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第一部 少年騎士と幼き侍女(幼年編から少年編の間のお話)
08 遠征行⑦
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その日の夜、セルゲイら4名のハーフリングは館の客間で泊まることとなった。出発は明日の朝である。
雑念無く任務を遂行する為にと、大公は館の若い侍女を1人ずつ、閨の相手として彼らにあてがってくれた。客間では女達の矯声が響き渡り続けた。
4人は身長が120センチぐらいの、子供そのものの顔と身体だが、股間にあるものは大人のそれであった。
15センチぐらいあるやけに大きなペニスと、くろぐろとした立派なふぐり。彼らは頭1つぶん背の高い女体に絡みつき、ぐいぐいと腰を振り動かして喘がせた。
「あうあうあうあう!」
「しゅごい! しゅごい! しゅごおいいっ!」
お楽しみが始まってから2時間を過ぎたが、娘たちはよがって喘いで悶え続けている。未だに彼らの腰は止まらない。股の奥の女肉は沼のようにほぐれてしまい、がちがちに硬いペニスにえぐられるままだった。
(ちびっこのくせにいっちょ前の男みたいにお盛んなんだから。どういうこと?)
娘達はヴァギナの隅々を精液まみれにされながら、なおも突いてくる相手をしつこいと思いながらも身を委ねる。彼女たちはハーフリングの性欲の凄さを全く存じていなかった。
「のおっ。のおーっ!」
「つ、つかれたからやすませてー!」
娘たちのほうから音を上げた。この娘らも館の兵士や伊達男といい仲になって、蹂躙される楽しみを覚えたり時には堕胎や私生児を産んだりした事もあるぐらいにお盛んだったが。
なんだい、とセルゲイは興ざめな気分でしがみついていた娘の尻から離れた。不相応におっきな反り返りは、精液混じりの淫水でぬらりとなっていた。
「俺たちハーフリングはこれっぽっちじゃ、ぜんぜん満足出来ないんだよ?」
「しょ、しょうなの?」
「おまえ、ドワーフ男とやったことがあるか? あいつらはどんな虚弱体質でも6時間は平気でガン突くんだ。俺らは半分その血を引いている」
「て、ていうことは3時間ぐりゃい?」
「ちげえよ。エルフ男の4時間を含めて5時間さ。おりゃっ!」
セルゲイはまたも尻に組み付いて挿れてきた。赤銅色に変色した硬直した海綿体が、ザーメンを垂らしながら入り口をぱっくりと開けて迎え入れようとするヴァギナに突撃し、奥まで食い込んだ。
「ああううう!」
その娘は1時間後に失神したが、言われる通りその後3時間もいいようにされてしまった。他の娘たちも絶頂の果てに意識がぷつんと切れてしまった。はからずもこの娘らは全員がセルゲイらの子を産む事となる。
性交が始まってからおおよそ5時間。金玉袋がすっかり落ち着いてちんぽもしなしなになったセルゲイらは、相手となった女の尻やおっぱいを枕にして、いびきをかきはじめた。
その様子を伺っていた者がいる。この客間の天井裏に潜んでいた。セルゲイらが娘たちを貪ってやかましく喘がせ始めてからずっとであった。
「やっと寝てくれたか。性獣どもめ……」
やかましいったらありゃしない、という口ぶりで、天井裏に潜むもう1人に呼びかけた。途端に声がくぐもり始めた。
「ワン=カーワイ。おめえ1人でだいじょぶっぺか?」
「んだ。金色エルフのがき相手に、遅れを取らねえべ」
「……あいつら、ハーフリングだべ」
闇の中でもう1人が嫌そうな顔をする。ハーフリングと聞いてなかなかに手強そうだ、とつぶやいた。
「でもま、喧嘩自慢のおめえなら、1人でやっちまうかもしれねえべな。クノーへの戦士で10指に数えられるおめえ様なら、な」
まずは襲いかかって外に逃がせ。やられそうになったら外にいる連中が手伝ってくれる、と告げると、ワンは闇の中から、真下の部屋へと落ちていった。
