聖なる者~コードネームはモナリザ

夢織人

文字の大きさ
上 下
16 / 34

最終試験の結果は・・・

しおりを挟む
「さっきは、ひっぱたいて悪かった。しかしもめごとを起こさず、君を助けるにはあの方法しかなかった」
 ジョナサンはホテルの部屋に戻ってから、モナリザに謝った。

「そうよ、あの場面は、ああするしかなかったと思うわ」
と、他のメンバーもそう言った。

「まだ、痛む? でも、ジョナサンはあれでかなり、手加減したのよ」
 先輩の女性エージェントはやさしくモナリザを抱きしめ、慰めた。

 美少年スター、イマージュは女性以上に美しい少年だったから、スタイリストはいつもユニセックス系の衣装を用意した。テレビのプロデューサーもいつも同性愛を匂わせるようなキャラ設定で少年を起用することが多く、世間は少年のことをそのように思っていた。しかし実際のイマージュはそうではなかった。そのイメージをむしろ嫌っていた。そのイメージのせいで、学生時代はクラスメートからのイジメも受けたし、イヤな経験もたくさんしてきた。

 だから実際のところ、イマージュはやはり女装には抵抗があったのだ。彼はかなり我慢して任務に取り組んでいた。だから男が体を触ってきた時も、かなり我慢していた。それなのに、そのあげくがジョナサンの強烈なビンタだったのだ。

 そうでなくても、落ち込み気味だった心は、もう立ちあがれないほど傷つき、落ち込んでしまった。
 しかしそれでも、
「おめでとう、最終試験合格だ」
とボスに言われた時、モナリザの瞳はパッと輝やきを取り戻し、気を取り直してニッコリ笑った。

 イマージュは自分でも不思議だったのだが、これからまたジョナサンと一緒にいられると思うと、とても嬉しかった。嬉しくて涙がでそうだった。でもそんな気持ちを誰にも悟られなくて、イマージュはみんなと一緒に大きな声で笑いながらはしゃいだ。

 そんな彼等をボスはニコニコしながら見ているだけだったが、ジョナサンはやはりクールだった。
「笑う時はもっと控えめに、謎めいたほほ笑みでなければダメだ」
と厳しいチェックをモナリザにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

それは奇妙な町でした

ねこしゃけ日和
ミステリー
 売れない作家である有馬四迷は新作を目新しさが足りないと言われ、ボツにされた。  バイト先のオーナーであるアメリカ人のルドリックさんにそのことを告げるとちょうどいい町があると教えられた。  猫神町は誰もがねこを敬う奇妙な町だった。

フェイタル・アトラクション~「長い旅の始まり」が意味するもの

夢織人
ミステリー
昨年、謎の死をとげた韓流スター、ソン・ジェリムに関する考察であり、ミステリー小説。そしてエッセイです。 私は彼の死を、メディアで報道されたり、噂されていたようなものではなく、命をかけた愛の告白だったと思っています。そして実在した人物なので、創作という形でしかその真実に迫ることは出来ないと思い、こうして書いています。 前途有望だった韓流スターは、なぜに自ら死を選ぶような決断をしたのか? 「ダビデの再臨」と謳われたモデル出身の美青年が、本当に恋して愛した心の恋人は、いったい誰だったのか?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

あの人って…

RINA
ミステリー
探偵助手兼恋人の私、花宮咲良。探偵兼恋人七瀬和泉とある事件を追っていた。 しかし、事態を把握するにつれ疑問が次々と上がってくる。 花宮と七瀬によるホラー&ミステリー小説! ※ エントリー作品です。普段の小説とは系統が違うものになります。   ご注意下さい。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

マクデブルクの半球

ナコイトオル
ミステリー
ある夜、電話がかかってきた。ただそれだけの、はずだった。 高校時代、自分と折り合いの付かなかった優等生からの唐突な電話。それが全てのはじまりだった。 電話をかけたのとほぼ同時刻、何者かに突き落とされ意識不明となった青年コウと、そんな彼と昔折り合いを付けることが出来なかった、容疑者となった女、ユキ。どうしてこうなったのかを調べていく内に、コウを突き落とした容疑者はどんどんと増えてきてしまう─── 「犯人を探そう。出来れば、彼が目を覚ますまでに」 自他共に認める在宅ストーカーを相棒に、誰かのために進む、犯人探し。

誘い受け

わこ
BL
ノン気の男とヤリ手男娼の話。 かつて個人サイトにてお題小説として書いていたものです。 お題はTOY様(toy.ohuda.com/)より、表紙画像はぱくたそ様(www.pakutaso.com)よりお借りしています。

放課後は、喫茶店で謎解きを 〜佐世保ジャズカフェの事件目録(ディスコグラフィ)〜

邑上主水
ミステリー
 かつて「ジャズの聖地」と呼ばれた長崎県佐世保市の商店街にひっそりと店を構えるジャズ・カフェ「ビハインド・ザ・ビート」──  ひょんなことから、このカフェで働くジャズ好きの少女・有栖川ちひろと出会った主人公・住吉は、彼女とともに舞い込むジャズレコードにまつわる謎を解き明かしていく。  だがそんな中、有栖川には秘められた過去があることがわかり──。  これは、かつてジャズの聖地と言われた佐世保に今もひっそりと流れ続けている、ジャズ・ミュージックにまつわる切なくもあたたかい「想い」の物語。

処理中です...