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ソラリス&地球編 第1章 グランドマスター・クベーラと破壊と再生の神シヴァの想い
第2話 若きグランドマスターと破壊と創造の舞の名手の秘められた恋
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「そんなはずはない。ここに収監されているはずだ。
一級重罪人はみな、最初はここへ送られる」
青年は受付の者に、そう言った。
驚くほど気品があり、身なりも立派で、このような場所とは明らかに無縁なように思われた。
「そんなことを言われても、困ります。
特に訳ありの重罪人の場合は、それこそこちらの首が飛びます」
受付のものは困惑していた。
「私はグランドマスターのクベーラだ。そんなことはさせないから、頼む、教えてくれ」
クベーラは粘りに粘り、身分まで明かして、シヴァの消息を聞き出そうとした。
その熱意に負けたのか、それとも今回は、グランドマスターの称号が効いたのか、受付は、
「絶対に秘密ですよ」
と言って記録を見せてくれた。
ところが、シヴァの記録が無いのだった。
「絶対あるはずだ。それでは日にちで探してくれ。
一週間前のはずだ」
「ああ、わかりました。思い出しました。
確かにひとり、罪人がこちらへ送られて来ました。
でも、すぐに恩赦が出て、引き取られてゆきました」
と、受付のものは言った。
「それでは、その受取人の住所を教えてほしい」
と、クベーラはすぐに言った。
しかし・・・
「特別な方たちですので、引き取られた先の住所は、お教えできません。
というより、私たちも住所を知らないのです。
あなたと同じようにグランドマスタ-のかたで、3人もお見えになっていました」
と受付は、そこまで親切に教えてくれた。
そこまで聞いて、クベーラはすべてを理解した。
あの3人のグランドマスタ-たちは、ついにしびれを切らし、シヴァ捕獲作戦に乗り出していたのだ。
そして3人が仕組んだ計画は完璧だった。
惑星ソラリスは、宇宙連合の中でも、特別に選ばれ許可されたものしか入国できなく、滞在も許されない星だった。そして鉄壁の防御を誇る秘密基地ゆえに、この星から出るときには、さらに厳しいチェックがあった。
それでは、罪人となり、恩赦で釈放された罪人はどうなるのか?
無実を証明できない限り、住民としての権利を剥奪され、秘密が漏れないように、一生この星で身請け人となってくれた住人の持ち物となって生きることになるのだった。
もはや物と同じ扱いだった。飽きたら捨てられる、子供の人形と同じだった。
重罪人は恩赦で生きながらえたとしても、ある意味、死んだも同じことなのだった。
そしてシヴァにとっては、死よりもつらい日々が、彼を待ち受けていた。
しかしシヴァはまったく後悔していなかった。
シヴァは3人のグランドマスターたちの自分に対する欲望を、誰よりも深く理解していた。
それはシヴァ自身の秘められた感情ゆえだった。
シヴァは、あるとき、無意識の内にクベーラの姿を目で追っている自分に気づき、うろたえた。
なぜなら、その行動は、彼がそれまで疎ましく思っていた視線とまったく同じものだったからだ。
シヴァは彼の踊りを愛し、彼に対して欲望の片鱗をいつも垣間見せるこの星の最高権力者たちが嫌いだった。そしてその熱いまなざしを、それまではいつも疎ましく思っていたのだ。
しかしあるとき、自分が尊敬するグランドマスター、クベーラの姿を無意識に追いかけていることに気づいたとき、すべてが一変した。
疎ましいと思った感情は、恐れへと変わり、自分の中に眠る感情に恐れ慄いた。
シヴァはクベーラに、自分の気持ちを悟られることを恐れた。
その気持ちから逃れたくて、シヴァは休暇を取り、何かに導かれるうように、一番遠い星へ、地球へ行ったのだった。
目の前のグランドマスターをシヴァは愛していなかったが、自分に溺れるグランドマスターたちを切ない気持ちで眺めるのは嫌ではなかった。なぜか解らないが、今は以前と違い、心が落ち着くのだった。
3人のグランドマスターたちの欲望を受け入れながら、シヴァはいつのときもクベーラを思った。
シヴァは夜の闇に深く沈みながら、愛する人の夢をいつも見た。
いつかクベーラは最高のグランドマスターになるだろう。
そしてこの宇宙を救うだろう。
クベーラの最大の敵は、この3人のグランドマスター。