照度を最小限にした、照明石の薄明かりの中でもみ合いが起こる。ハーフリング達の怒号。女達の悲鳴。セルゲイらは素っ裸のまま窓から飛び降りていった。
4人はきれいに地面に着地すると、館のすぐ隣にある森へと逃げ込んだ。自分たちはどうしていきなり襲われたんだ。走りながらセルゲイが皆に問う。
「多分あれだ! 大公が俺たちの技量をはかろうとしているに違いない!」
「そうかもしれないな! じゃあ……迎え撃とう」
4人は立ち止まり、追いかけてくる敵に向けて印を切った。襲撃者の真上と後ろから炎が起こる。襲撃者はそれを持っていた反り身の剣で振り払った。
しかも炎は相手の体を避けてしまっていた。魔法によって起こった炎だと、魔法抵抗が強い相手にはそうなってしまうのだ。
「……おかしいな。ちゃんとあいつを狙ってたんだが?」
「まとっているマントもそうみたいだが……いやまて。セルゲイ!」
彼らは驚く。襲撃者がかぶっていたフードを外したからだ。額のあたりがやけに出っ張っているのに気づけばよかった。
顔を顕にした相手は袴みたいに膨らんだズボンと革の胴着を身に着けていた。胴着は薄い鉄板が挟まった護身用の防具だ。
黒髪で切れ長の細い目の、ややのっぺりとした特徴の顔立ちだった。東洋人によくある顔かたちの。とはいえ醜悪というわけではない。割と端正に見える。
とても特徴的なのは、額からにょっきりと生えた10センチほどの長さの2本のツノ。やや丸っこい先端は、そのツノが皮膚と脂肪に覆われていることを示している。
「ムーツのオーガか……」
セルゲイが苦み走った顔でつぶやいた。オーガ族。キンキ大陸の北東にあるムーツ大陸にしか住んでいない亜人種だ。
男も女も強靭かつ恐ろしい戦士で、ムーツの戦争では必ず彼らの姿があった。他の大陸に渡って流れの傭兵となる者もいる。
男はたいていが160センチから170センチほどで、この時代ではまあまあ背が高いほうであったが、やせっぽちで一見非力に見える。けれども剛力かつ俊敏。あと、可愛いものが大好き。
女はその逆で、大抵のは背丈もあれば乳と尻もでかい。ぷりぷり。わがままボディの持ち主ばかりだが貞淑でこの人と決めた男以外とは寝なかった。あと、ファンシーなぬいぐるみや人形が大好き。サキュバスとはそういう趣味でうまが合う者が多かった。
特筆すべきは、彼らには殆どの魔法が効かないということだ。強力な魔法抵抗力を誇るこの種族は、魔法を得意とする者の天敵と言って差し支え無かった。
ワン=カーワイは反り身の片手剣の切っ先を向ける。1メートル近く。オーガ族では『護身用』に使われる武器であった。
「おくさまからのお言葉だあ。おめえたち。すぐにナントブルグに戻ると約束すれば、命だけは取らねえべ」
「おくさま……誰だよ?」
「去るのか去らねえのか、どっちにすっぺ!」
ワンが動いた。気づけばセルゲイの目の前に。彼は即座に後ろに転がり、殺しにかかっていると思わせる剣風を避けた。
「おとなしく殺されるつもりはねえよ!」
仲間たちが印を切る。彼らの右手が一瞬だけともしびが起こった。彼らは手に鉄槌や手斧を握っていた。
『隠し袋の魔法』によるものだ。異空間に道具入れを置くことができるそれは、高度な魔道であった。鍛錬を積み重ねた大魔道士、あるいは亜人の中でもごく一部の者しか扱えない。
小さな身体にとってはどうにも重そうに見えるそれを、ハーフリングの3人はしっかりと握りしめて。襲いかかった。
最低でも5キロはありそうなそれを軽々と振るう。身のこなしはワンには負けているとは思えない程だ。しかしオーガは見切って避け続けた。
(素材はいいけど……微妙だべ。)
身体能力は申し分ない。しかし肝心の技量はまるでだめ。この3人は武者には向いてないとワンは思った。
剣をくねらせる。そこからが早業だった。一度で3人の手首を一気に切り裂いた。武器を落として悲鳴を上げる仲間達を見て、セルゲイは恐怖を覚えた。
(とんでもない剣豪だ……!)
