聖騎士イズヴァルトの伝説 外伝 『女王の末裔たち』

CHACOとJAGURA

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第一部 少年騎士と幼き侍女(幼年編から少年編の間のお話)

01 牧童の村の幼夫婦

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ここからが物語の本編となります。第一部【少年騎士と幼き侍女】はイズヴァルトの伝説の幼年編と少年編の間のエピソードになります。
聖騎士団入団後、イズヴァルトが加わることとなったヨーシデン地方の遠征と、マイヤの姉のトーリの秘密についてのお話です。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 イズヴァルトとマイヤがアスカウの村から出発してから10か月後。13歳になったその日にトーリは出産した。生まれたのは息子で、オルフレッドと名づけられた。

 産湯につかせ、産婆に見立てて貰ったところ、病気にかかりにくく頑強に育つ子供に成長するだろうと。それからはだかんぼうの赤子の股間をみてくすりと笑う。ルッソの子供にしちゃあずいぶんとご立派なちんこと玉袋ではないかね?

「ん、まあ……この子のおじいちゃんに似たかもしれないなあ。幼い頃、うちの村に遊びに来たポンタ―さんに宿場の公共浴場に連れて行って貰ったんだけど、ものすごくばかでかかったなあ……」

 ルッソは思い出す。6年程前の記憶だ。彼の父も孫のりっぱなおちんちんを見てうなずいた。トーリの父ポンタ―は巨根だった。アスカウでは有名な話。結婚前は出張任務で村に来ると、未亡人や嫁入り前の女の子から求められたのもしょっちゅうだった。

「ナントブルグで一番の『お盛ん美少女』と言われたリーファさんを射止めておしとやかにしたぐらいだから、ポンタ―さんはやっぱりすごかったのねえ……」

 ルッソの母がしれっと言った。彼女もまた結婚前のポンタ―と寝たことがあった。クンニリングスも熱いしあのペニスで貫かれるのもすさまじく、挿入で初めて絶頂に達してしまった。

 トーリとマイヤの母のリーファは結婚前、ナントブルグ界隈では頼めば必ずやらせてくれる、いや、向こうから進んで交尾を求めてくる好色美少女として名前が知られていた。

 ルッソの父も11になった歳、結婚前のリーファに筆おろしをしてもらった。病気で死んだ2人の兄と共にナントブルグに行った時にだ。

 巷で話題の股の緩い美少女に、毛織りのマフラーをプレゼントして彼女を抱かせてもらった。その頃から恋仲だったルッソの母が作ってくれたものである。

 リーファの肉便器内は全く緩くはなかった。精液をからんからんになるまで搾り取る名器だった。文字通りに吸い尽くされた。村に帰った後、結婚を前提に今の妻の処女膜を破った。

 ルッソとトーリが夫婦になったのも、ある種の奇縁と言えるかもしれない。夫妻は一切白状しなかったからルッソとトーリは全く知る事が無かった。

 初めての出産で疲れ果てぐっすりと眠るトーリは、ルッソとその父母が産んだばかりの子供のちんちんを見ながらその様に語ることを聞いていない。聞いていたらきっと怒るはずだが。


□ □ □ □ □


 そのトーリは夢を見ていた。森の中で存分に叫びながらイズヴァルトと交合した時の夢をである。ルッソよりも大きなものに貫かれ、うあああーん、うああああーんと盛大によがっていた楽しい思い出だ。

 起きている時でもあの時のことを思い出し、こっそりと茄子やほうきの柄で突っ込んでオナニーをした事もある。でもやはり本物のセックスのほうが気持ちよかった。オナニーした日の夜はルッソを盛んに求めてしまった。

 その甘美な浮気の思い出の夢が、急に違うものへと変わった。目の前に、扉の左右に乳房と尻が大きな裸身の美女をレリーフにした青銅の門が。

「これは、あの……」

 久しぶりに見る、とトーリはつぶやいた。かがり火によって周りは明るい。自分の身体を見て気が付いた。豊かには成長しそうにない小ぶりの乳房と出産したばかりでややたわんでしまっているお腹があった。陰毛はすじの周囲に、ほんの少しだけ生えているだけだ。手入れはしていないのだが。

「ひめさま。おめでとうございます。可愛らしい男の子ですね」

 後ろから声がしたので振り返った。そこには扉のレリーフに負けぬ美貌と肢体とを持つ女が立っていた。しかし髪や眉毛とまつ毛、下腹に控えめに生えている陰毛は水色だ。変な染料で染めていない。

 彼女の本当の毛の色だった。その証拠に頭には牡羊のそれの様なツノを生やしており、背中にはこうもりのものに近い黒い羽根が生えていた。彼女は魔族。サキュバスだった。

「ありがとう、カミラ……」

 その名がこのサキュバスの名前。カミラはトーリに、また一段と美しくなられましたねとほめたたえた。細い身体に不格好な、たわんだお腹をどう思えばいいのか?

「ご心配には及びません。子供を産まなくなれば、自然とすっきりしてくる事でしょう」

 トーリの母もそうだった。それから祖母にあたる人物も。先祖に至っては出産してから2日で、妊娠前の形に戻る仕様であった。

「しかしながら。姫様はこの10年、毎年の様にお子をご出産されると占いで出ておりますが……」
「いやだわ。ルッソといちゃいちゃいしたいのはやまやまだけど、赤ちゃんがたくさんできちゃうのはちょっと困るの」
「いいえ。ルッソ様と義父母様がたがきっと、ひめさまのたくさんのお子様がたを育んでくれる事でしょう。あの一族はきっと、姫様を幸せに導いてくださるはずです」

 とはいえ、とカミラは不安そうな顔になる。生まれた子はどう見てもルッソの子ではない。彼の子であれば金髪か黒髪のはずだ。しかし髪の毛は茶色である。
 
「ポンター父さんは、確か、茶色い髪の毛をしていたけど……」
「正統嫡流の女の腹から生まれた子は皆、ひめさまやマイヤさまの様に蒼にも似た黒い髪をはやして生まれるはず。しかし、こたび生まれた子は、どうも父親の血が強いようですわね?」

 トーリは口をつぐんだ。わかっている。オルフレッドはルッソの子ではない。イズヴァルトの子だ。

「もしかしたら……」
「ひめさま」

 これ以上、おっしゃってはいけません。カミラは目でトーリを諭した。

「このような言い伝えをリーファ様よりお聞きなされましたでしょうか? 強い運命……宿命というものに導かれる男の胤は、ひめさまの御一門の女人が産んだ子を黒とは違う髪の色にさせるでしょう、と」

 トーリとマイヤ、それから、彼女たちの女の先祖は皆、蒼にも見える黒い髪をたたえていた。男もだ。髪には真祖と呼ばれる者より、強い呪力を与えられているという。

 しかしオルフレッドの髪は茶色かった。これはつまり、その父と疑わしいイズヴァルトには、大きな何かと対決する未来が待っているのだろう。

「ルッソさまはイズヴァルトさまの様に、大きな宿命を持つ殿方なのでしょう」

 カミラはあえて、外して尋ねた。トーリの顔に、ますます困惑の色がにじみ出た。

「……それは嫌。ルッソは私とずっと、この村で仲良く暮らすの。それが私の望みなんだから」

 トーリはルッソといつまでも、この村で暮らしていたかった。だからマイヤが毎月の様に寄越してくる手紙を快く思わなかった。大まかに言うとこういう誘い文句が手紙の最後のあたりに書かれていた。

「ルッソもトーリもナントブルグにおいで。イズヴァルトさんの家来となろう。きっと、おっきな領地の殿さまになるはずだよ。一緒にがんばろうよ!」

 イズヴァルトは王様や貴族たちの覚えがめでたかった。魔竜の一の家臣との戦いやトンダバヤシ退き口での活躍で、将来有望な騎士の一人として皆の話題になっていた。

 騎士としては大きくないが、ナントブルグ周辺にある聖騎士団領に自分の領地も持っていた。11歳にしては破格の待遇。とはいえ年貢率20%の騎士団の掟と、領地からのあがりの殆どをシギサンシュタウフェン領に収めているので、手取りはあまり良くなかったが。

 ただそれも正式な騎士となる15の歳までだ。それからは親元から独立する。更にイズヴァルトはヒラの騎士の中でも一番良い待遇での領地をもらっている。江戸時代の旗本でいえば5000石くらいのそれである。

 そうなると家来や家宰、郎党やら従者らが必要となる。マイヤはルッソとトーリに、最終的に家宰をやってもらいたかった。その地位だと最低でも領主の5分の1の土地を貰える。シュミット氏の収入の3倍以上はある。悪くない話だ。

