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モナリザ誕生までの序奏 

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 モナリザがスカウトされ、勤務することになった特殊機関は、失脚した前大統領が創設した秘密機関で、現大統領派からは疎ましく思われていた。

 実力はピカイチの職員ばかりなのに、なぜか現政府は彼らを窓際族扱いした。
 しかしその実力は海外にも知れ渡るもので、秘密裏に海外から仕事が舞い込むこともあった。
 モナリザが携わることになった任務は、海外からの依頼によるものだった。

 それは特別な地球規模のプロジェクトだった。
 それも美少年スターあっての大作戦だった。
 彼は特殊なウイルスの持ち主で、それは彼を殺人兵器にすることも可能だった。

 あるとき美少年スターは、海外で、突然体調を崩した。
 彼はいつもと違うものを感じ、病院を受診したが、海外の病院だったことから、精密検査ができなかった。とりあえず応急的な治療が施されたのだが、原因究明までには至らなかった。そして残念なことに、彼は完治可能な初期の段階で根本的な治療をすることができなかった。

 後に遺伝性の病気を発症していたことが判明したのだが、彼は他の病気も患っていたことから、他の病気との兼ね合いで、薬でその病気を一時的に抑えることはできても、完治のための治療は不可能だった。

 彼の遺伝性の病気は、エイズのように場合によっては感染するものだった。しかしきちんと治療していれば無害な病気でもあった。普通の接触では感染しない病気だったのだ。しかし治療を怠れば、彼の場合は発症している他の病気のせいで、彼の体の中でウイルスが突然変異を起こし毒性が高くなることが確認されていた。要するに彼は、条件さえ整えば、本人の意思とは関係なく、人間殺人兵器に変わってしまう体だったのだ。
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