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第一部 少年騎士と幼き侍女(幼年編から少年編の間のお話)
25 トーリの野望(第一部最終話)
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この年16になる見習い騎士のルートヴィッヒ=ベートーベンは、すでに3人の子の父親となっていた。正式ではないが内縁の妻が3人いる。
どの女も彼が『カキタレ』にした、同じ道場に通っていた平民の娘達だ。彼は避妊に失敗した。遠征の後に3人同時に妊娠を告げられた。
彼の家ではその妻達によるいがみあいが毎日勃発していた。理由は誰が正妻になるのかについて。子供を多く産んだほうがそうなるべきという話となり、3人は競ってベートーベンに同じ褥で寝る事を求めた。
性欲旺盛なベートーベンとしては何ら問題ない話ではあった。けれども浮気相手のトーリや、尻穴をかわいがってとねだるマイヤと比べて3人はそれほどでもない。ちんぽを気持ちよくしてくれる内臓の出来もだ。
「ルートヴィッヒ、赤ちゃんちょうだい?」
「ねえねえ? はやくはやくぅ」
甘えた声でそうささやいて腰をくねらせる少女達に、それほど愛着を持てなくなっていた彼は、同衾の約束をしばしばすっぽかすようにもなった。
とはいっても4人目となる子を作ってはやった。しかし彼からの愛情が薄れていった妾達はねちねちとした性格になって家に暗い気分を持ち込んだ。
「正団員になったというけど、領地にお屋敷を構えてくれないのね」
「狭くて汚いナントブルグを出るのはいつ? 親からお金をたかられて困っているのよ」
「子供は王宮の文官や近衛騎士にしてあげたいの。その為の教育を受けさせるお金はちゃんと蓄えてあるんでしょうね?」
ベートーベンの稼ぎで買えるぐらいの宝石やドレスを身に着けて、妾達はあれやこれやを言い続ける。あるいは女同士で口汚く言い争い、下女まがいの妾以上にはなれない人柄をさらけ出す。
彼はとうとう嫌になってしまった。娘たちの親に金を積んで離縁の話を持ちかけている。彼の同僚の騎士らがよくやる手であった。もてあます平民の妾は慰謝料を払って縁を切る。
責任感が全く無い、と思う向きもあるが、もっと良い伴侶や二号さんと知り合う機会と財産があれば、男も女もやる事である。
その話をマイヤも聞いたことがある。自分がおばさんになった頃にイズヴァルトが将軍になって大領主になったら、きっと若い女の子のほうに行くかもしれない。
子供を産める年齢じゃなくなったら、尚更そうなるだろう。あの男のおちんちんはおじいさんになってもギンギンで濃厚な子づくり汁を放つはず。生殖への飽くなき渇望に突き動かされ、若い女の子宮を追い求めるに違いない。
自分はかわいくておっぱいがでかいからといって、おばあさんの歳まで今の様な容貌を保てるわけがない。愛想を尽かされて離縁を申し伝えられるかもしれない。
そうなった場合の為にも総合大学を建てる夢をかなえる用のお金だけでなく、生活するための蓄財も始めていた。イズヴァルトの遠征に必ず同行していたのはその理由もある。
武者達のちんぽをちゅぱちゅぱしたり、天幕の中で濃厚なセックスをのぞき見させたり、自分がうんちやおしっこをするところを見せたりして『癒しのマスコット』となっていた彼女だが、国王から臨時の軍属として国王からこっそりお手当を貰っていたのだ。
富豪やお貴族の屋敷にお呼ばれして、主人や性の経験がまだまだな御曹司のおちんぽにパイズリフェラをしたり、彼女の愛嬌に首ったけの夫人や娘とおまんこなめなめをして『おこづかい』をいただくのも継続。
国王陛下のおちんぽも試食した事だってあった。噂になっておる。どんなものか余にも試してほしい。「うあっ♥ うあっ♥ うああっ♥♥」と悶えさせて金貨とともにとっても美味しいザーメンも。塩気抑えめでクリーミーな濃厚白子汁であった。
絵のモデルも時たまやっている。おまんこをおっぴろげさせるポルノ絵画のモデルだ。彼女を題材にしたものは人気で、複製品が多く造られた。うんちぶりぶりのところを撮った映像水晶だってあった。
そんなわけでマイヤはホーデンエーネンではアイドルに似た存在となっていた。道行く人が「おしゃぶりひめ~!」と手を振ってくれる。無双の若武者イズヴァルトとセットでいる『おしゃぶり姫』。蓄財は相当なところまで行っていた。
しかし労働だけでの蓄財を彼女は信用しなかった。だいたい自分の書籍代とイズヴァルトの大食いとで費やされるからだ。ちなみにだが彼女はイズヴァルトにおごるのが大好き。相手が望んでいるもの以上を与えてしまう。ちんちん汁の増産の為、というのもあるが。
殖やす為の投資にも手を出していた。イズヴァルトの父に頼んで、市場の買い付けのための会社をこっそり設けて運営していた。新製品を作る工房に投資したりなどもしている。彼女はこちらに妙な才があった。
今のところは銀行に貸金庫を設けるぐらいにまでなっていた。前世でもっと長生きすれば経堂や田園調布で屋敷を建てたかもしれない、と思う。
「ルートヴィッヒさん、また来てくれるようになるかしら……」
夢をかなえるのともしもの時の為に備える為に現実的な妹とは違い、姉は浮気の事ばかりを考えている。大きなおなかを撫でながら。成功と出産と育児の事にしか頭に姉は、本当に『おじょうさま』なのだなとマイヤは思った。
「いいじゃない? 1本ぐらいおちんちんが減っても!」
「けど、お世話になった人のことが気になるのは悪いことかしら? ルートヴィッヒさんにはお貸した本が何冊かあるのよ。それを返してほしいんだけど……」
トーリはこの世界の軍記物だけでなく、転生人が持ち込んだ三国志演技やガリア戦記をベートーベンに貸していた。どれも彼女が3回ほど繰り返して読んでいた本だ。
「トーリ。貸した本はぜったい返してもらいなさいよ?」
マイヤは機嫌が悪くなった。トーリの本棚にあるものはどれも、マイヤがフェラチオのお駄賃で買ったものばかりだったからだ。そもそもがマイヤの持ち物でもある。
「そうね。けど、騎士様になったからにはベートーベンさんも繰り返し読めたほうがいいんじゃないかしら?」
ナントブルグの本屋でまた買えばいいじゃない。マイヤの本をまるで自分のものみたくトーリは笑って返す。マイヤは姉に苛立ち始めていた。妹のものは自分のもの。自分の物は自分の物という考え方に。
「そんなこと言っていると、イズヴァルトを貸さないよ!」
怒鳴ったマイヤはコリアンナを連れて部屋を出て行ってしまった。怒る仕草も我が妹ながらなかなかにかわいいものだ、と思いながら、トーリはのんきに大きくなったお腹をさすっていた。
□ □ □ □ □
6日の逗留の後、イズヴァルトとマイヤはナントブルグに戻って行った。半年後にはイズヴァルトが15になる誕生日を迎え、成人となる。晴れて正式な騎士に叙任される。
しかしそのあとすぐに旅に出る教えてくれた。彼の師匠でもあるヴィクトリアの故郷に向かい、彼女の遺灰の一部と宝刀の『姫竜の牙』を納めに行くのだという。
彼等が帰った夜は離れの小屋でルッソと抱き合いながら、その話ばかりだった。行為の後に己のヴァギナのあたりを指でまさぐり、夫が放ったものがこぼれ出るのを確かめながらトーリは問いかける。
「旅に出て戻って来るのは1年近く後になりそうだと言ってたけど、向かおうとしているヒッジランドってどんなところなのかしら?」
「ホーデンエーネン北部より雪深いと聞いたことがあるよ。トーリも一緒に行きたかった?」
「寒いところなのね。私は全然行きたいとは思わないけれど、寒がりなマイヤが途中で帰ってしまいそうな気がするわ」
「そうはならないさ。それと、ヒッジランドは温泉がとても多いと聞いたことがあるな」