彼らにクベーラの行く道を邪魔させはしない。
だから、僕は彼らの望みを受け入れる。
クベーラが自由にこの宇宙を飛べるなら、それでいい・・・
一級重罪人はみな、最初はここへ送られる」
青年は受付の者に、そう言った。
驚くほど気品があり、身なりも立派で、このような場所とは明らかに無縁なように思われた。
「そんなことを言われても、困ります。
特に訳ありの重罪人の場合は、それこそこちらの首が飛びます」
受付のものは困惑していた。
「私はグランドマスターのクベーラだ。そんなことはさせないから、頼む、教えてくれ」
クベーラは粘りに粘り、身分まで明かして、シヴァの消息を聞き出そうとした。
その熱意に負けたのか、それとも今回は、グランドマスターの称号が効いたのか、受付は、
「絶対に秘密ですよ」
と言って記録を見せてくれた。
ところが、シヴァの記録が無いのだった。
「絶対あるはずだ。それでは日にちで探してくれ。
一週間前のはずだ」
「ああ、わかりました。思い出しました。
確かにひとり、罪人がこちらへ送られて来ました。
でも、すぐに恩赦が出て、引き取られてゆきました」
と、受付のものは言った。
「それでは、その受取人の住所を教えてほしい」
と、クベーラはすぐに言った。
しかし・・・
「特別な方たちですので、引き取られた先の住所は、お教えできません。
というより、私たちも住所を知らないのです。
あなたと同じようにグランドマスタ-のかたで、3人もお見えになっていました」
と受付は、そこまで親切に教えてくれた。
そこまで聞いて、クベーラはすべてを理解した。
あの3人のグランドマスタ-たちは、ついにしびれを切らし、シヴァ捕獲作戦に乗り出していたのだ。
そして3人が仕組んだ計画は完璧だった。
惑星ソラリスは、宇宙連合の中でも、特別に選ばれ許可されたものしか入国できなく、滞在も許されない星だった。そして鉄壁の防御を誇る秘密基地ゆえに、この星から出るときには、さらに厳しいチェックがあった。
それでは、罪人となり、恩赦で釈放された罪人はどうなるのか?
無実を証明できない限り、住民としての権利を剥奪され、秘密が漏れないように、一生この星で身請け人となってくれた住人の持ち物となって生きることになるのだった。
もはや物と同じ扱いだった。飽きたら捨てられる、子供の人形と同じだった。
重罪人は恩赦で生きながらえたとしても、ある意味、死んだも同じことなのだった。
そしてシヴァにとっては、死よりもつらい日々が、彼を待ち受けていた。
しかしシヴァはまったく後悔していなかった。
シヴァは3人のグランドマスターたちの自分に対する欲望を、誰よりも深く理解していた。
それはシヴァ自身の秘められた感情ゆえだった。
シヴァは、あるとき、無意識の内にクベーラの姿を目で追っている自分に気づき、うろたえた。
なぜなら、その行動は、彼がそれまで疎ましく思っていた視線とまったく同じものだったからだ。
シヴァは彼の踊りを愛し、彼に対して欲望の片鱗をいつも垣間見せるこの星の最高権力者たちが嫌いだった。そしてその熱いまなざしを、それまではいつも疎ましく思っていたのだ。
しかしあるとき、自分が尊敬するグランドマスター、クベーラの姿を無意識に追いかけていることに気づいたとき、すべてが一変した。
疎ましいと思った感情は、恐れへと変わり、自分の中に眠る感情に恐れ慄いた。
シヴァはクベーラに、自分の気持ちを悟られることを恐れた。
その気持ちから逃れたくて、シヴァは休暇を取り、何かに導かれるうように、一番遠い星へ、地球へ行ったのだった。
目の前のグランドマスターをシヴァは愛していなかったが、自分に溺れるグランドマスターたちを切ない気持ちで眺めるのは嫌ではなかった。なぜか解らないが、今は以前と違い、心が落ち着くのだった。
3人のグランドマスターたちの欲望を受け入れながら、シヴァはいつのときもクベーラを思った。
シヴァは夜の闇に深く沈みながら、愛する人の夢をいつも見た。
いつかクベーラは最高のグランドマスターになるだろう。
そしてこの宇宙を救うだろう。
クベーラの最大の敵は、この3人のグランドマスター。
彼らにクベーラの行く道を邪魔させはしない。
だから、僕は彼らの望みを受け入れる。
クベーラが自由にこの宇宙を飛べるなら、それでいい・・・
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