剣筋が目で追えなかった。暗い森の中とはいえ、ハーフリングの目であればはっきりと見えるもの。そうであるのにかのオーガの剣の動きは。
分が悪い。そう嘆きながら手首を抑えて後ずさるハーフリング達を見てワンは呼びかけた。この館からさっさと出てけ。セルゲイが返す。
「しかし俺達、大公様の手助けの為にナントブルグから派遣されたんだ。ここで引き返すというのは……」
「おめえらが遣わしたのは王様じゃねえだろうよ。それにこの大陸じゃあんまり見ねえ連中だべな。余計な事すんな」
「しかしだな……俺達は大公様にも手を貸してくれと……」
ワンは再び剣を構える。切っ先でセルゲイの喉元を狙っていた。セルゲイは武術においては他3人とどっこいどっこい。鍛錬をしなくても『そこそこできる』平均的なハーフリングであり、本物には勝てる見込みは無かった。
「おめえから行くべ。逝ね!」
「ま、待ってくれ!」
ワンは飛び込んでいた。セルゲイは避けようとしたが突きと見えたそれは彼の右腿を切り裂いた。丸出しの性器を狙われなかっただけ運が良かった。
「ぎゃあっ!」
叫ぶ。血はしぶくがすぐに止まり傷口が塞がった。ハーフリングの身体は治癒魔法が常にかかっているみたくこうなるのだ。生まれながらに超回復力を持っていた。
しかし斬られるとやはり痛い。相当な深手だったようでざっくりとやられた感覚が根強く残っていた。戦士であれば耐える訓練もしていただろうが、彼は根っからの非戦闘員であった。
「やっぱり、心臓をねらわにゃならねえべか」
ならばそうしよう。いや、それよりも亀頭丸出しのペニスを切り落せば殺さずに済むとワンは考えた。亜人でもそれをやられるのは相当に嫌だ。
オーガは斬られたらそのままだが、エルフやドワーフ、ゴブリンは斬り落とされても、2ヶ月もすればまた元通りとなる。精霊の末裔たる彼らの加護の力によるものだ。
でもハーフリングはどうだろう。試してみようと剣先が動いた。セルゲイの小さな体に似合わぬ憎々しげにぶっといものを切り落とそうとした時、ワンは跳躍して退いた。
彼の足元があったところに、薄手の服を着た金髪の少女がいつの間にかいた。姿勢を低くして、左手で剣を持って構えていた。
服というよりは太ももまでを隠す肌着で、ガーターベルトで止めた白いタイツで脚を覆い、子供向けの艶がかった黒い靴を履いていた。セルゲイらの顔に喜びの色がさした。
「マリベーラ!」
呼びかけに応じず少女はオーガに襲いかかる。ワンは構え直して打ち合った。マリベーラは多頭の蛇みたく剣を振り、脚や腹や腕を狙って斬りかかる。
勢い凄まじく隙が無い。膂力も切り裂くには十分。ワンは彼女の剣技に舌を巻いた。かなりの手練だと見た。
(エルフのちびっこの剣士だべか? あいつらとはまるで格が違うべ。)