温泉は子宝に恵まれる効能があると信じられていた。むしろマイヤはヒッジランドで楽しい旅をして過ごし、子供を孕んで戻ってくるかもしれないよとルッソはつぶやいた。
マイヤもそろそろ11歳だ。子供を産んで育てるにはまだ幼いが、彼女の発育の良さを考えれば子供が生まれるのも考えられなくも無かった。
大事なお腹を冷やさないようにとトーリはお腹にさらしを巻きながら、「そうかもしれないわね」と笑う。先に戻っているからとルッソは服を着て出て行った。
トーリは目を閉じて名を呼んだ。水色の髪のサキュバスが扉の前に姿を現した。素裸で股から精液をこぼしている。村の男の家に忍び込んで精をいただいてきたのだ。
「どのようなご用事でしょうか、ひめさま?」
「貴方達の見立てを聞きたいの。マイヤはいつ赤ちゃんを産めるようになるのかしら?」
トーリはカミラの仲間、自分を姫と仰ぐサキュバスらを何人かイズヴァルトにつけていた。夜中にこっそりとイズヴァルトのペニスをいただき、とても強い魔力を含む良質の精液を頂いたとも語ってくれた。
「ナントブルグにいるロザリンドによれば、イズヴァルトさまの成人の儀の頃には月のものが始まるかもしれないと……」
「貴方達の魔法で遅くすることはできない? 3年、いいえ5年は。そのぐらいになればあの子が願っている大学を建てる夢もあと一歩というところまで行くかもしれない」
イズヴァルトの名声と土地と国王からの信頼、マイヤの蓄財が順調であれば10年のうちに叶えるはずだ、とトーリは言った。彼女はカミラ達に2人の事を調べさせ、思っている以上になっている事を知っていた。
「子供ができるといろいろとできなくなるわ……せいぜいがおちんちんの食べ比べぐらい。私にはこっちがあっているけど」
「うふふ。ひめさまは女王様の血を強く引き継いでおりますからね。マイヤさまの子を産めなくする魔法は確かにございますが……」
生理が始まるのを送らせたり避妊の魔法をかけ続けると、マイヤの身体に悪影響を与えるかもしれない。トーリとマイヤの一族は多産と繁栄を求める女王の血が流れており、そういった魔法をずっとかけられていると、身体が拒否反応を起こすかもしれないと答えた。
「特に子宮や卵巣が弱くなる……不潔にしたらという話になりますが、重い病にかかりやすくなるかもしれません。特にマイヤさまはもともとお身体が丈夫でないご様子。イズヴァルトさまや他の殿方の精液の力でもってあのように生き生きとなられておいでですが」
「それでも、あの子には前世でかなえられなかった夢を叶えて欲しいの。前世をとても悔んでいたわ」
マイヤは姉にこう語っていた。実家が太いから休学で済ませたものの、子供が生まれてしまい学者や研究者になる夢が遠のいてしまった。そして突然の事故死。子供にも寂しい思いをさせてしまっただろう。
新しい人生を送っている今の自分は、学者となり大学を建ててそこの教授や学長となり、子供も産み育てて大人になるまで見届けたい。
「全てが終わった後はイズヴァルトさんとゆっくり老後を過ごしたいって。その為には私や他の女の子がするように、早くに結婚して早くに子供を産むみたく、生き急いではいけないの」
「……カツランダルクの王国さえ健在であれば。マイヤさまも容易く夢を叶えられたでしょうに」
あるいはフロリーナ様が生きていらっしゃれば。トーリとマイヤはホーデンエーネン王家の姫君として財と権勢を得て、人々から崇拝されていたはずだったとカミラは嘆いた。
「そうね。けど、私もこの村の農婦で一生過ごす気は無いわ。イズヴァルトさんの家宰になってほしいっていうマイヤの誘いは断っているけど……」
カミラ達が密かに望んでいる、自分とマイヤの王国をつくる事は、いつでもそう動けるように腹をくくっているとトーリは言う。血筋から言えば彼女達は現王の孫にあたる。ホーデンエーネン王家と血を絡めあったカツランダルクの嫡流だからである。
