聖騎士イズヴァルトの伝説 外伝 『女王の末裔たち』

CHACOとJAGURA

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第一部 少年騎士と幼き侍女(幼年編から少年編の間のお話)

22 ハーフリングの悪党ども

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 マイヤとトーリの姉妹は拉致された。彼女達が連れ込まれた小屋の中では、身体と意識とを縛られた姉妹の身体を貪る者達の姿があった。

 覆いかぶさり、のしかかって腰を振るのは金髪のハーフリング達。ハン=ソーローに雇われたセルゲイというハーフリングの仲間のうち2人だ。

 可愛らしい幼い少年のなりに似つかわしくない15センチ以上のペニスを勃起させ、トーリとマイヤの膣の味を心ゆくまで堪能していた。

「反応が無いのはつまらないけど……」
「この姉妹の穴、吸い付きも締りもとんでもねえ! たまらねえよな!」
「そりゃそうだけど……30分でお姉さんのと交換しろよな? 妹のはちと浅いんだよ……」

 拉致からおよそ20時間ほど経っていた。小屋の外で布製の携帯椅子に座り、下半身を丸裸にしてたばこをふかしていたセルゲイは、同じ格好のもう1人が亀頭の先を指でくすぐり遊んでいたのをちらと見て尋ねた。

「あれだけやりまくったのにまだやり足らないのか?」
「ちんぽをいじってきんたまを活性化させているんだよ。しっかし、あの姉妹のまんこはすげえな!」

 あれだけ吸い込んでくるのは亜人の中の名器といい勝負。ニンゲンのヴァギナでは滅多に味わえない逸品だと褒めちぎった。

「けどやりすぎた。15発も中出し出来たのは最近はさすがになかったな。すんげえ疲れた……」
「ああそうだな。セルゲイ、タバコくれよ」
「パイプは俺のだけだよ。紙巻きのをやるよ」

 セルゲイはバッグから箱を取り出した。受け取ったもう1人は指をぱちんと弾き、タバコの先端に火をつけた。

「ぷふーっ。あ、これカイロネイアのエルフが密造している麻薬入りだな?」
「『山の長老の惚れ薬』というやつさ。きんたまがすっからかんでもちんこが自然と立ってくるよ」
「なあに、10時間も経ったからもう満タンだろう。あいつらとはもうそうろそろ交代の時間だよな?」
「そうなんだが……身体がすごいだるい。俺はあと5時間ほどこうしているよ」

 セルゲイは血が集まったままだらんとしているペニスを見ると大あくびをした。普段は3日ぐらい寝なくても大丈夫なのに、やけに眠気が強くて仕方がない。

(なんていうか、身体の活力とか魔力とか、精液と一緒に吸い取られた様な気がするんだよな。あの姉妹、先祖がサキュバスだったか?)

 とはいえ精気が無尽蔵に近いハーフリングをここまで疲労させるのは『本家』以外にありえない。それも中級以上の淫魔でなければ。

(もしかしたら『吸われた』かもしれねえや。本当に『取るに足らねえ村娘』なのかな、あいつら?)

 うち1人のちっこいのは、ヨーシデンで見たことがある。イズヴァルトとかいうデカブツと一緒の小娘だ。マリベーラがひどく興奮していたな。

(いくら可愛いからってマリベーラのやつ、キョドりやがって。カントニアの『やまねこ』があんな情けねえ声を出すなよ、ったく。)

 可愛いのはよくわかる。庇護欲をそそる愛くるしさでいっぱいだ。大概にそういうニンゲンの娘はハーフリングの血が流れていたりすることが多々ある、とセルゲイは聞いている。

(……俺達の仲間の血も混じっているのか。当然姉の方にもだよな。けどあっちには、きれいだとかすけべえなまんこをしてやがるとぐらいしか思えなかったが。うーむ。)

 とはいえ、ヴァギナの吸精ぶりは姉のほうが上に思えた。肌もあっちのほうが質がいい。いや、甲乙つけがたいな。どちらもいい。

(カントニアに持ち帰りたいなあ。たっくさんいぢめて赤ん坊をこさえさせよう。金持ち向けの娼婦に仕込むのもいい。姉妹揃って素質は十分にありそうだ。)

 しかしカントニアはよろしくない。マリベーラが目を光らせているからだ。マイヤとかいうガキに一目惚れしてしまったらしいから、別の大陸で囲わなきゃ。

(と、なるとムーツのムラカミヴィアか……パラッツォ教がうざいがエチウ諸島の知り合いのところだな。うん。エチウがいい。あの姉妹をコーザのやつの通い妻にさせよう。たくさん金貨をくれるだろうよ。)

