224 / 234
ソラリス&地球編 第2章 鷹は舞い降りた
第10話 応急処置をしますから、少し離れて下さい。
しおりを挟む
愛するシヴァを襲った不幸、そしてその残酷さを目の当たりにしたクベーラは、立ち上がることも出来ないほどのひどいショックを受けた。
その喪失感から抜け出し、再び立ち上がるまでに回復しているとはとうてい言えないクベーラを、再び地球へ送り込んだのは、ルドラ将軍だった。
ルドラ将軍はクベーラに言った。
「シヴァさまがあなたのために秘かに築いた、新しい結界を見つけ出し護るのです。
シヴァさまがその命と引き換えに助けた少年は、ただの結界ではないのです。
その少年はたぶん、シヴァさまの霊力を受け継いでいるはずです」
地球へ戻ったクベーラは、いまだ不安定な心をかかえたまま、変革への一歩を歩み始めた。不安定な心を鎮め、平常心を取り戻すためにクベーラが選んだ方法は、フォースだった。
フォースを操る術は、結局のところ、フォースを操る者の精神力が鍵だった。フォースを操るには、精神を集中させることが必要不可欠であり、邪念が入るとフォースも乱れるものなのだった。そしてもちろん、闘争本能も必要だった。
以前のクベーラには、その闘争に対する本能がまるでなかった。そもそもクベーラは闘争を好まない性格だった。
幸せなことにクベーラは闘争せずとも、今まではすべての望みが叶う立場にあったのだ。
愛するシヴァを襲った不幸を、防げなかったことで、初めてクベーラは挫折というものを知ったのだった。
しかしその挫折が、クベーラの眠っていた闘争心を目覚めさせた。
そしてクベーラは再び、フォースを操る練習を一から始めたのだった。
「おじさん、久しぶりだね」
と言う声に、振り向いたクベーラの目に飛び込んで来たのは、一人の青年の姿だった。
「あれから、ずいぶん経つのに、おじさん、ぜんぜん上手になってないね」
すっかり青年に成長したハリーを見て、クベーラは驚いた。
クベーラにとって少年と出会ったのは、わずか7日前のことなのだが、惑星ソラリスに帰っていた間に、地球では7年の歳月がすでに経っていたのだ。
少年はすっかり大人になり、美しい青年に成長していた。
とつぜん現れた青年に、クベーラを護るようにルドラ将軍から命じられ、地球ではクベーラと行動を共にしていた龍神ルーンの弟子カルキは、その鋭い視線をまだ子供っぽさを残すその青年に向けた。
その日、カルキはクベーラのたっての願いにより、フォースの練習相手をしていた。
カルキは惑星ソラリスでも、謎に包まれた戦士として有名だった。
カルキのフォースは特別なもので、彼をどこからか連れ帰った龍神ルーンは別として、ほとんどの者が彼のフォースの前にはひれ伏した。
しかしハリーはそのことを知るよしもなく、ふざけてフォースをクベーラの方に向かって放ってしまったのだ。クベーラを護ることが使命であったカルキは、とうぜん躊躇無くそのフォースをハリーに使った。
カルキが放った反重力のフォースは、ハリーを直撃し、ハリーはその場に崩れ落ちた。
驚いたクベーラは、まだ名前も知らない幼さが残る青年を抱きかかえ、ジャド師のもとへ運ぼうとしたのだが、カルキがそれを遮った。
「応急処置をしますから、少し離れて下さい」
そう言うとカルキは少し離れた場所へ移動し、ハリーに向かってフォースを放ったのだが、先ほどとは違うフォースのようで、光の輪がハリーを包み、回転し出した。
しばらくしてから、すっと光が消えたとき、カルキはクベーラに言った。
「たぶん、これで大丈夫なはずですが、一度、教団の医院の方へ連れていって、診察してもらって下さい」
と、カルキはクベーラに言った。
その喪失感から抜け出し、再び立ち上がるまでに回復しているとはとうてい言えないクベーラを、再び地球へ送り込んだのは、ルドラ将軍だった。
ルドラ将軍はクベーラに言った。
「シヴァさまがあなたのために秘かに築いた、新しい結界を見つけ出し護るのです。
シヴァさまがその命と引き換えに助けた少年は、ただの結界ではないのです。
その少年はたぶん、シヴァさまの霊力を受け継いでいるはずです」
地球へ戻ったクベーラは、いまだ不安定な心をかかえたまま、変革への一歩を歩み始めた。不安定な心を鎮め、平常心を取り戻すためにクベーラが選んだ方法は、フォースだった。
フォースを操る術は、結局のところ、フォースを操る者の精神力が鍵だった。フォースを操るには、精神を集中させることが必要不可欠であり、邪念が入るとフォースも乱れるものなのだった。そしてもちろん、闘争本能も必要だった。
以前のクベーラには、その闘争に対する本能がまるでなかった。そもそもクベーラは闘争を好まない性格だった。
幸せなことにクベーラは闘争せずとも、今まではすべての望みが叶う立場にあったのだ。
愛するシヴァを襲った不幸を、防げなかったことで、初めてクベーラは挫折というものを知ったのだった。
しかしその挫折が、クベーラの眠っていた闘争心を目覚めさせた。
そしてクベーラは再び、フォースを操る練習を一から始めたのだった。