しかしオーガの剣はことごとくを防ぎきっていた。地元では上位10指に入る剣士。それを見込まれて『雇い主』からは厚遇を受けていた。
小さな女の子とはいえ容赦はしない。ワンは本気を出した。身のこなしと膂力が倍加する。右横からの強い一太刀を。
寸前のところでマリベーラは剣で受け止めたが、強い力で剣を跳ね飛ばされ、倒れて右に転がされた。
下着がめくれあがり、細い腿と小さな生尻が丸出しになった。転がる最中に大きく脚を広げてしまったから、つるんとした割れ目も丸見えだった。
「おめえ。まるでがきんちょみてえだなあ?」
しめた。マリベーラは相手の注意をそらす為にわざと見せたのだ。ハーフリングは成長しても陰毛が生えない。彼女は立ち上がって一直線に突っ込む。素手で倒せるかよと笑うワンの剣をかいくぐり、懐に飛び込んだ。
彼女は素手ではなかった。両手でにぎりのついた大針を持ち、それでワンの脇腹を深々と突き刺していた。さっと引き抜き、彼の胸を蹴って尻を丸出しにしながら宙返りする。腰には針を仕舞っていたベルトがかけられていた。
「いったい、なにをしたんだべ……」
彼女の尻と股の割れ目を見届けながら呼びかけると、しばらくしてワンは倒れて口から泡を吹き始めた。
そこに茂みから数名の者達が飛び出て、彼のもとに駆け寄った。全員が身長が130から140ぐらい。
ハーフリングではない。とても鼻が大きく耳が尖った異貌過ぎる者達。亜人種のゴブリンだ。彼らは暗殺者としても有能だが、その本質は薬師であった。
暴れるワンに呼びかけて、薬の小瓶を取り出して飲ませてみたものの、ワンは静かになった。事切れてしまったのだ。
「なんだい、あんたらは?」
尻についた土埃を払いながら、マリベーラが呼びかける。ワンを介抱していた者達が懐から匕首を抜くと、背後で「待て!」と叫ぶ声が。
そこにはもう1人ゴブリンが立っていた。手練れのオーガを殺した少女を見て仲間に呼びかけた。
「こいつはカントニアの……カタシナシュフ部族のマリベーラだ! 俺達が勝てる相手じゃあないッ!」
雑念無く任務を遂行する為にと、大公は館の若い侍女を1人ずつ、閨の相手として彼らにあてがってくれた。客間では女達の矯声が響き渡り続けた。
4人は身長が120センチぐらいの、子供そのものの顔と身体だが、股間にあるものは大人のそれであった。
15センチぐらいあるやけに大きなペニスと、くろぐろとした立派なふぐり。彼らは頭1つぶん背の高い女体に絡みつき、ぐいぐいと腰を振り動かして喘がせた。
「あうあうあうあう!」
「しゅごい! しゅごい! しゅごおいいっ!」
お楽しみが始まってから2時間を過ぎたが、娘たちはよがって喘いで悶え続けている。未だに彼らの腰は止まらない。股の奥の女肉は沼のようにほぐれてしまい、がちがちに硬いペニスにえぐられるままだった。
(ちびっこのくせにいっちょ前の男みたいにお盛んなんだから。どういうこと?)