 その為にはこの人さらいを命じた依頼主を、騙す手はずを整えなければならない。

 依頼した人物は先日死去したハン=ソーローの代理人、ケノービ=スカルファッカーだ。

 姉妹を殺して首をナントブルグの館に送り届けろなどと注文を言ってきている。しかも金貨2枚で。ハンであればこれの5倍は出してくれたはずなのにけちだ。

(いわゆる試練だろうが、ハン様の後継者は陰謀家にむいてないなあ。)

 取るに足らない村娘の殺害なんぞ、そんなはした金でやるつもりはない。この依頼はこの時点で放棄させていただく。この大陸で稼ぎたいと思う額の半分も得られなかったが。

(ホーデンエーネンはもういいや。もうちょっとこの小屋で楽しんだら、まずはイーガ王国に向かいましょうか。)

 イーガから定期船で大陸北東部の大貿易港・アヅチハーゲンへと向かう。そこから遠洋航海船に乗り、ムーツ大陸に上陸しよう。

 マリベーラはもうキンキ大陸を去っていた。仲良くなったサキュバス2人と共に、シマナミスタン経由でカントニアに向かうと言っていた。

 ゾウズジャヤに『お礼参り』するためにではない。大陸東部の最南端にあるナハリジャーヤ島に立ち寄るのが主目的だ。シマナミスタン=ドワーフが多く住んでいるトサヴァール国にある島だ。

 シマナミスタン=ドワーフは絶倫ばかり。マリベーラは『さきゅまま』と慕うサキュバス達に『おちんぽくいだおれツアー』を楽しんでもらう為に企画した。

 その自分はナハリジャーヤで長逗留するつもりであった。知り合いが沢山いるという。ナハリジャーヤは女黒髪エルフの女護島みたいなものだ。

 常夏の土地で蒸し暑いが、甘い芋や野菜がたくさんとれる。近海はカツオの漁場として有名だった。

 マリベーラはそこの住民たちと芋を食らって海を泳ぎ、カツオの一本釣りを楽しむ魂胆だった。ついでだがおおらかで母性的な慈愛にあふれる知り合い達に思いきり甘やかされ、「ひゃあああん!」と啼く毎日を楽しもうとしていた。
 
「セルゲイ、マリベーラが向かったナハリジャーヤ島、どんなところだろうな?」
「聞いた話じゃこの世の天国みたいな所らしいぜ。野蛮人みたいな生活をしていると思いきや、図書館もあれば芸術も盛んらしい。女達もボインばかりだ」
「けっ。マリベーラについていくべきだったぜ」

 これからのことを考えると面倒くさい。まずは捜索の手をどうやってまくかだ。この小屋は牧童の村から3時間という場所にある。もとはこの辺を根城にしていた盗賊達の雨宿り小屋だ。
 
 盗賊団は去年まではこの辺を拠点にしていたがもういない。殆どが魔竜戦役で傭兵となったからだ。そちらのほうが実入りが良かった。トンダバヤシで多くが死んだ。

「ふわーあ……俺はちょっと寝るよ」

 そう言ってセルゲイは目を閉じた。もう1人も腰の疲れが重たかったからか、ああ、とうなずいたままタバコを地面に落としていびきをかきはじめた。

 中ではトーリとマイヤの身体を楽しんでいた2人が、彼女らに覆いかぶさったまま眠っていた。

 ハーフリング達は気づいていなかった。小屋の周囲で霧が漂い始めていた事に。その霧の中から、水色の髪をなびかせた美しい女が1人、立っていたのも。


□ □ □ □ □


 トーリとマイヤが行方不明になった。イズヴァルトはルッソとベートーベンとともに姉妹を探す為に北へと向かった。

 そこには盗賊団の根城があるという噂があったからだ。盗賊はよく、このあたりで人さらいをする。

「……マイヤどのは無事でござろうか?」

 森の中の道を馬で駆けながらイズヴァルトは前にいるルッソに呼びかける。彼は意外と乗馬が得意だ。聞けば弓も上手で騎射も心得ているという。趣味程度であるが。

「わからない。けど、俺は2人が無事だと信じているよ!」
「でござるな! マイヤは悪運がとても強いと占い師にも判を押されているでござるよ!」

 二人は絶対に無事。むしろあの2人がさらった連中をあの手この手で籠絡するはず。時にはくすくすと笑う。これは楽観的な事を言って互いを励ます為だった。内心は不安でいっぱいだ。

 同行するベートーベンは押し黙ったままだ。2人を連れ出したことで責任を感じていた。そんなに気にするなよとルッソは言ってくれたが、探し始めてから掛ける言葉が一つも見つからなかった。

(くそ。こんなことになるんだったあの2人とは!)

