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ソラリス&地球編 第2章 鷹は舞い降りた
第9話 エロスの化身と化したシヴァ
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そこは誰でも入れる場所ではなかった。
しかしグランドマスターであるクベーラは、そこへ入る権利を持っていた。
そしてクベーラは、変わり果てた愛するシヴァの姿を見た。
中にはひとり先客がいて、シヴァの側らで、呆けたように薄気味悪い笑みを浮かべて変わり果てたシヴァをじっと見つめていた。
やがて男はクベーラに気づき、嬉しそうにクックと笑いながら近づいてきた。
「美しいだろう? 生と死の舞を踊るシヴァも美しかったが、このエロスの化身と化したシヴァは、もっと美しい・・・」
男は美しく憐れなシヴァを、楽しむかのように見入っていた。
そして恥ずかしげも無く、
「この宇宙一の美術品を見て、君は何も感じないのか?」
と、驚いたかのように言った。
そして男は笑いながらクベーラにこうも言った。
「そうだな、お前はシヴァと交わったことがないからな。
罪人になったシヴァは、それは最高のごちそうだった。
異世界への生け贄として差し出さなければならなくて、とても残念だったよ。
でも異世界からの使いも、シヴァをとても気に入ってくれてね、毎日のように、シヴァを愛でにくる。
死んでるように見えるが、あれで死んではいないのだ。
その魂が異次元にあるから、死んでいるように見えるがね。
シヴァはこの世とあの世を結ぶものであり、そして結界でもある。
ほら、始まった。異世界からの侵入者をその体に受け止め、異世界のものがこちらの世界へ侵入しないように、押し返している」
と男は狂人のような目をして、小刻みに震え始めたシヴァの体を見つめながら言った。
目には見えないのだが、だれかがそこにいて、シヴァを蹂躙していた。
そして見えない異世界のものと交わるたびに、シヴァの体は不思議な色と波動に包まれ、この世をこえたエロスの化身へと変わって行くようだった。
エロスの化身と化したシヴァは少し動くだけでも悩ましく美しかった。しかしそれは無理矢理、エロスの舞をおどらされているのと同じだった。
クベーラはそのシヴァの姿を見て、心が張り裂けそうだった。
そして何度も助けけようとしたのだが、そのたびに何かにはじき飛ばされ、近寄ることさえ出来ないのだった。
クベーラは泣きながら、愛するシヴァの不幸を見ていることしか出来なかった。
そのようなクベーラを見ていて、ルドラ将軍は、幼い子供を叱るように言った。
「くやしいだろう。だったらその悔しさを忘れるな。お前の幼さが、お前の未熟さが、結局は、シヴァをあのような不幸に追い込んだのだ。
お前はシヴァのためにも、この不幸な世界を変える新しきリーダー、そしてもっと強いリーダーにならなければ駄目だ」
クベーラは、悲しみと悔し涙の中で、必ずシヴァをその不幸から解放すると、堅く心のなかで誓っていた。
しかしグランドマスターであるクベーラは、そこへ入る権利を持っていた。
そしてクベーラは、変わり果てた愛するシヴァの姿を見た。
中にはひとり先客がいて、シヴァの側らで、呆けたように薄気味悪い笑みを浮かべて変わり果てたシヴァをじっと見つめていた。
やがて男はクベーラに気づき、嬉しそうにクックと笑いながら近づいてきた。
「美しいだろう? 生と死の舞を踊るシヴァも美しかったが、このエロスの化身と化したシヴァは、もっと美しい・・・」
男は美しく憐れなシヴァを、楽しむかのように見入っていた。
そして恥ずかしげも無く、
「この宇宙一の美術品を見て、君は何も感じないのか?」
と、驚いたかのように言った。
そして男は笑いながらクベーラにこうも言った。
「そうだな、お前はシヴァと交わったことがないからな。
罪人になったシヴァは、それは最高のごちそうだった。
異世界への生け贄として差し出さなければならなくて、とても残念だったよ。
でも異世界からの使いも、シヴァをとても気に入ってくれてね、毎日のように、シヴァを愛でにくる。
死んでるように見えるが、あれで死んではいないのだ。
その魂が異次元にあるから、死んでいるように見えるがね。
シヴァはこの世とあの世を結ぶものであり、そして結界でもある。
ほら、始まった。異世界からの侵入者をその体に受け止め、異世界のものがこちらの世界へ侵入しないように、押し返している」
と男は狂人のような目をして、小刻みに震え始めたシヴァの体を見つめながら言った。
目には見えないのだが、だれかがそこにいて、シヴァを蹂躙していた。
そして見えない異世界のものと交わるたびに、シヴァの体は不思議な色と波動に包まれ、この世をこえたエロスの化身へと変わって行くようだった。
エロスの化身と化したシヴァは少し動くだけでも悩ましく美しかった。しかしそれは無理矢理、エロスの舞をおどらされているのと同じだった。
クベーラはそのシヴァの姿を見て、心が張り裂けそうだった。
そして何度も助けけようとしたのだが、そのたびに何かにはじき飛ばされ、近寄ることさえ出来ないのだった。
クベーラは泣きながら、愛するシヴァの不幸を見ていることしか出来なかった。
そのようなクベーラを見ていて、ルドラ将軍は、幼い子供を叱るように言った。
「くやしいだろう。だったらその悔しさを忘れるな。お前の幼さが、お前の未熟さが、結局は、シヴァをあのような不幸に追い込んだのだ。
お前はシヴァのためにも、この不幸な世界を変える新しきリーダー、そしてもっと強いリーダーにならなければ駄目だ」
クベーラは、悲しみと悔し涙の中で、必ずシヴァをその不幸から解放すると、堅く心のなかで誓っていた。
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