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崎坂も負け

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 自分でも自分をすごいと思う。
 男のナニをくわえ、あまつさえ口の中に出されたものを飲んだのだ。
 
「好きになると、なんでも平気になっちゃうもんなんだなぁ」
 
 一人エッチ中に何度もした行為ではある。
 けれど、本当にしてしまうと、なんだか感慨深いものがあった。
 ちょっぴりくてっとなっている大倉を見ながら、いそいそとズボンを下げる。
 下着の中は、予想通りえらいことになっていた。
 
「おーくら……お前、超エロいのな。オレもうガッチガチ」
 
 大倉がうっすらと目を開く。
 そして、ふいっと視線をそらせ、怒ったように口をとがらせた。
 
「…………エロいのはお前じゃねぇか……」
 
 ぼそぼそ言うのも照れ隠しとしか思えなくて、かわいく感じられる。
 人を好きになるというのは本当に不思議な感覚だった。
 自分よりデカかろうが、男だろうが、かわいいと思うし、欲情もする。
 
 もう一時も待てないという気分。
 
 ローションの容器を手にして、中身を手のひらに落とす。
 大倉の足を抱きこみ、膝を立てさせた。
 そっと後ろに手を伸ばす。
 軽くふれただけで、そこがぴくんと反応を示した。
 
「やっべ……マジ我慢もう無理だぞ、オレ」
 
 体が早く早くと急かしている。
 丁寧にじっくりと、とは思っていたのだけれど、性急になってしまう。
 走っている時のようにタイムを考えて自分をコントロールするなんてできない。
 
 中指をじわりとそこに押しこんだ。
 抵抗を感じるも、少しひっかかった指先が内側の柔らかさを伝えていた。
 頭がぐらぐらして眩暈がするほど欲望が高まっていく。
 指をくるんと回して、さらに内側へ押し込んでいった。
 
 大倉が小さくうめく。
 顔を見ると、眉を寄せ、唇を横に引き結んでいた。
 
「わ、わり……し、しくじるかも……しくじったら……ご、ごめん……っ」
 
 指を動かし、そこを開いていく。
 反対の手で大倉のものを握り込み、上下にしごいた。
 少しでも快感があればと思ってのことだ。
 すると、それが良かったのか、後ろがふわりと緩む。
 
 指で内側をまさぐりながら前を刺激した。
 少しずつではあるけれど、そこが開いていくのを感じてぞくぞくする。
 指先にまとわりついてくる大倉の内側。
 早くそこに自分のものを挿れ、つながってしまいたい。
 
「……は……っ……っう……ぅ……っん……っ……」
 
 大倉が息を乱している姿に胸が詰まった。
 もともとは自分との関係を望んでいなかった大倉が、行為を許してくれている。
 きっとそこには意味があるはずだ。
 
 どこで大倉の意識が変わったのか、崎坂にはわからない。
 けれど、そんなことはどうでも良かった。
 今、大倉が自分を受け入れようとしてくれていることが大事なのだ。
 指を増やし、ゆっくりと何度も抜き差しを繰り返す。
 
「ぅ、う……ぁ……」
「マジごめんな……ごめん、おーくら……好き」
 
 はぁはぁとお互いの乱れる息づかいが部屋に満ちていた。
 崎坂はそこから指を抜く。
 
 用意していたゴムの袋をつかんだ。
 指が震えて封を切るのに時間がかかった。
 着けるのにはもっと時間がかかった。
 想像の中では簡単にできたことが、うまくいかない。
 焦りつつも、ようやくゴムを着け、大倉の足を抱える。
 
「い、痛くすっかも……わりい……ごめんな」
 
 硬くなった自分のものを大倉のそこにあてがった。
 びくんと大倉が体をすくませる。
 負担をかける行為だとわかっているのに、自分が抑えられなかった。
 
 両手で大倉の腰をつかみ、引き寄せる。
 ぐっと腰を進めると、わずかに先端がそこに埋まった。
 それ以上、挿らないのではと思うほどの抵抗感がある。
 
「うぅ……っ……ん……っ……く……っ」
 
 大倉が短い呼吸を繰り返していた。
 目に涙が滲んでいる。
 もう少しだけ奥まで挿れたい。
 思った時、大倉のそこが小さく収縮した。
 
「あ……っ……やべ…………っ」
 
 自分のものが大きく震えたのを感じる。
 すぐに、どくどくと自分を解放する感覚がやってきた。
 
「くっそー……」
 
 短く息を吐きながら、崎坂は舌打ちする。
 がくりとうなだれ、呟いた。
 
「…………かっこわりい……」
 
 そこそこにも挿れられないうちに、イってしまったのだ。
 カッコ悪いことこの上もない。
 ぷっという笑い声に顔を上げた。
 
「自信あるっつってたのは、どこの誰だっけ」
「だって……しょうがねーじゃん……オレだって初めてだったんだから」
 
 ぶつ……と、文句を言っても大倉は知らん顔をしていた。
 急に不安になる。
 
「なぁ……もう嫌になった? カッコ悪ィ奴って思った?」
「カッコ悪ィお前のほうが、オレにはいい」
「そうなの?」
「そうだよ」
 
 ならば、カッコ悪くて良かったと思う。
 崎坂は大倉を見て、にっこりした。
 
「すげえすげえ好きだ」
 
 大倉の頬がほんのりと赤くなる。
 その顔が今まで以上にかわいく見えた。
 崎坂の視線から逃げるように、大倉がそっぽを向く。
 
「結局……寄り切られちまったなぁ」
 
 こうなったことを後悔しているのだろうかと、心配になった。
 胸に頬をくっつけて聞いてみる。
 
「ダメだった……?」
「…………ダメじゃねぇけど……浮気したらボッコボコにしてやるからそう思っとけよ」
 
 もちろん浮気なんかするつもりはない。
 ようやく大倉がその気になったのだ。
 この幸せを手放すものかと思っている。
 
「浮気はしねーって言っただろ。ぜってーしねーよ。オレは、おーくらが好きなんだから」
 
 胸に頬をすりつけた。
 大倉が崎坂の頭を軽くなでてくる。
 手の感触が優しくて嬉しくなった。
 崎坂は浮かれている心とは逆に、真面目な声で言う。

「なあ、もっかいチャンスくれる?」
 
 すぐに、ぱかんと頭を叩かれた。
 大倉が笑って言う。
 
「やだよ」
 
 えーっと声をあげる崎坂に大倉は笑いながら「今日はな」と付け足した。
 胸から頬を離さず、大倉を見上げる。
 にっこりしているのが目に入り、崎坂も笑いながら言った。
 
「じゃあ、我慢する。今日は、な」
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