聖なる者～コードネームはモナリザ

プロローグ

　夕闇が迫るポタラ宮の一室でひとり瞑想をしていたノルブの頬を、すっと風がなぶるように通り過ぎた。
　悲しみに満ちたひとつの不思議な感情。
　胸に染み込むようにすっと広がる不思議な感情。
　ノルブの瞑想と静寂を引き裂いたその不思議な感情と現象が意味することは、ただひとつしかなかった。
　もう一つの太陽との永遠の別れだった。

　　





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