「それに、ルッソにはつましいながらも幸せに暮らしたいという願望があるの。大きな運命? 私も彼もそんなものを望んでいないわ」

 とにかく『ここ』にはしばらく用事は無いから。目の前の青銅の門を見てトーリが言うと、カミラは姿を消した。同時に彼女はこう忠告する。

「『姫竜さま』がどうやら、マイヤさまと会ったご様子です」
「ひめりゅう……あなたたちがそう呼ぶあの人ね?」

 そうです、と声だけが。姫竜が住まう地につながる渓谷にて、偉大なるサキュバスの血を継ぐ末裔と声を交わしたと。仲間達にもちろん探らせてある、とカミラは言った。

 姫竜はマイヤを「とってもかわいいおじょうちゃんだったわあー!」などと褒めていた。とはいえ手元に置いて育てるつもりは無いらしい。

 それよりもエチウの魔王・コーザ=ストーンマウントの事で頭がいっぱいの様子。最近イーガの王太子に、密約を結ぶための使者を盛んに出している様子だ。

「私には政治のことはわからないわ。パラッツォ教も良く知らないし。でもイーガって?」
「ホーデンエーネン北部の信徒への相次ぐ弾圧から、コーザはいよいよ王国への侵攻を考え始めるようになったそうです」
「それって、戦争が起こるという意味かしら?」
「……わかりません。コーザほどの人物であれば、たった一人で乗り込んでも、キンキ大陸を己の教義に心服せしめる事ができるでしょう。しかし」

 姫竜さまがコーザを敵視しつつある今、彼はキンキ大陸に入る事はかなわない。既にエチウにある総本山に警告が言い渡されたという。教主自らがこの大陸に入れば命の保障は無い。

「踏み入れたその時にはオーク族最強の戦士が迎え討つ。もともとが魔界の民である我らにとってあの方だと存じておりますが、そうなればコーザはきっと討ち果たされるやもしれません」
「そうなの……私にはよくわからないけど」

 カミラが漂わせていた魔の気配が消えた。それから彼女は目が覚めた。横では生まれたばかりのオルフレッドが、おくるみに包まれてすやすやと眠っていた。窓に目を向けると朝日が差し込んでいた。

「おはよう。目覚めたかい、トーリ?」

 椅子にすわっていたルッソが呼びかけた。彼女はゆっくりと上半身を起こした。出産時と同じく彼女は何も着ておらず、毛布がちくちくとしてくすぐったかった。

「オルフレッドはまだ寝ているの?」
「さっきまで起きていたんだ」

 ルッソは不寝番を務めていたらしい。目の周りにくまが出来ていた。

「でも、気持ちよさそうに眠っているお母さんのおっぱいを吸ってからぐっすり眠っているよ」
「そうなの……小さいのに」

 トーリは膨らみかけから一向に進まぬ己の乳房を強く握りしめた。乳首からじわっと母乳がこぼれた。見かけの割には出やすい。臨月近くになってから出る様になっていたのだ。

「そうみたいだね。俺も君が寝ている時に、こっそりと飲ませて貰ったけどね?」
「まあ、あさましい! おっぱいはあかちゃんのものなのに!」
「もう飲まないよ。ずっとオルフレッドの……俺達が作るあかちゃんのものにするさ」

 そう言うとルッソはベッドに近づき、トーリの細い体を抱きしめた。ルッソの身体は大きく、たくましくなりつつあった。こうして何もせず抱き寄せられているだけでも、トーリは幸せを感じた。

 そうなるとどうも下半身が疼いてしまう。彼女のヴァギナからどろりと蜜がにじみ出てしまった。その色が透明なのは、彼女の身体が出産時に羊水や胎盤を出し切っただけでなかった。

 産婆が施してくれた産褥後の手入れだけでなく、彼女の身体の特質もあった。出産は安産であったが巷で言う苦痛を感じたことをトーリは無かった。むしろ、赤ん坊が産道を抜ける時、性的快感を感じるぐらいだった。

 遠い祖先の淫魔の血のせいなのだろうか。変な身体であるとトーリはつくづく思う。昔母親が教えてくれた、一族の女達の話を思い出した。性器の回復力は著しく速くて、性病にもかからないらしい。
 
「ルッソ……ねえ、このまま抱いて?」

 下腹に熱いものを感じて欲情しながらトーリがささやいた。しかしルッソは断った。

「しばらくは赤ちゃんを可愛がろうよ。それに子供が赤ちゃんを産むのって本当に危険な事だと産婆さんがあれだけ言っただろ。君はまだ13歳だし」
「ルッソは14歳ね。まったく、男の子ってこういうところではお得だよね? 赤ちゃんを産ませても産むことは無いんだから……」

 すねるトーリの額に、ごめんよ、と言ってルッソはキスをする。これが若過ぎる夫婦の幸せなひと時だった。いいや、この時代には、この年齢での子持ちの夫婦は沢山いた。
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