娘達はヴァギナの隅々を精液まみれにされながら、なおも突いてくる相手をしつこいと思いながらも身を委ねる。彼女たちはハーフリングの性欲の凄さを全く存じていなかった。
「のおっ。のおーっ!」
「つ、つかれたからやすませてー!」
娘たちのほうから音を上げた。この娘らも館の兵士や伊達男といい仲になって、蹂躙される楽しみを覚えたり時には堕胎や私生児を産んだりした事もあるぐらいにお盛んだったが。
なんだい、とセルゲイは興ざめな気分でしがみついていた娘の尻から離れた。不相応におっきな反り返りは、精液混じりの淫水でぬらりとなっていた。
「俺たちハーフリングはこれっぽっちじゃ、ぜんぜん満足出来ないんだよ?」
「しょ、しょうなの?」
「おまえ、ドワーフ男とやったことがあるか? あいつらはどんな虚弱体質でも6時間は平気でガン突くんだ。俺らは半分その血を引いている」
「て、ていうことは3時間ぐりゃい?」
「ちげえよ。エルフ男の4時間を含めて5時間さ。おりゃっ!」
セルゲイはまたも尻に組み付いて挿れてきた。赤銅色に変色した硬直した海綿体が、ザーメンを垂らしながら入り口をぱっくりと開けて迎え入れようとするヴァギナに突撃し、奥まで食い込んだ。
「ああううう!」
その娘は1時間後に失神したが、言われる通りその後3時間もいいようにされてしまった。他の娘たちも絶頂の果てに意識がぷつんと切れてしまった。はからずもこの娘らは全員がセルゲイらの子を産む事となる。
性交が始まってからおおよそ5時間。金玉袋がすっかり落ち着いてちんぽもしなしなになったセルゲイらは、相手となった女の尻やおっぱいを枕にして、いびきをかきはじめた。
その様子を伺っていた者がいる。この客間の天井裏に潜んでいた。セルゲイらが娘たちを貪ってやかましく喘がせ始めてからずっとであった。
「やっと寝てくれたか。性獣どもめ……」
やかましいったらありゃしない、という口ぶりで、天井裏に潜むもう1人に呼びかけた。途端に声がくぐもり始めた。
「ワン=カーワイ。おめえ1人でだいじょぶっぺか?」
「んだ。金色エルフのがき相手に、遅れを取らねえべ」
「……あいつら、ハーフリングだべ」
闇の中でもう1人が嫌そうな顔をする。ハーフリングと聞いてなかなかに手強そうだ、とつぶやいた。
「でもま、喧嘩自慢のおめえなら、1人でやっちまうかもしれねえべな。クノーへの戦士で10指に数えられるおめえ様なら、な」
まずは襲いかかって外に逃がせ。やられそうになったら外にいる連中が手伝ってくれる、と告げると、ワンは闇の中から、真下の部屋へと落ちていった。
照度を最小限にした、照明石の薄明かりの中でもみ合いが起こる。ハーフリング達の怒号。女達の悲鳴。セルゲイらは素っ裸のまま窓から飛び降りていった。
4人はきれいに地面に着地すると、館のすぐ隣にある森へと逃げ込んだ。自分たちはどうしていきなり襲われたんだ。走りながらセルゲイが皆に問う。
「多分あれだ! 大公が俺たちの技量をはかろうとしているに違いない!」
「そうかもしれないな! じゃあ……迎え撃とう」
4人は立ち止まり、追いかけてくる敵に向けて印を切った。襲撃者の真上と後ろから炎が起こる。襲撃者はそれを持っていた反り身の剣で振り払った。
しかも炎は相手の体を避けてしまっていた。魔法によって起こった炎だと、魔法抵抗が強い相手にはそうなってしまうのだ。
「……おかしいな。ちゃんとあいつを狙ってたんだが?」
「まとっているマントもそうみたいだが……いやまて。セルゲイ!」
彼らは驚く。襲撃者がかぶっていたフードを外したからだ。額のあたりがやけに出っ張っているのに気づけばよかった。
顔を顕にした相手は袴みたいに膨らんだズボンと革の胴着を身に着けていた。胴着は薄い鉄板が挟まった護身用の防具だ。