「おじさん、久しぶりだね」
と言う声に、振り向いたクベーラの目に飛び込んで来たのは、一人の青年の姿だった。
「あれから、ずいぶん経つのに、おじさん、ぜんぜん上手になってないね」
すっかり青年に成長したハリーを見て、クベーラは驚いた。
クベーラにとって少年と出会ったのは、わずか7日前のことなのだが、惑星ソラリスに帰っていた間に、地球では7年の歳月がすでに経っていたのだ。
少年はすっかり大人になり、美しい青年に成長していた。
とつぜん現れた青年に、クベーラを護るようにルドラ将軍から命じられ、地球ではクベーラと行動を共にしていた龍神ルーンの弟子カルキは、その鋭い視線をまだ子供っぽさを残すその青年に向けた。
その日、カルキはクベーラのたっての願いにより、フォースの練習相手をしていた。
カルキは惑星ソラリスでも、謎に包まれた戦士として有名だった。
カルキのフォースは特別なもので、彼をどこからか連れ帰った龍神ルーンは別として、ほとんどの者が彼のフォースの前にはひれ伏した。
しかしハリーはそのことを知るよしもなく、ふざけてフォースをクベーラの方に向かって放ってしまったのだ。クベーラを護ることが使命であったカルキは、とうぜん躊躇無くそのフォースをハリーに使った。
カルキが放った反重力のフォースは、ハリーを直撃し、ハリーはその場に崩れ落ちた。
驚いたクベーラは、まだ名前も知らない幼さが残る青年を抱きかかえ、ジャド師のもとへ運ぼうとしたのだが、カルキがそれを遮った。
「応急処置をしますから、少し離れて下さい」
そう言うとカルキは少し離れた場所へ移動し、ハリーに向かってフォースを放ったのだが、先ほどとは違うフォースのようで、光の輪がハリーを包み、回転し出した。
しばらくしてから、すっと光が消えたとき、カルキはクベーラに言った。
「たぶん、これで大丈夫なはずですが、一度、教団の医院の方へ連れていって、診察してもらって下さい」
と、カルキはクベーラに言った。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
【画像あり】超有名なミステリー「うつろ舟」のはなし
糺ノ杜 胡瓜堂
ミステリー
世の中の珍談・奇談を収集する会「兎園会」
「南総里見八犬伝」で有名な江戸時代の戯作者・曲亭馬琴と、随筆家・山崎美成らが中心となって発足させたその会で報告された内容は「兎園小説」として編纂されました。
そこから、あの「超有名」なミステリー「うつろ舟の蛮女」のお話をご紹介します。
うつろ舟については、民俗学者の柳田國男氏の著書をはじめ詳細な研究がなされていますし、ネット上でも様々に考察されていますので、今更私があれこれ言うまでもありません。
ただ、なかなか「原資料」を目にする機会は少ないと思いますので訳してみました。
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。

【なろう430万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ
海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。
衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。
絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。
ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。
大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。
はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?
小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。
カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。
後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!
公主の嫁入り
マチバリ
キャラ文芸
宗国の公主である雪花は、後宮の最奥にある月花宮で息をひそめて生きていた。母の身分が低かったことを理由に他の妃たちから冷遇されていたからだ。
17歳になったある日、皇帝となった兄の命により龍の血を継ぐという道士の元へ降嫁する事が決まる。政略結婚の道具として役に立ちたいと願いつつも怯えていた雪花だったが、顔を合わせた道士の焔蓮は優しい人で……ぎこちなくも心を通わせ、夫婦となっていく二人の物語。
中華習作かつ色々ふんわりなファンタジー設定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる