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周の虚勢
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金曜日の朝、周は隆志と一緒に登校中。
結局、今週は、というか今週もほとんど二人で寝起きをともにしている。
こんなことでいいのかと思いつつ、隆志に甘えられると弱かった。
なんとなくずるずると流されてしまっている。
隣を歩く隆志をちらりと見上げた。
見上げなければならないのが悔しい。
そして、隆志が客観的に見て「イケメン」なことも気に食わなかった。
同じ年に生まれて、生活環境はほぼ同じ。
部活だって同じようにやってきたのだ。
けしてサボっていたわけではないし、食べ物にしても好き嫌いはない。
なのに、この差はなんなんだろうと思う。
周にとっては甘えてくる隆志の姿は、大きな犬そのもの。
幼稚なところが多くて、外見はともかく中身は少しもカッコ良くはない。
けれど、そんな評価は他人には関係ないのだ。
今の時期、見てくれはなによりの判断基準になる。
実際、隆志はモテていた。
「そういや、お前、昨日、告られてたけど、あれ、どうした?」
ちょっぴり嫌な顔をする隆志に、周は眉をひそめる。
この手の話を持ち出されるのが、隆志はあまり好きではないのだ。
性的なことに無関心なわけでもないのにと不思議だった。
「あ~? 断った」
「またか……なにが気にいんねぇんだよ」
隆志がさも不満だと言いだけに、ふんっと鼻をならす。
顔もしかめていて、面白くもなさそうな表情を浮かべていた。
「だってさー、なんかちがかったんだもん」
「違うってなにが?」
うーんと隆志が考えるそぶりを見せる。
本当に考えているかどうかは、はなはだ疑わしかった。
いつだって隆志はインスピレーションで、断っている。
なんとなくで断るのだから、まともな理由なんかあるはずがない。
「好みじゃなかった」
「もったいねぇことするよなぁ。あいつ、巨乳だったのに」
言ったとたん、隆志がぷっと怒った顔をした。
頬をふくらませているところやなんかは、実に子供っぽい。
本当には先を越されてなくて良かったと、周は内心ホッとしている。
けれど、そんな態度は見せたくない。
やっかみなんてカッコ悪いことだからだ。
兄貴分的立場を取っているだけに、妬んでいると悟られるのは自尊心が許さなかった。
「オレはデカさよりカタチ重視なの!」
「へえ~オレはやっぱ顔を埋めたくなるくらいでけぇほうがいいけどな」
むうっと隆志が口をとがらせる。
地面に落ちていた石を足先で蹴飛ばしながら言った。
「がんちゃんはエロ目線で見過ぎなんだよ。オレ、エッチありきでつきあう気ねーもん」
思わず、ぷっと笑う。
いつも「しよう」とせがんでくるくせにと思った。
むしろ、隆志のほうが性的なことには積極的。
どうすればもっと気持ち良くなるのかなんてことを話してきたりもする。
行為の最中も、ああしてこうしてと周に注文をつけることだってあった。
とはいえ、自分達はただの幼馴染みで、恋人同士ではない。
ふと「そうか」と腑に落ちる。
隆志は恋人同士というものに、相応の夢を見ているのだろう。
恋人に対しては、ちゃんと段階を踏みたいと考えているのかもしれない。
デートを重ね、キスをして、という過程を必要としている。
自分としている行為は、ただ気持ちいいからしているだけなのだ。
もちろん周にしても、気持ちがいいからしている。
けれど、なぜだかそっちは釈然としなかった。
最近は隆志が先にイってしまうので、あまり「気持ちいい」とは言い難くなっている。
それでも続けている理由を、周は見つけられなかった。
結局、今週は、というか今週もほとんど二人で寝起きをともにしている。
こんなことでいいのかと思いつつ、隆志に甘えられると弱かった。
なんとなくずるずると流されてしまっている。
隣を歩く隆志をちらりと見上げた。
見上げなければならないのが悔しい。
そして、隆志が客観的に見て「イケメン」なことも気に食わなかった。
同じ年に生まれて、生活環境はほぼ同じ。
部活だって同じようにやってきたのだ。
けしてサボっていたわけではないし、食べ物にしても好き嫌いはない。
なのに、この差はなんなんだろうと思う。
周にとっては甘えてくる隆志の姿は、大きな犬そのもの。
幼稚なところが多くて、外見はともかく中身は少しもカッコ良くはない。
けれど、そんな評価は他人には関係ないのだ。
今の時期、見てくれはなによりの判断基準になる。
実際、隆志はモテていた。
「そういや、お前、昨日、告られてたけど、あれ、どうした?」
ちょっぴり嫌な顔をする隆志に、周は眉をひそめる。
この手の話を持ち出されるのが、隆志はあまり好きではないのだ。
性的なことに無関心なわけでもないのにと不思議だった。
「あ~? 断った」
「またか……なにが気にいんねぇんだよ」
隆志がさも不満だと言いだけに、ふんっと鼻をならす。
顔もしかめていて、面白くもなさそうな表情を浮かべていた。
「だってさー、なんかちがかったんだもん」
「違うってなにが?」
うーんと隆志が考えるそぶりを見せる。
本当に考えているかどうかは、はなはだ疑わしかった。
いつだって隆志はインスピレーションで、断っている。
なんとなくで断るのだから、まともな理由なんかあるはずがない。
「好みじゃなかった」
「もったいねぇことするよなぁ。あいつ、巨乳だったのに」
言ったとたん、隆志がぷっと怒った顔をした。
頬をふくらませているところやなんかは、実に子供っぽい。
本当には先を越されてなくて良かったと、周は内心ホッとしている。
けれど、そんな態度は見せたくない。
やっかみなんてカッコ悪いことだからだ。
兄貴分的立場を取っているだけに、妬んでいると悟られるのは自尊心が許さなかった。
「オレはデカさよりカタチ重視なの!」
「へえ~オレはやっぱ顔を埋めたくなるくらいでけぇほうがいいけどな」
むうっと隆志が口をとがらせる。
地面に落ちていた石を足先で蹴飛ばしながら言った。
「がんちゃんはエロ目線で見過ぎなんだよ。オレ、エッチありきでつきあう気ねーもん」
思わず、ぷっと笑う。
いつも「しよう」とせがんでくるくせにと思った。
むしろ、隆志のほうが性的なことには積極的。
どうすればもっと気持ち良くなるのかなんてことを話してきたりもする。
行為の最中も、ああしてこうしてと周に注文をつけることだってあった。
とはいえ、自分達はただの幼馴染みで、恋人同士ではない。
ふと「そうか」と腑に落ちる。
隆志は恋人同士というものに、相応の夢を見ているのだろう。
恋人に対しては、ちゃんと段階を踏みたいと考えているのかもしれない。
デートを重ね、キスをして、という過程を必要としている。
自分としている行為は、ただ気持ちいいからしているだけなのだ。
もちろん周にしても、気持ちがいいからしている。
けれど、なぜだかそっちは釈然としなかった。
最近は隆志が先にイってしまうので、あまり「気持ちいい」とは言い難くなっている。
それでも続けている理由を、周は見つけられなかった。
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