黒髪で切れ長の細い目の、ややのっぺりとした特徴の顔立ちだった。東洋人によくある顔かたちの。とはいえ醜悪というわけではない。割と端正に見える。
とても特徴的なのは、額からにょっきりと生えた10センチほどの長さの2本のツノ。やや丸っこい先端は、そのツノが皮膚と脂肪に覆われていることを示している。
「ムーツのオーガか……」
セルゲイが苦み走った顔でつぶやいた。オーガ族。キンキ大陸の北東にあるムーツ大陸にしか住んでいない亜人種だ。
男も女も強靭かつ恐ろしい戦士で、ムーツの戦争では必ず彼らの姿があった。他の大陸に渡って流れの傭兵となる者もいる。
男はたいていが160センチから170センチほどで、この時代ではまあまあ背が高いほうであったが、やせっぽちで一見非力に見える。けれども剛力かつ俊敏。あと、可愛いものが大好き。
女はその逆で、大抵のは背丈もあれば乳と尻もでかい。ぷりぷり。わがままボディの持ち主ばかりだが貞淑でこの人と決めた男以外とは寝なかった。あと、ファンシーなぬいぐるみや人形が大好き。サキュバスとはそういう趣味でうまが合う者が多かった。
特筆すべきは、彼らには殆どの魔法が効かないということだ。強力な魔法抵抗力を誇るこの種族は、魔法を得意とする者の天敵と言って差し支え無かった。
ワン=カーワイは反り身の片手剣の切っ先を向ける。1メートル近く。オーガ族では『護身用』に使われる武器であった。
「おくさまからのお言葉だあ。おめえたち。すぐにナントブルグに戻ると約束すれば、命だけは取らねえべ」
「おくさま……誰だよ?」
「去るのか去らねえのか、どっちにすっぺ!」
ワンが動いた。気づけばセルゲイの目の前に。彼は即座に後ろに転がり、殺しにかかっていると思わせる剣風を避けた。
「おとなしく殺されるつもりはねえよ!」
仲間たちが印を切る。彼らの右手が一瞬だけともしびが起こった。彼らは手に鉄槌や手斧を握っていた。
『隠し袋の魔法』によるものだ。異空間に道具入れを置くことができるそれは、高度な魔道であった。鍛錬を積み重ねた大魔道士、あるいは亜人の中でもごく一部の者しか扱えない。
小さな身体にとってはどうにも重そうに見えるそれを、ハーフリングの3人はしっかりと握りしめて。襲いかかった。
最低でも5キロはありそうなそれを軽々と振るう。身のこなしはワンには負けているとは思えない程だ。しかしオーガは見切って避け続けた。
(素材はいいけど……微妙だべ。)
身体能力は申し分ない。しかし肝心の技量はまるでだめ。この3人は武者には向いてないとワンは思った。
剣をくねらせる。そこからが早業だった。一度で3人の手首を一気に切り裂いた。武器を落として悲鳴を上げる仲間達を見て、セルゲイは恐怖を覚えた。
(とんでもない剣豪だ……!)
剣筋が目で追えなかった。暗い森の中とはいえ、ハーフリングの目であればはっきりと見えるもの。そうであるのにかのオーガの剣の動きは。
分が悪い。そう嘆きながら手首を抑えて後ずさるハーフリング達を見てワンは呼びかけた。この館からさっさと出てけ。セルゲイが返す。
「しかし俺達、大公様の手助けの為にナントブルグから派遣されたんだ。ここで引き返すというのは……」
「おめえらが遣わしたのは王様じゃねえだろうよ。それにこの大陸じゃあんまり見ねえ連中だべな。余計な事すんな」
「しかしだな……俺達は大公様にも手を貸してくれと……」
ワンは再び剣を構える。切っ先でセルゲイの喉元を狙っていた。セルゲイは武術においては他3人とどっこいどっこい。鍛錬をしなくても『そこそこできる』平均的なハーフリングであり、本物には勝てる見込みは無かった。
「おめえから行くべ。逝ね!」
「ま、待ってくれ!」
ワンは飛び込んでいた。セルゲイは避けようとしたが突きと見えたそれは彼の右腿を切り裂いた。丸出しの性器を狙われなかっただけ運が良かった。