 しかしこれに関してはベートーベンだけを責めるわけにはいかないだろう。トーリとマイヤも楽しんだのだから。彼はこう決めていた。姉妹を助け出したらナントブルグへ戻ろう。

 彼らはセルゲイ達がいる小屋から5キロほど南のところにいた。しかし煙は立たず道から外れたところにある小屋を見つけるのは難しい。

 イズヴァルトとルッソは盗賊団の情報をできるだけ集めてから出発した。しかし彼等は確実な情報を得ていない。手探りとなる。

 森も小川が流れている開けたところから鬱蒼なところへ。警戒しとけよ、とルッソがイズヴァルトに言う。ここは狼も出るらしいよ?

「狼さんであればなんとかなるでござるが……うむ!」

 前方の茂みでがさがさ、と音が立つのを聞き取った。前を歩いていたルッソが急ぎ馬を引き返す。が、持っていた弓矢を素早く番えて物音のほうに放った。

 矢は鏃の先が丸っこく、殺傷力の低い脅し矢だった。ばれたか、叫ぶ男たちの声が聞こえ、敵は多勢に無勢だと叫び飛び出した。

 ひげぼうほうで疲れ切った顔をし、ぼろぼろの革鎧に身をまとった10名ほどの男達だった。剣と山刀を持った彼等は雄叫びをあげながら襲いかかる。

 しかし取り囲むのではなく、前から攻めかかる。もとは知らずに通りかかったのを背後から襲いかかる作戦だったのだろう。

「ベートーベンどの! 拙者らの出番でござる!」

 イズヴァルトは鉄の棒尺を掲げて呼びかける。矢が放たれたが素早く身をかわした。驚いたルートヴィッヒは腰の剣を抜いた。

「狙うならお馬さんでござるよ! いざ!」

 攻めかかるイズヴァルトとあとに続くベートーベンは、あっという間にならず者達を蹴散らしてしまった。4名程は討たれ、残りの6名はおとなしく捕らわれた。

 降参した1人に馬上のイズヴァルトは「何者でござる?」と尋ねた。彼等は東のシングリッヘン地方から来た流賊のはぐれ者だと語った。

「おろ? このあたりの盗賊団ではなかったでござるか?」
「そんなの知らねえよ若武者さま!」
「俺達はヤマート大河をうまく下って、南の山賊団の仲間入りをしようと考えてたんだ!」
「一時期は300人近くいたんだけどな! ちくしょうめ!」

 彼等は頭目を口汚くののしった。シングリッヘンの警備兵団に追い出された彼等は、アスカウの南にある山賊団と合流することを考えた。

 途中にシギサンシュタウフェンがあるのだが、最近えらく羽振りいいと聞き、襲撃する事にした。若い娘と財貨の略奪の為である。

 しかし険しい山道ばかりで向かうのに困難なだけでなく、流賊団の襲撃を知ったシギサンシュタウフェン公は郎党を集めて彼等を打ち破ってしまったのだ。

「200人近くの仲間が討ち取られちまったよ。たった30人に!」
「山猿領主だと思ったらとんだ大違いさ。あんなとんでもなく強い騎士はこれまでお目にかかったことがなかった!」
「で、若さま。よーく見ればあの領主様にどことなく似ているようですが……ああそうなの。息子さん? ふーん……」

 生き残りの4名は土下座して命乞いを始めた。この流賊達も事情を聞けばもとはシングリッヘンの半農の兵士達。

 もしよければと、イズヴァルトは彼等に故郷の父への紹介状を書くことを約束した。父の手紙で土木作業員が足りていない事を知っていたからである。

「ありがてえ。ありがてえ!」
「イズヴァルト若さまは素晴らしいお人じゃあ!」
「……褒めるのも大概にしてほしいでござるよ。どうせきついお仕事で逃げ出すかもしれぬでござるし。さて、その前に貴殿らには手伝ってほしい事がござる」

 徒歩で申し訳ないがこの先の道案内を頼んでもらえないか。彼等は快く引き受けた。断ると怖い顔をして剣を構えているベートーベンに殺されると思ったからだ。
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