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第二部 『呪いの序曲。イーガの魔王』 (少年編から青年編の間のエピソード。)
序 『人物史学者ギルバート』
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ギルバート=カツランダルク。今より昔、共和国暦250年台のホーデンエーネン連邦共和国の人物。トリシア大学の学者であった。
かの国の歴史学者達の主要な研究テーマである、『聖騎士イズヴァルト』とその周辺の人物について調べ、学会に発表してきた。
神話にも似たサーガを作り出した英雄・イズヴァルトについての研究は世界各地で行われている。彼はその界隈の第一人者であった。
世界各地に散らばる英雄のサーガと史書をまとめあげ、最も近い姿を描き表した。いろいろと『間違い』がありがちな英雄の勲し詩をより事実に近づけた大学者として、後の世に評価される……ホーデンエーネン以外では。
そのギルバートの最大の功績は、昔の伝承歌では己の夢の為にひと時の間恋人を捨てた学者姫と、謎に満ちていたコーザ時代のパラッツォ教についての間違いを正した事にある。
旧来の伝承歌で学者姫はイズヴァルトを捨て、とある貴人の妾となって富と権力を得て後々まで続く学術の都を築いたとされる。しかしその行いは民らに重税を強い、怨嗟の的となった。
世紀の大悪女と罵られる様になった彼女は暗殺者に狙われる様になり、キンキ大陸からいることができなくなった。
そして彼女はパラッツォ教の教主に助けを乞い、かの教団に属して才能を認められて後継者候補となったが、権力闘争に破れた挙句に政敵に暗殺された……それが旧来の『伝承歌』での結末である。
もう一方のパラッツォ教のコーザは、学者姫ともう1人の後継者候補に教団を任せ、『皇帝』と呼ばれる位を自称しパラッツォ皇国なる国家体制を築いた。
その後継者で二代目かつ、最後の皇帝こそが学者姫のゆかりのある人物だったというのが旧来の伝承歌や諸外国の史書にあるもの。しかしギルバートはコーザの後継者こそが初代かつ一代限りの皇帝だったと世に知らしめた。
そしてもう1つ。ギルバートは晩年の頃、英雄の本当の最後の旅について謡った『秘められしサーガ』の研究も取り掛かろうとしていた。
外国では史実の歌として広まっていたそれだが、ホーデンエーネンでは全くの『でたらめ』とされた嘘か真実かわからぬおとぎ話と評された。しかし彼こそが、その作者の吟遊詩人の子孫でもあった。
ギルバートこそがまさに、かの英雄の物語の本当の語り手であり編纂者。そこまで彼を突き動かしたのは先祖にあたる人物達の名誉の回復であった。
女にはだらしなく、何度も繰り返した離婚や不倫だけでなく、死の間際までサキュバスの愛人を置いていたという好色な人物と貶されている。しかしそんな学者はごまんといた。彼だけが誹謗中傷を受けるいわれは無かった。
□ □ □ □ □
話はギルバートが古都・ナントブルグのカチュアの店で、『イズヴァルトのサーガ』のヒッジランド行きの旅の歌を歌い終えた後から始まる。
彼はその日最後の便の『えくすぷれす』に乗り、深夜にヨーシデンの街に戻った。駅の改札前には彼の愛人が待っていた。
褐色肌で黒髪。二十歳ぐらいの女だが、ニンゲンに化けているからツノと翼と尻尾を隠していた。しかし淫らな美貌とでかい乳房と尻はもとのまま。サキュバスのモアナだ。
彼女は駅の改札口から出て来たギルバートの姿を見ると、「おつかれ」と言って彼に抱き着いた。はた目から見ればシマナミスタン人の若い愛人と老人、いったところだろう。
「趣味のギターの弾き語りは終わったの?」
「終わったさ。モアナ、私の留守中に誰か訪れて来たかい?」
「わからないわ。だってワタシも家を留守にしていたんですもの」
ギルバートが家を空けていた3日間、トリシア大学の学生の下宿に転がり込んでいたとモアナは語った。彼女のボーイフレンドの候補は4人いた。
「リッケルト、エルンスト、ハーベイ、ルドルフ。そのうちの誰かね?」
「一番最初に言った子よ。他の3人は婚約相手とサカーイ辺りでバカンスよ。リッケルトはまだ一期生だから、次の半期の講座に向けて、大学の図書館に籠り切りだったのよこの休み期間は」
おおよそ1カ月ある夏休みの間、リッケルトは毎日朝から晩まで図書館で調べ物をしていたという。この学生をギルバートは高く買っていた。ゼミで優れたレポートを常に提出するからである。
それともう1人のエルンスト。ギルバートは彼を助手にしようと考えていた。リッケルトの4歳年上で2年ほど留年している劣等生だが、リッケルトに匹敵する読書家だった。好きなことに関しては根気強く、学究としての才能がある。
「リッケルトは凄かったわ。とにかく朝から晩まで腰を振りっぱなしだったの。流石はナハリジャーヤのエルフの血をひく男の子ね」
「女学生からは童貞と思われている様だがまったく違うらしいね。島にいる女エルフ達と幼い頃から楽しんでいたそうだ」
リッケルトは特に島の子供、リディとユクタの2人と仲が良かった。その2人はギルバートも面識がある。島に来るとしょっちゅう寝床に入ってきて、セックスをせがんでくるのだ。
ナハリジャーヤのエルフは少々発育が良い。2人とも9歳ぐらいのニンゲンの体つきなのに、ふっくらとしたおっぱいをつけていた。頑張ればパイズリができるぐらいである。しかも本当にたまらないほど柔らかい。
「リッケルトはの先祖はリディとユクタの母親だ。彼女たちの妹の子孫にあたるそうだね」
シリマヴォという女エルフだったと聞いている。優れた拳士でイズヴァルトの『最後の旅』に途中まで同行したエルフだとあの秘め歌にはあった。
駅を出ると乗合馬車の御者と値段を交渉した後、南に6キロ先のところにある自宅に向かった。ギルバートの家は中流層向けの集合住宅の4階にあった。
他の教授達は庭つきの家に住んでいる。しかし彼だけは大学生の頃よりこの部屋のままだ。長期間家を空けることが多かったので、犬を遊ばせる庭つきの家には住めなかった。
「ふうむ。3日間空けただけでこんなにあるとはな……」
ポストにはたんまりと手紙が入っていた。どれも諸外国の学者会からの、講演会のお誘いばかりだ。風呂に浸かりながら読もうと考えた。湯船は既にモアナが準備していた。
風呂場は広く、バスタブは大きめだった。大人2人がゆったりと入れるくらいだ。ギルバートは風呂で書を読む事もあった為、読書用の敷き板を風呂場に置いてあった。
封を開けた手紙をいくつか持ち込み、湯船の中に入って読み始める。シマナミスタンのサヌキスタンでのお誘い。ゲースティアの学者会で行われるパラッツォ戦役でのシンポジウムについて、など。
その中に、母国イーガからのお誘いがあった。名を連ねる学者の中にはギルバートの子供時代の友人が何人かいた。内容を詳しく読んでみる。
「……パラッツォ教とイーガの関係について、調べたことを語って欲しい、か」
ギルバートは眉間を皺寄せた。教団の本格的なキンキ大陸進出の頃から、教主とイーガは手を組んでいた。その様な説はあるのだが確証ともいうべき資料は殆ど無かった。
秘密の同盟に亜人達も数名、手を貸した者がいたらしいのだが、主要な人物は皆、既にこの世にはいなかった。戦争や暗闘で死んだそうだ。
その筆頭格がヌマタラシュク=エルフの『十文字槍のエイオン』だが、彼は少年時代のイズヴァルトのサーガの頃から数十年後、とある目的でイーズィ王国のとある街を襲撃した時に返り討ちに遭ったそうだ。
わかるところは殆ど無い。とにかく言えるのは『何らかの任務を受けていた』。だが、その条件や見返りがどんなものだったのかは謎だった。
「ご一緒していい?」
扉の向こうでモアナの声がした。どうぞと言う前に入ってきた。160センチほどの均整のとれた褐色の肌に、90センチ以上もある豊かなバストとヒップ。腹部はすっきりとしていた。
「おいおい。私はまだ返事をしていなかったよ?」
「頭の中をのぞき込めばわかるわ。ギルバート、悩ましい事考えてあそこが苛立ち始めたでしょ?」
図星である。ギルバートは悩むと勃起をしてしまう癖があった。湯舟の中のペニスは既に硬くなっていた。モアナは申し訳程度に身体に湯をかけると、広い湯舟の中に足を入れた。
ギルバートの太ももに己の尻を押し付けると、はっきりと屹立していたペニスを手にかけて甘くしごく。
「50過ぎなのにあいかわらず硬いわね?」
「3日間もご無沙汰だったからさ。女の肌がないと生きていけない身体だからな。今朝は夢精をしてしまったよ」
「嘘よ。だってきんたまが固くてぱんぱんだもの。ちゃんと老いを自覚しなさいな?」
モアナはギルバートのそこにまたがり、秘所の奥に導いた。彼のペニスは割と大きくて太い方だ。腰を動かし始めたモアナが喘ぎ始めた。
彼女のヴァギナはサキュバスらしく、精液の強奪に適したつくりをしていた。彼女はサキュバスとしては中の下ぐらい。とはいえれっきとした、アカサカチハヤの『あるじ』の手下である。20年程休暇を貰って市井で暮らしているが。
「んっ。リッケルトのちんちんも凄かったけど、やっぱりギルバートのが硬くてきもちいい……」
「そういうモアナのあそこは、相も変わらず搾り取って来るな……」
ギルバートも手紙を読むのを止め、モアナの尻の動きに合わせて腰を突き上げた。彼女とはもう6年もこうした関係を続けている。
彼女と知り合ったのは3番目の妻と離婚した直後だった。トリシア大学に臨時雇いの事務員として入ってきた彼女と仲良くなったギルバートは、知り合ってから5日して同棲することになった。
聞けば彼の先祖とも話をしたことがあるサキュバスだ。その頃は世界各地に隠れ住み、社会の動向を魔竜に知らせる役目があったという。
「んんっ! ちんぽからせりあがってきているわ!」
膣の感覚が異様に鋭いサキュバスが、ギルバートの限界が間近になったことを告げた。そんなものはわかっていると思いながら、彼は心置きなく彼女の膣奥にたっぷりと注ぎ込んだ。
つながりながら一息つける。駄目元でモアナに尋ねた。パラッツォ教とイーガの密約について知っているか。
「あの頃はチンゼー北部に配置されてたわ。『密航者』ならもしかしたら存じているかもしれないけれど」
「魔界から許可を得ずにこの世界に来た者達か。この辺に隠れ住んだりしているか?」
さあね。モアナはつながったままの尻を揺り動かす。肉づき良い臀部の誘いに屈さぬ男はインポテンツ以外にいなかった。
「あいつらが国の謀略に手を貸すなんて、大それたことをするわけがないじゃない? ばれたら即刻魔界へ強制送還よ。それだけじゃないの。矯正施設にぶち込まれて、数千年も『よいこ』にされるプログラムを施されるわ」
そのプログラムが快楽主義者ばかりの魔族にとって、どれだけの苦痛になるかご存じないのとモアナは言った。彼女もちょっとした悪さをして、100年近くぶちこまれた経験がある。
恐ろしく暇で仕方が無かったわ。性交は1週間に1度だけ。しかも5分。サキュバスにとってそれは致命的だった。出てきた頃、彼女はあばら骨が浮きあがるぐらいにやせてしまった。
「そこは調べても無駄よ」
「イーガにも近辺を探っていた魔族はいたんだろう?」
「あそこは国全体がエルフ仕込みの結界が施されていたの。今もそうよ。高位の魔族でなければうかつに近づけられない……イーガはこの世界で一番面倒なところよ。魔族にとってはね」
「と、なると……」
密約の全貌については永遠にわからない。再び精液を頂きにかかったモアナの乳房に触れながら、ギルバートはその様に結論づけた。
□ □ □ □ □
……ここから先の語りは、歴史学者が知ることがついぞ知りえなかった事実である。
かの国の歴史学者達の主要な研究テーマである、『聖騎士イズヴァルト』とその周辺の人物について調べ、学会に発表してきた。
神話にも似たサーガを作り出した英雄・イズヴァルトについての研究は世界各地で行われている。彼はその界隈の第一人者であった。
世界各地に散らばる英雄のサーガと史書をまとめあげ、最も近い姿を描き表した。いろいろと『間違い』がありがちな英雄の勲し詩をより事実に近づけた大学者として、後の世に評価される……ホーデンエーネン以外では。
そのギルバートの最大の功績は、昔の伝承歌では己の夢の為にひと時の間恋人を捨てた学者姫と、謎に満ちていたコーザ時代のパラッツォ教についての間違いを正した事にある。
旧来の伝承歌で学者姫はイズヴァルトを捨て、とある貴人の妾となって富と権力を得て後々まで続く学術の都を築いたとされる。しかしその行いは民らに重税を強い、怨嗟の的となった。
世紀の大悪女と罵られる様になった彼女は暗殺者に狙われる様になり、キンキ大陸からいることができなくなった。
そして彼女はパラッツォ教の教主に助けを乞い、かの教団に属して才能を認められて後継者候補となったが、権力闘争に破れた挙句に政敵に暗殺された……それが旧来の『伝承歌』での結末である。
もう一方のパラッツォ教のコーザは、学者姫ともう1人の後継者候補に教団を任せ、『皇帝』と呼ばれる位を自称しパラッツォ皇国なる国家体制を築いた。
その後継者で二代目かつ、最後の皇帝こそが学者姫のゆかりのある人物だったというのが旧来の伝承歌や諸外国の史書にあるもの。しかしギルバートはコーザの後継者こそが初代かつ一代限りの皇帝だったと世に知らしめた。
そしてもう1つ。ギルバートは晩年の頃、英雄の本当の最後の旅について謡った『秘められしサーガ』の研究も取り掛かろうとしていた。
外国では史実の歌として広まっていたそれだが、ホーデンエーネンでは全くの『でたらめ』とされた嘘か真実かわからぬおとぎ話と評された。しかし彼こそが、その作者の吟遊詩人の子孫でもあった。
ギルバートこそがまさに、かの英雄の物語の本当の語り手であり編纂者。そこまで彼を突き動かしたのは先祖にあたる人物達の名誉の回復であった。
女にはだらしなく、何度も繰り返した離婚や不倫だけでなく、死の間際までサキュバスの愛人を置いていたという好色な人物と貶されている。しかしそんな学者はごまんといた。彼だけが誹謗中傷を受けるいわれは無かった。
□ □ □ □ □
話はギルバートが古都・ナントブルグのカチュアの店で、『イズヴァルトのサーガ』のヒッジランド行きの旅の歌を歌い終えた後から始まる。
彼はその日最後の便の『えくすぷれす』に乗り、深夜にヨーシデンの街に戻った。駅の改札前には彼の愛人が待っていた。
褐色肌で黒髪。二十歳ぐらいの女だが、ニンゲンに化けているからツノと翼と尻尾を隠していた。しかし淫らな美貌とでかい乳房と尻はもとのまま。サキュバスのモアナだ。
彼女は駅の改札口から出て来たギルバートの姿を見ると、「おつかれ」と言って彼に抱き着いた。はた目から見ればシマナミスタン人の若い愛人と老人、いったところだろう。
「趣味のギターの弾き語りは終わったの?」
「終わったさ。モアナ、私の留守中に誰か訪れて来たかい?」
「わからないわ。だってワタシも家を留守にしていたんですもの」
ギルバートが家を空けていた3日間、トリシア大学の学生の下宿に転がり込んでいたとモアナは語った。彼女のボーイフレンドの候補は4人いた。
「リッケルト、エルンスト、ハーベイ、ルドルフ。そのうちの誰かね?」