「ぎゃあっ!」
叫ぶ。血はしぶくがすぐに止まり傷口が塞がった。ハーフリングの身体は治癒魔法が常にかかっているみたくこうなるのだ。生まれながらに超回復力を持っていた。
しかし斬られるとやはり痛い。相当な深手だったようでざっくりとやられた感覚が根強く残っていた。戦士であれば耐える訓練もしていただろうが、彼は根っからの非戦闘員であった。
「やっぱり、心臓をねらわにゃならねえべか」
ならばそうしよう。いや、それよりも亀頭丸出しのペニスを切り落せば殺さずに済むとワンは考えた。亜人でもそれをやられるのは相当に嫌だ。
オーガは斬られたらそのままだが、エルフやドワーフ、ゴブリンは斬り落とされても、2ヶ月もすればまた元通りとなる。精霊の末裔たる彼らの加護の力によるものだ。
でもハーフリングはどうだろう。試してみようと剣先が動いた。セルゲイの小さな体に似合わぬ憎々しげにぶっといものを切り落とそうとした時、ワンは跳躍して退いた。
彼の足元があったところに、薄手の服を着た金髪の少女がいつの間にかいた。姿勢を低くして、左手で剣を持って構えていた。
服というよりは太ももまでを隠す肌着で、ガーターベルトで止めた白いタイツで脚を覆い、子供向けの艶がかった黒い靴を履いていた。セルゲイらの顔に喜びの色がさした。
「マリベーラ!」
呼びかけに応じず少女はオーガに襲いかかる。ワンは構え直して打ち合った。マリベーラは多頭の蛇みたく剣を振り、脚や腹や腕を狙って斬りかかる。
勢い凄まじく隙が無い。膂力も切り裂くには十分。ワンは彼女の剣技に舌を巻いた。かなりの手練だと見た。
(エルフのちびっこの剣士だべか? あいつらとはまるで格が違うべ。)
しかしオーガの剣はことごとくを防ぎきっていた。地元では上位10指に入る剣士。それを見込まれて『雇い主』からは厚遇を受けていた。
小さな女の子とはいえ容赦はしない。ワンは本気を出した。身のこなしと膂力が倍加する。右横からの強い一太刀を。
寸前のところでマリベーラは剣で受け止めたが、強い力で剣を跳ね飛ばされ、倒れて右に転がされた。
下着がめくれあがり、細い腿と小さな生尻が丸出しになった。転がる最中に大きく脚を広げてしまったから、つるんとした割れ目も丸見えだった。
「おめえ。まるでがきんちょみてえだなあ?」
しめた。マリベーラは相手の注意をそらす為にわざと見せたのだ。ハーフリングは成長しても陰毛が生えない。彼女は立ち上がって一直線に突っ込む。素手で倒せるかよと笑うワンの剣をかいくぐり、懐に飛び込んだ。
彼女は素手ではなかった。両手でにぎりのついた大針を持ち、それでワンの脇腹を深々と突き刺していた。さっと引き抜き、彼の胸を蹴って尻を丸出しにしながら宙返りする。腰には針を仕舞っていたベルトがかけられていた。
「いったい、なにをしたんだべ……」
彼女の尻と股の割れ目を見届けながら呼びかけると、しばらくしてワンは倒れて口から泡を吹き始めた。
そこに茂みから数名の者達が飛び出て、彼のもとに駆け寄った。全員が身長が130から140ぐらい。
ハーフリングではない。とても鼻が大きく耳が尖った異貌過ぎる者達。亜人種のゴブリンだ。彼らは暗殺者としても有能だが、その本質は薬師であった。
暴れるワンに呼びかけて、薬の小瓶を取り出して飲ませてみたものの、ワンは静かになった。事切れてしまったのだ。
「なんだい、あんたらは?」
尻についた土埃を払いながら、マリベーラが呼びかける。ワンを介抱していた者達が懐から匕首を抜くと、背後で「待て!」と叫ぶ声が。
そこにはもう1人ゴブリンが立っていた。手練れのオーガを殺した少女を見て仲間に呼びかけた。
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