そもそもが王宮にいるはずなのに『裏切り者』のソーロー家によって祖母は殺された。まだ幼かった母は見つけ出して助けてくれたカミラ達によって育てられたが、魔の才は無く復讐を果たすのをやめて市井に生きることにした。
結婚後はカミラ達に頼る事も無く、夫とともにつつましく暮らしていた。しかしその母と父が流行り病で死んだ事にトーリは疑念を抱いていた。ソーロー家が手をまわしていたのではないのか。どうして自分達姉妹が襲われたのか。向こうは既に気づいているはずに違いない。
「では、ひめさまはどの様に王国をいただこうと?」
「オルフレッドよ。あの子を王宮勤めの騎士にするの。マイヤから聞いたけど、王様付きの宮廷騎士は先祖の血を調べることをするみたいね?」
国王付きの宮廷騎士には出自もさることながら、身体に流れる血も重く見られていた。医療魔導士による遺伝子検査の魔法でもって調べられる。国王の側室にもそれが求められた。
宮廷騎士にも側室候補にも、遠い先祖にホーデンエーネン王家の一族の血が流れているか否かで決まる。フロリーナには少しだけだがホーデンエーネン家の血が流れていた。
その血筋の検査の結果をホーデンエーネン王国は大事に保管していた。彼等彼女達にはその事実を伝え、王家の血が流れる者として強い忠誠心を求めるのだ。
トーリの野望。オルフレッドを武を学ばせ、宮廷騎士にさせる。遺伝子検査でイズヴァルトの子であることがわかってしまうだろうが、同時に彼の血がフロリーナの血をついでいることが国王が知るはず。
(そうなれば……)
自分は王族として迎え入れられるだろう。オルフレッドとともに。イズヴァルトという強力な後ろ盾を手に入れた後は『裏切者』達と正面切って戦い、勝利を収めてみせる。
「カミラ、私はね……」
イズヴァルトと同じ師にオルフレッドを学ばせたい。カミラはうなずいた。御心のままになさいませ。そうと決まればオルフレッドをシギサンシュタウフェンに預ける段取りを考えなくては。
(その為にもまずはルッソを説き伏せなくちゃ。)
しかしその決断が数年後、自分と家族とを大いに苦しませる事をトーリはまだ知らない。
『少年騎士と幼き侍女』 了
どの女も彼が『カキタレ』にした、同じ道場に通っていた平民の娘達だ。彼は避妊に失敗した。遠征の後に3人同時に妊娠を告げられた。
彼の家ではその妻達によるいがみあいが毎日勃発していた。理由は誰が正妻になるのかについて。子供を多く産んだほうがそうなるべきという話となり、3人は競ってベートーベンに同じ褥で寝る事を求めた。
性欲旺盛なベートーベンとしては何ら問題ない話ではあった。けれども浮気相手のトーリや、尻穴をかわいがってとねだるマイヤと比べて3人はそれほどでもない。ちんぽを気持ちよくしてくれる内臓の出来もだ。
「ルートヴィッヒ、赤ちゃんちょうだい?」
「ねえねえ? はやくはやくぅ」
甘えた声でそうささやいて腰をくねらせる少女達に、それほど愛着を持てなくなっていた彼は、同衾の約束をしばしばすっぽかすようにもなった。
とはいっても4人目となる子を作ってはやった。しかし彼からの愛情が薄れていった妾達はねちねちとした性格になって家に暗い気分を持ち込んだ。
「正団員になったというけど、領地にお屋敷を構えてくれないのね」
「狭くて汚いナントブルグを出るのはいつ? 親からお金をたかられて困っているのよ」
「子供は王宮の文官や近衛騎士にしてあげたいの。その為の教育を受けさせるお金はちゃんと蓄えてあるんでしょうね?」
ベートーベンの稼ぎで買えるぐらいの宝石やドレスを身に着けて、妾達はあれやこれやを言い続ける。あるいは女同士で口汚く言い争い、下女まがいの妾以上にはなれない人柄をさらけ出す。
彼はとうとう嫌になってしまった。娘たちの親に金を積んで離縁の話を持ちかけている。彼の同僚の騎士らがよくやる手であった。もてあます平民の妾は慰謝料を払って縁を切る。
