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ソラリス&地球編 第1章 グランドマスター・クベーラと破壊と再生の神シヴァの想い
第1話 若きグランドマスター、クベーラと美しき舞の名手シヴァ
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シヴァを乗せた宇宙船が、宇宙連合の秘密基地が置かれている惑星「ソラリス」に着くやいなや、待ち受けていたように走ってきた人物がいた。
グランドマスターのひとりで、シヴァを弟のようにかわいがり、何かと守ってくれた名門一族出身のクベーラだった。
「シヴァ、逃げろ! 委員会に行ってはいけない!」
と言って、走ってくるやいなや、
「宇宙船を用意したから、とにかく逃げるんだ。
例のグランドマスター3人が、今回のことでなぜか同盟を結んだ。
今回の結界の消滅の責任を、すべてお前にとらせるつもりだ」
と言った。
「休暇中だったが、結界をあの子の体の中に作れ・・・という委員会の命令に背いたのは事実だから、責任は取るつもりだ」
とシヴァはクベーラに言った。
「違う、シヴァ。お前が背くだろうことを初めから予想しての命令だったんだ」
とクベーラは言った。
「お前、あのグランドマスターたちに内緒で休暇をとり、旅行へ出掛けたつもりだっただろうけれど、グランドマスターたちは知っていたんだ。そしてお前が会いに行った相手を探っていたんだ」
と言った。
「グランドマスターたちは、お前には恋人がいて、その恋人に会いに行った思っているんだ」
シヴァはクベーラの言葉に少し哀しくなった。
シヴァには恋人ではないが、秘かに思う相手がいたからだ。
「誰かに会いたくて、行ったわけではないんだ。ひとりになりたくて、行っただけだ」
「だけどあのグランドマスターたちは、そう考えなかったんだ。
お前、あのグランドマスターたちから、誘いを受けていたんだろう?
そのたびに、いつか・・・と行って、誘いを断っていたんだろうう?」
「そうだが・・・」
「あの3人は最高権力者で、思い通りにならなかったことなんて、一度もなかった連中だ。
それなのに、お前にはづいぶん譲歩していた。
連中は惚れた弱みで、お前には何も言わなかったが、ついに堪忍袋の緒が切れたんだ」
初めから解っていたことだった。
ただそれでも、シヴァは行く必要があった。
「今回のことでお前は、仕事を放棄して、旅に出たことで有罪。そして結界の再構築失敗でも有罪。称号は取り消しになった。だから逃げろ! このままつかまったら、お前は永遠に奴らの束縛から、逃れられ無くなる」
と言った。
クベーラは何も解っていなかった。クベーラはシヴァの気持ちを、まったく理解していなかった。
それは幸いでもあり、哀しいことでもあった。
シヴァはクベーラに言った。
「しかし、このまま僕が逃げたら、今度はクベーラ、あなたが僕を逃がした罪で断罪されることになる。
それは僕の望むことではない。あなたのいない世界こそ、僕は耐えられない」
と言った。
そしてシヴァは空港をあとにした。
同じグランドマスターとはいえ、3人の横暴を止められない自分の無力さを、このとき初めてクベーラは痛感した。
グランドマスターのひとりで、シヴァを弟のようにかわいがり、何かと守ってくれた名門一族出身のクベーラだった。
「シヴァ、逃げろ! 委員会に行ってはいけない!」
と言って、走ってくるやいなや、
「宇宙船を用意したから、とにかく逃げるんだ。
例のグランドマスター3人が、今回のことでなぜか同盟を結んだ。
今回の結界の消滅の責任を、すべてお前にとらせるつもりだ」
と言った。
「休暇中だったが、結界をあの子の体の中に作れ・・・という委員会の命令に背いたのは事実だから、責任は取るつもりだ」
とシヴァはクベーラに言った。
「違う、シヴァ。お前が背くだろうことを初めから予想しての命令だったんだ」
とクベーラは言った。
「お前、あのグランドマスターたちに内緒で休暇をとり、旅行へ出掛けたつもりだっただろうけれど、グランドマスターたちは知っていたんだ。そしてお前が会いに行った相手を探っていたんだ」
と言った。
「グランドマスターたちは、お前には恋人がいて、その恋人に会いに行った思っているんだ」
シヴァはクベーラの言葉に少し哀しくなった。
シヴァには恋人ではないが、秘かに思う相手がいたからだ。
「誰かに会いたくて、行ったわけではないんだ。ひとりになりたくて、行っただけだ」
「だけどあのグランドマスターたちは、そう考えなかったんだ。
お前、あのグランドマスターたちから、誘いを受けていたんだろう?
そのたびに、いつか・・・と行って、誘いを断っていたんだろうう?」
「そうだが・・・」
「あの3人は最高権力者で、思い通りにならなかったことなんて、一度もなかった連中だ。
それなのに、お前にはづいぶん譲歩していた。
連中は惚れた弱みで、お前には何も言わなかったが、ついに堪忍袋の緒が切れたんだ」
初めから解っていたことだった。
ただそれでも、シヴァは行く必要があった。
「今回のことでお前は、仕事を放棄して、旅に出たことで有罪。そして結界の再構築失敗でも有罪。称号は取り消しになった。だから逃げろ! このままつかまったら、お前は永遠に奴らの束縛から、逃れられ無くなる」
と言った。
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それは幸いでもあり、哀しいことでもあった。
シヴァはクベーラに言った。
「しかし、このまま僕が逃げたら、今度はクベーラ、あなたが僕を逃がした罪で断罪されることになる。
それは僕の望むことではない。あなたのいない世界こそ、僕は耐えられない」
と言った。
そしてシヴァは空港をあとにした。
同じグランドマスターとはいえ、3人の横暴を止められない自分の無力さを、このとき初めてクベーラは痛感した。
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