赤ん坊も含めて35名。最近は種族としての滅びの時がいよいよ近づき、女の子ばかりしか産まれなくなっているという。毎日食人を致せば男児が産まれやすくなるのだが。
「仕方が無いことです。ヒトを喰らうのは獣でよろしい……違う種族ゆえに細かいことは申せませんが」
「しかしコーザ。お前さんが我らの力を封じる魔法を知っておったとは。流石は史上最強の魔道士の息子じゃな。コージュがエチウの同胞を数多く滅したことを聞いておるよ……」
村長はうなだれた。コーザは彼等をエチウに移住させる事に決めた。だがその前に改宗をしてもらう。食人など二度とさせぬ。神の教えに背くからだ。『共食い』は病も引き起こす。
とはいえゴールの戦闘能力は捨てがたい。コーザはこうした人食いの者が人肉を食わずにある程度の力を引き出せるとある秘法を知っていた。母のクラリスから教わった魔界の方法だ。
クラリスは魔界で薬品会社の研究員をしていたからその手の事に詳しかった。『甘露(アームリータ)』の秘法を進化させたのは彼女だった。
その方法。人糞と尿、それからニンゲンの精液を混ぜて精製した薬液を作る。それから『甘露(アームリータ)』と混ぜる。薬液が2で甘露が8という割合で。
それだけではない。この一族にはふんだんに獣肉や魚肉を喰らわせる。コーザは捕らえた人食いの魔獣で実験した。効果はそこそこあった。
魔獣では秘めた力の6割ほどが引き出せた。ゴール達ではいかほどになるか予測はつかぬが、先ほどの戦いでは全力の7割と言っていたから期待できる。
「殺しは致しません。パラッツォの教えを学び、心を穏やかにしていただければ我らは貴方がたを友として、家族として迎え入れるでしょう」
「……この土地を離れにゃならんのだな?」
「是非もなし、にございます。長老がたとその子孫の男児にはいずれ、教団の剣となっていただければと……」
「儂らはいつでも牙を隠しておるぞ? それでも良いのか?」
構わないとコーザは答えた。荒ぶる心が収まらぬのは、拠り所というものが無いからだ。それと他者との深い愛情を結べない事でもある。
コーザは副官に、拠点にいる女性兵士と教典の巫女達を連れて来るようにと告げた。儀式を始め、それからゴール達の子をその場で宿させる為にだ。
□ □ □ □ □
「長老様。私達はこの村を離れなければならないのでしょうか?」
「なるようにしかなるまい。儂らはコーザに負けたのじゃ」
天幕の上を見上げる村長に呼びかけたのは、彼の義理の娘であるマーサだ。
「では、雪蚕はどうするのです? まだ繭を作っていないのに」
「しばらくはここにとどめ置くという事じゃ。そなたらはな」
村長は義理の娘に目を向けた。妻によく似た釣り目がちな金髪の美女。その腕に抱かれていたのは産まれたばかりの赤ん坊のヘラだった。
「しかし……これだけ大きな天幕とこんなりっぱな敷き物を戦場に持ち運んでいるとは。パラッツォ教はとてもお金持ちなのですね?」
テントの中には絨毯が敷かれており、暖房魔法がかかって温かかった。ゆえにマーサはこの2カ月湯あみをしていなかった自分のにおいにが煩わしいと思った。
彼等を含む400人余りは、村の外にパラッツォ教徒が広げた巨大なテントの中に集められた。全員が着ているものを全て脱がされた。
マーサは義父のペニスを見ないように心掛けた。夫のそれよりも太くて発達していたからだ。
改宗の儀式は始まっていた。村の男達から局部を湯で洗い、『甘露(アームリータ)』を飲まされた後にコーザが呼び寄せた教典の巫女と交わっていた。
彼女の夫もエチウ人とはっきりわかる栗毛の美女の上に乗り、夢中になって腰を振っていた。夫は自分のペニスの短さを気にしていたが、マーサが気持ちよくなる様に尽くしてくれたから3人も子を為せた。
マーサの一番上の男の子は、父が見知らぬ女の上に乗って腰を動かすのを不思議そうに見ていた。父母が自分と妹が寝ている横で、6歳になる幼児は何度か目撃していた。
その息子にも教団の少女が優し気によびかけて抱き寄せた。胸が平らで小柄な娘。まだ12歳にもならないだろう。しかし腰だけは大きく広がっていた。この少女は2回出産していた。
楽にして、とささやきかけると、マーサの息子のペニスの皮をめくった。行為の前に洗えと命じられたから垢はきれいに取ってある。少女の口がペニスを咥える。まだ幼児の少年が、牡のうめき声をあげはじめた。
マーサは目を背けた。見ていられない。しかしどうすることも出来なかった。上の娘は彼女の足元でしゃがみ、湯を張った桶の中で己の陰部を洗っていた。
まだ小さな子供だから挿入こそされないが、愛撫の得意な信徒によって女の喜びを学ばされるのだ。教えられた通りにあそこを洗い、敏感な部分を指でいじくってきゃはは、と笑っていた。
「あまりいじくっちゃだめよ?」
「はあい。でもここいじくるの、しょっちゅうやっているよ!」
「うん、おかあさんもいじくってたわ。でもそればっかりしちゃう子になるからあまりやらないでね?」
はあいと答えて娘は桶から腰を出した。そういうマーサもクリトリスをいじるオナニーは毎日の日課であった。こうすると膣がほぐれ、気持ちよくペニスを迎えられるからだ。
マーサは決して小さくはない乳房を吸うヘラに目を向けた。産まれた時に旅の占い師に偉大な魔道士になる才能があると告げられた。
(私も言われたらしいわ。産まれた時に。おかあさんも……)
マーサとその母はイナーヴァニアの高名な魔道士の家系に産まれた。とはいえ人里離れたゴールの村に移住し、嫁入りしたのは理由があった。
彼女の母の父にあたる人物が、南部の領主達を糾合して独立国家を作る謀反計画に加担したのがばれたのだ、祖父は先代の国王付きの魔道士。大きな信頼を得ていた。
だが計画は途中で露呈し、祖父とまとめ役は斬首の憂き目にあった、そのまとめ役こそが母の前の夫だった。中南部地方の領主で、王家と同じ祖先を持っていたのだが。
(おかあさんは言ってたわ。男達の野心はもうこりごりだって。私はここに来て幸せだった。だって、貧しくても平穏な暮らしが得られたもの。)
マーサは娘のヘラを抱きしめる。夫は生殖器を交えている相手の教典の巫女に、とても濃い精液を流し込んだ。十月十日後に子をひねり出させる事となる。
そしてマーサの息子は少女にしゃぶられ続けた後に、身体の中で激しく起こった感激に戸惑い、泣き始めた。精液こそ出さなかったが、生まれて初めてのエクスタシーを覚えたからである。
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