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ソラリス&地球編 第2章 鷹は舞い降りた
第11話 謎の武官カルキの失われた過去
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少し蒼ざめた顔をして、クベーラは顔見知りではあったが、まだ名前も聞いていなかった少年を抱きかかえ、ジャド師のもとへ急いだ。
ジャド師は少年を見るなり、「ハリー!」と言って、驚いてはいたが、すぐに診察をしてくれた。
いきさつを聞いたジャド師は、
「そんなことが、あったのですか。でも、応急処置が良かった。
ほとんど後遺症はないようです。2,3日すれば、完全に治るでしょう」
と言った。
「ところで、あなたは医術の心得もあるのですか?」
と、その応急処置に驚いて、クベーラに尋ねた。
「ああ、応急処置をしたのは私ではなく、私の連れの武官です」
と言った。
「私は武術が不得手なので、心配した私の親代わりのものが、知り合いの武官を付けてくれたのです」
と言ったのち、クベーラはカルキをジャド師に紹介しようとしたのだが、カルキはいつの間にか姿を消していた。
カルキには封印した過去があった。
それは罪の意識が伴う、あまりに深い悲しみであり、拭い去ることができない、この宇宙を崩壊へと導くきっかけと成り得る、大きな出来事だった。
龍神ルーンがその災厄を防ぐために派遣されたのだが、部下のシヴァは初めての任務だった。そしてシヴァが敵の罠にはまり、到着が遅れてしまったのだった。
ルシファーとアトランティス軍も、本当の敵と本当の味方の判断を誤った。
結果、かけがえのない貴重な文明が失われ、その星が支えていた異世界との結界も失われたのだった。
龍神ルーンが救い出すことが出来たのは、ただ一人、そのとき神殿に残り自害しようとしていたシャンバラ最後の大神官、ユダだけだった。
龍神ルーンはユダを哀れみ、その記憶を封印した。
そしてカルキと云う新しい名前を与え、武官としての生を与えた。
カルキは時々、夢を見た。
夢の中では、名も知らぬ美しい姫といつも一緒だった。
しかしカルキは知っていた。
その恋は決して許されることのない恋であったことを・・・。
ジャド師は少年を見るなり、「ハリー!」と言って、驚いてはいたが、すぐに診察をしてくれた。
いきさつを聞いたジャド師は、
「そんなことが、あったのですか。でも、応急処置が良かった。
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と言った。
「ところで、あなたは医術の心得もあるのですか?」
と、その応急処置に驚いて、クベーラに尋ねた。
「ああ、応急処置をしたのは私ではなく、私の連れの武官です」
と言った。
「私は武術が不得手なので、心配した私の親代わりのものが、知り合いの武官を付けてくれたのです」
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カルキには封印した過去があった。
それは罪の意識が伴う、あまりに深い悲しみであり、拭い去ることができない、この宇宙を崩壊へと導くきっかけと成り得る、大きな出来事だった。
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結果、かけがえのない貴重な文明が失われ、その星が支えていた異世界との結界も失われたのだった。
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そしてカルキと云う新しい名前を与え、武官としての生を与えた。
カルキは時々、夢を見た。
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しかしカルキは知っていた。
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