責任感が全く無い、と思う向きもあるが、もっと良い伴侶や二号さんと知り合う機会と財産があれば、男も女もやる事である。
その話をマイヤも聞いたことがある。自分がおばさんになった頃にイズヴァルトが将軍になって大領主になったら、きっと若い女の子のほうに行くかもしれない。
子供を産める年齢じゃなくなったら、尚更そうなるだろう。あの男のおちんちんはおじいさんになってもギンギンで濃厚な子づくり汁を放つはず。生殖への飽くなき渇望に突き動かされ、若い女の子宮を追い求めるに違いない。
自分はかわいくておっぱいがでかいからといって、おばあさんの歳まで今の様な容貌を保てるわけがない。愛想を尽かされて離縁を申し伝えられるかもしれない。
そうなった場合の為にも総合大学を建てる夢をかなえる用のお金だけでなく、生活するための蓄財も始めていた。イズヴァルトの遠征に必ず同行していたのはその理由もある。
武者達のちんぽをちゅぱちゅぱしたり、天幕の中で濃厚なセックスをのぞき見させたり、自分がうんちやおしっこをするところを見せたりして『癒しのマスコット』となっていた彼女だが、国王から臨時の軍属として国王からこっそりお手当を貰っていたのだ。
富豪やお貴族の屋敷にお呼ばれして、主人や性の経験がまだまだな御曹司のおちんぽにパイズリフェラをしたり、彼女の愛嬌に首ったけの夫人や娘とおまんこなめなめをして『おこづかい』をいただくのも継続。
国王陛下のおちんぽも試食した事だってあった。噂になっておる。どんなものか余にも試してほしい。「うあっ♥ うあっ♥ うああっ♥♥」と悶えさせて金貨とともにとっても美味しいザーメンも。塩気抑えめでクリーミーな濃厚白子汁であった。
絵のモデルも時たまやっている。おまんこをおっぴろげさせるポルノ絵画のモデルだ。彼女を題材にしたものは人気で、複製品が多く造られた。うんちぶりぶりのところを撮った映像水晶だってあった。
そんなわけでマイヤはホーデンエーネンではアイドルに似た存在となっていた。道行く人が「おしゃぶりひめ~!」と手を振ってくれる。無双の若武者イズヴァルトとセットでいる『おしゃぶり姫』。蓄財は相当なところまで行っていた。
しかし労働だけでの蓄財を彼女は信用しなかった。だいたい自分の書籍代とイズヴァルトの大食いとで費やされるからだ。ちなみにだが彼女はイズヴァルトにおごるのが大好き。相手が望んでいるもの以上を与えてしまう。ちんちん汁の増産の為、というのもあるが。
殖やす為の投資にも手を出していた。イズヴァルトの父に頼んで、市場の買い付けのための会社をこっそり設けて運営していた。新製品を作る工房に投資したりなどもしている。彼女はこちらに妙な才があった。
今のところは銀行に貸金庫を設けるぐらいにまでなっていた。前世でもっと長生きすれば経堂や田園調布で屋敷を建てたかもしれない、と思う。
「ルートヴィッヒさん、また来てくれるようになるかしら……」
夢をかなえるのともしもの時の為に備える為に現実的な妹とは違い、姉は浮気の事ばかりを考えている。大きなおなかを撫でながら。成功と出産と育児の事にしか頭に姉は、本当に『おじょうさま』なのだなとマイヤは思った。
「いいじゃない? 1本ぐらいおちんちんが減っても!」
「けど、お世話になった人のことが気になるのは悪いことかしら? ルートヴィッヒさんにはお貸した本が何冊かあるのよ。それを返してほしいんだけど……」
トーリはこの世界の軍記物だけでなく、転生人が持ち込んだ三国志演技やガリア戦記をベートーベンに貸していた。どれも彼女が3回ほど繰り返して読んでいた本だ。
「トーリ。貸した本はぜったい返してもらいなさいよ?」
マイヤは機嫌が悪くなった。トーリの本棚にあるものはどれも、マイヤがフェラチオのお駄賃で買ったものばかりだったからだ。そもそもがマイヤの持ち物でもある。
「そうね。けど、騎士様になったからにはベートーベンさんも繰り返し読めたほうがいいんじゃないかしら?」
ナントブルグの本屋でまた買えばいいじゃない。マイヤの本をまるで自分のものみたくトーリは笑って返す。マイヤは姉に苛立ち始めていた。妹のものは自分のもの。自分の物は自分の物という考え方に。
「そんなこと言っていると、イズヴァルトを貸さないよ!」
怒鳴ったマイヤはコリアンナを連れて部屋を出て行ってしまった。怒る仕草も我が妹ながらなかなかにかわいいものだ、と思いながら、トーリはのんきに大きくなったお腹をさすっていた。
□ □ □ □ □
6日の逗留の後、イズヴァルトとマイヤはナントブルグに戻って行った。半年後にはイズヴァルトが15になる誕生日を迎え、成人となる。晴れて正式な騎士に叙任される。
しかしそのあとすぐに旅に出る教えてくれた。彼の師匠でもあるヴィクトリアの故郷に向かい、彼女の遺灰の一部と宝刀の『姫竜の牙』を納めに行くのだという。
彼等が帰った夜は離れの小屋でルッソと抱き合いながら、その話ばかりだった。行為の後に己のヴァギナのあたりを指でまさぐり、夫が放ったものがこぼれ出るのを確かめながらトーリは問いかける。
「旅に出て戻って来るのは1年近く後になりそうだと言ってたけど、向かおうとしているヒッジランドってどんなところなのかしら?」
「ホーデンエーネン北部より雪深いと聞いたことがあるよ。トーリも一緒に行きたかった?」
「寒いところなのね。私は全然行きたいとは思わないけれど、寒がりなマイヤが途中で帰ってしまいそうな気がするわ」
「そうはならないさ。それと、ヒッジランドは温泉がとても多いと聞いたことがあるな」
温泉は子宝に恵まれる効能があると信じられていた。むしろマイヤはヒッジランドで楽しい旅をして過ごし、子供を孕んで戻ってくるかもしれないよとルッソはつぶやいた。
マイヤもそろそろ11歳だ。子供を産んで育てるにはまだ幼いが、彼女の発育の良さを考えれば子供が生まれるのも考えられなくも無かった。
大事なお腹を冷やさないようにとトーリはお腹にさらしを巻きながら、「そうかもしれないわね」と笑う。先に戻っているからとルッソは服を着て出て行った。
トーリは目を閉じて名を呼んだ。水色の髪のサキュバスが扉の前に姿を現した。素裸で股から精液をこぼしている。村の男の家に忍び込んで精をいただいてきたのだ。
「どのようなご用事でしょうか、ひめさま?」
「貴方達の見立てを聞きたいの。マイヤはいつ赤ちゃんを産めるようになるのかしら?」
トーリはカミラの仲間、自分を姫と仰ぐサキュバスらを何人かイズヴァルトにつけていた。夜中にこっそりとイズヴァルトのペニスをいただき、とても強い魔力を含む良質の精液を頂いたとも語ってくれた。
「ナントブルグにいるロザリンドによれば、イズヴァルトさまの成人の儀の頃には月のものが始まるかもしれないと……」
「貴方達の魔法で遅くすることはできない? 3年、いいえ5年は。そのぐらいになればあの子が願っている大学を建てる夢もあと一歩というところまで行くかもしれない」
イズヴァルトの名声と土地と国王からの信頼、マイヤの蓄財が順調であれば10年のうちに叶えるはずだ、とトーリは言った。彼女はカミラ達に2人の事を調べさせ、思っている以上になっている事を知っていた。
「子供ができるといろいろとできなくなるわ……せいぜいがおちんちんの食べ比べぐらい。私にはこっちがあっているけど」
「うふふ。ひめさまは女王様の血を強く引き継いでおりますからね。マイヤさまの子を産めなくする魔法は確かにございますが……」
生理が始まるのを送らせたり避妊の魔法をかけ続けると、マイヤの身体に悪影響を与えるかもしれない。トーリとマイヤの一族は多産と繁栄を求める女王の血が流れており、そういった魔法をずっとかけられていると、身体が拒否反応を起こすかもしれないと答えた。