「一番最初に言った子よ。他の3人は婚約相手とサカーイ辺りでバカンスよ。リッケルトはまだ一期生だから、次の半期の講座に向けて、大学の図書館に籠り切りだったのよこの休み期間は」
おおよそ1カ月ある夏休みの間、リッケルトは毎日朝から晩まで図書館で調べ物をしていたという。この学生をギルバートは高く買っていた。ゼミで優れたレポートを常に提出するからである。
それともう1人のエルンスト。ギルバートは彼を助手にしようと考えていた。リッケルトの4歳年上で2年ほど留年している劣等生だが、リッケルトに匹敵する読書家だった。好きなことに関しては根気強く、学究としての才能がある。
「リッケルトは凄かったわ。とにかく朝から晩まで腰を振りっぱなしだったの。流石はナハリジャーヤのエルフの血をひく男の子ね」
「女学生からは童貞と思われている様だがまったく違うらしいね。島にいる女エルフ達と幼い頃から楽しんでいたそうだ」
リッケルトは特に島の子供、リディとユクタの2人と仲が良かった。その2人はギルバートも面識がある。島に来るとしょっちゅう寝床に入ってきて、セックスをせがんでくるのだ。
ナハリジャーヤのエルフは少々発育が良い。2人とも9歳ぐらいのニンゲンの体つきなのに、ふっくらとしたおっぱいをつけていた。頑張ればパイズリができるぐらいである。しかも本当にたまらないほど柔らかい。
「リッケルトはの先祖はリディとユクタの母親だ。彼女たちの妹の子孫にあたるそうだね」
シリマヴォという女エルフだったと聞いている。優れた拳士でイズヴァルトの『最後の旅』に途中まで同行したエルフだとあの秘め歌にはあった。
駅を出ると乗合馬車の御者と値段を交渉した後、南に6キロ先のところにある自宅に向かった。ギルバートの家は中流層向けの集合住宅の4階にあった。
他の教授達は庭つきの家に住んでいる。しかし彼だけは大学生の頃よりこの部屋のままだ。長期間家を空けることが多かったので、犬を遊ばせる庭つきの家には住めなかった。
「ふうむ。3日間空けただけでこんなにあるとはな……」
ポストにはたんまりと手紙が入っていた。どれも諸外国の学者会からの、講演会のお誘いばかりだ。風呂に浸かりながら読もうと考えた。湯船は既にモアナが準備していた。
風呂場は広く、バスタブは大きめだった。大人2人がゆったりと入れるくらいだ。ギルバートは風呂で書を読む事もあった為、読書用の敷き板を風呂場に置いてあった。
封を開けた手紙をいくつか持ち込み、湯船の中に入って読み始める。シマナミスタンのサヌキスタンでのお誘い。ゲースティアの学者会で行われるパラッツォ戦役でのシンポジウムについて、など。
その中に、母国イーガからのお誘いがあった。名を連ねる学者の中にはギルバートの子供時代の友人が何人かいた。内容を詳しく読んでみる。
「……パラッツォ教とイーガの関係について、調べたことを語って欲しい、か」
ギルバートは眉間を皺寄せた。教団の本格的なキンキ大陸進出の頃から、教主とイーガは手を組んでいた。その様な説はあるのだが確証ともいうべき資料は殆ど無かった。
秘密の同盟に亜人達も数名、手を貸した者がいたらしいのだが、主要な人物は皆、既にこの世にはいなかった。戦争や暗闘で死んだそうだ。
その筆頭格がヌマタラシュク=エルフの『十文字槍のエイオン』だが、彼は少年時代のイズヴァルトのサーガの頃から数十年後、とある目的でイーズィ王国のとある街を襲撃した時に返り討ちに遭ったそうだ。
わかるところは殆ど無い。とにかく言えるのは『何らかの任務を受けていた』。だが、その条件や見返りがどんなものだったのかは謎だった。
「ご一緒していい?」
扉の向こうでモアナの声がした。どうぞと言う前に入ってきた。160センチほどの均整のとれた褐色の肌に、90センチ以上もある豊かなバストとヒップ。腹部はすっきりとしていた。
「おいおい。私はまだ返事をしていなかったよ?」
「頭の中をのぞき込めばわかるわ。ギルバート、悩ましい事考えてあそこが苛立ち始めたでしょ?」
図星である。ギルバートは悩むと勃起をしてしまう癖があった。湯舟の中のペニスは既に硬くなっていた。モアナは申し訳程度に身体に湯をかけると、広い湯舟の中に足を入れた。
ギルバートの太ももに己の尻を押し付けると、はっきりと屹立していたペニスを手にかけて甘くしごく。
「50過ぎなのにあいかわらず硬いわね?」
「3日間もご無沙汰だったからさ。女の肌がないと生きていけない身体だからな。今朝は夢精をしてしまったよ」
「嘘よ。だってきんたまが固くてぱんぱんだもの。ちゃんと老いを自覚しなさいな?」
モアナはギルバートのそこにまたがり、秘所の奥に導いた。彼のペニスは割と大きくて太い方だ。腰を動かし始めたモアナが喘ぎ始めた。
彼女のヴァギナはサキュバスらしく、精液の強奪に適したつくりをしていた。彼女はサキュバスとしては中の下ぐらい。とはいえれっきとした、アカサカチハヤの『あるじ』の手下である。20年程休暇を貰って市井で暮らしているが。
「んっ。リッケルトのちんちんも凄かったけど、やっぱりギルバートのが硬くてきもちいい……」
「そういうモアナのあそこは、相も変わらず搾り取って来るな……」
ギルバートも手紙を読むのを止め、モアナの尻の動きに合わせて腰を突き上げた。彼女とはもう6年もこうした関係を続けている。
彼女と知り合ったのは3番目の妻と離婚した直後だった。トリシア大学に臨時雇いの事務員として入ってきた彼女と仲良くなったギルバートは、知り合ってから5日して同棲することになった。
聞けば彼の先祖とも話をしたことがあるサキュバスだ。その頃は世界各地に隠れ住み、社会の動向を魔竜に知らせる役目があったという。
「んんっ! ちんぽからせりあがってきているわ!」
膣の感覚が異様に鋭いサキュバスが、ギルバートの限界が間近になったことを告げた。そんなものはわかっていると思いながら、彼は心置きなく彼女の膣奥にたっぷりと注ぎ込んだ。
つながりながら一息つける。駄目元でモアナに尋ねた。パラッツォ教とイーガの密約について知っているか。
「あの頃はチンゼー北部に配置されてたわ。『密航者』ならもしかしたら存じているかもしれないけれど」
「魔界から許可を得ずにこの世界に来た者達か。この辺に隠れ住んだりしているか?」
さあね。モアナはつながったままの尻を揺り動かす。肉づき良い臀部の誘いに屈さぬ男はインポテンツ以外にいなかった。
「あいつらが国の謀略に手を貸すなんて、大それたことをするわけがないじゃない? ばれたら即刻魔界へ強制送還よ。それだけじゃないの。矯正施設にぶち込まれて、数千年も『よいこ』にされるプログラムを施されるわ」
そのプログラムが快楽主義者ばかりの魔族にとって、どれだけの苦痛になるかご存じないのとモアナは言った。彼女もちょっとした悪さをして、100年近くぶちこまれた経験がある。
恐ろしく暇で仕方が無かったわ。性交は1週間に1度だけ。しかも5分。サキュバスにとってそれは致命的だった。出てきた頃、彼女はあばら骨が浮きあがるぐらいにやせてしまった。
「そこは調べても無駄よ」
「イーガにも近辺を探っていた魔族はいたんだろう?」
「あそこは国全体がエルフ仕込みの結界が施されていたの。今もそうよ。高位の魔族でなければうかつに近づけられない……イーガはこの世界で一番面倒なところよ。魔族にとってはね」
「と、なると……」
密約の全貌については永遠にわからない。再び精液を頂きにかかったモアナの乳房に触れながら、ギルバートはその様に結論づけた。
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