「特に子宮や卵巣が弱くなる……不潔にしたらという話になりますが、重い病にかかりやすくなるかもしれません。特にマイヤさまはもともとお身体が丈夫でないご様子。イズヴァルトさまや他の殿方の精液の力でもってあのように生き生きとなられておいでですが」
「それでも、あの子には前世でかなえられなかった夢を叶えて欲しいの。前世をとても悔んでいたわ」
マイヤは姉にこう語っていた。実家が太いから休学で済ませたものの、子供が生まれてしまい学者や研究者になる夢が遠のいてしまった。そして突然の事故死。子供にも寂しい思いをさせてしまっただろう。
新しい人生を送っている今の自分は、学者となり大学を建ててそこの教授や学長となり、子供も産み育てて大人になるまで見届けたい。
「全てが終わった後はイズヴァルトさんとゆっくり老後を過ごしたいって。その為には私や他の女の子がするように、早くに結婚して早くに子供を産むみたく、生き急いではいけないの」
「……カツランダルクの王国さえ健在であれば。マイヤさまも容易く夢を叶えられたでしょうに」
あるいはフロリーナ様が生きていらっしゃれば。トーリとマイヤはホーデンエーネン王家の姫君として財と権勢を得て、人々から崇拝されていたはずだったとカミラは嘆いた。
「そうね。けど、私もこの村の農婦で一生過ごす気は無いわ。イズヴァルトさんの家宰になってほしいっていうマイヤの誘いは断っているけど……」
カミラ達が密かに望んでいる、自分とマイヤの王国をつくる事は、いつでもそう動けるように腹をくくっているとトーリは言う。血筋から言えば彼女達は現王の孫にあたる。ホーデンエーネン王家と血を絡めあったカツランダルクの嫡流だからである。
そもそもが王宮にいるはずなのに『裏切り者』のソーロー家によって祖母は殺された。まだ幼かった母は見つけ出して助けてくれたカミラ達によって育てられたが、魔の才は無く復讐を果たすのをやめて市井に生きることにした。
結婚後はカミラ達に頼る事も無く、夫とともにつつましく暮らしていた。しかしその母と父が流行り病で死んだ事にトーリは疑念を抱いていた。ソーロー家が手をまわしていたのではないのか。どうして自分達姉妹が襲われたのか。向こうは既に気づいているはずに違いない。
「では、ひめさまはどの様に王国をいただこうと?」
「オルフレッドよ。あの子を王宮勤めの騎士にするの。マイヤから聞いたけど、王様付きの宮廷騎士は先祖の血を調べることをするみたいね?」
国王付きの宮廷騎士には出自もさることながら、身体に流れる血も重く見られていた。医療魔導士による遺伝子検査の魔法でもって調べられる。国王の側室にもそれが求められた。
宮廷騎士にも側室候補にも、遠い先祖にホーデンエーネン王家の一族の血が流れているか否かで決まる。フロリーナには少しだけだがホーデンエーネン家の血が流れていた。
その血筋の検査の結果をホーデンエーネン王国は大事に保管していた。彼等彼女達にはその事実を伝え、王家の血が流れる者として強い忠誠心を求めるのだ。
トーリの野望。オルフレッドを武を学ばせ、宮廷騎士にさせる。遺伝子検査でイズヴァルトの子であることがわかってしまうだろうが、同時に彼の血がフロリーナの血をついでいることが国王が知るはず。
(そうなれば……)
自分は王族として迎え入れられるだろう。オルフレッドとともに。イズヴァルトという強力な後ろ盾を手に入れた後は『裏切者』達と正面切って戦い、勝利を収めてみせる。
「カミラ、私はね……」
イズヴァルトと同じ師にオルフレッドを学ばせたい。カミラはうなずいた。御心のままになさいませ。そうと決まればオルフレッドをシギサンシュタウフェンに預ける段取りを考えなくては。
(その為にもまずはルッソを説き伏せなくちゃ。)
しかしその決断が数年後、自分と家族とを大いに苦しませる事をトーリはまだ知らない。
『少年騎士と幼き侍女』 了
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