「光の天使」 光と影のシンフォニー

夢織人

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地球編 第4章 ハリーと運命

第13話 セザールがマスター・シヴァだったとは・・・

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 今、まさにセザールを乗せた宇宙船が飛び立とうとしていた。
 その様子を、ルシファー、ヨハネ、ミカエルの3人は少し離れた場所から見ていた。

「しかし、驚いたな。セザールがマスター・シヴァだったとは・・・」
と、ルシファーは後ろを振り向き、ミカエルとヨハネに言った。

「破壊と再生の神なんだろう? その称号を持つ者は、今、何人いるんだ?」

「何人かいるはずですが、確かなことは、そう多くはないということです」
とヨハネが答えた。

「セザールは、ランク的には、何番目のシヴァなんだ?」

「さあ・・・? 時々、踊りの練習をしてはいましたが、何か見慣れない、不思議な踊りでしたよね。
 1番上のシヴァは、現グランドマスターのお気に入りで、頂上委員会の次期グランドマスター候補だと聞いたことがあります」
と、ヨハネが答えた。

「お前、今、次期グランドマスター候補って言ったか?」

「はい。そう聞いています」

「嘘だろ? それに、グランドマスターのお気に入り・・・って、どういう意味だ?」

「息子のようにかわいがっている・・・、と言うことなのではないでしょうか?」
とヨハネが答えた。

 するとミカエルが、
「別の噂も、いくつが聞いたことがあります」
と言った。そして、
「グランドマスターの何人かがそのシヴァに執着していて、委員会内部で何かと揉めている・・・、と聞いたことがあります」

「どういうことだ?」

「要するに、そのシヴァを独占したがっているようなのです」

「なぜ?」

「そのシヴァは、とてもエロティックな踊りをするそうなのです。
 一度その踊りを見たら、忘れられなくなると言われています。
 しかし、その踊りは滅多に見れるものではないので、飢えにもに似た感情に、見たものは囚われるのだそうです」

「じゃあ、セザールは、トップ・ダンサーではないな。
 時々踊っていたが、ぜんぜんエロティックではなかったよな、ヨハネ?」
とルシファーは、ヨハネに同意をもとめた。

「そうですね。ただ、昨日のセザールは精霊に襲われて放心状態だったのですが、いつもと違い、こちらが驚くほどエロティックな感じでした」

「そうなのか?」
とルシファーは言い、少し怪訝そうな顔でヨハネを見た。

「それでグランドマスターは、宇宙連合に何人いるんだ?」
とルシファーはミカエルに聞いた。

「13人と聞いていますが、実のところは、よくわかりません」
とミカエルはルシファーに答えた。

「宇宙連合も上の方になると、なかなか情報が出てこないからな」
とルシファーは同意したが、何かひっかかっているような表情だった。

「セザールは初めから、ルシファーさまに対して、ため口をきいていましたからね。
 あれには、実は、驚いていたんです。
 ルシファーさまが今にも怒り出しそうで、いつもはらはらしながら二人を見ていました」
と、ヨハネが言った。

「ところで、ミカエル、お前はグランドマスターを見たことがあるのか?」
と、ルシファーが突然、ミカエルに、尋ねた。

「ないです。たぶんパリスさまでもお会いになったことは無いはずです」
とミカエルは答えた。

「でも、会っていても、今回のように相手が身分を明かさなければ、こっちはわからないですよ」
とヨハネが、ことばをたたみかけるようにして言った。

「それでは俺たちは、圧倒的に不利だということだな」

「何が不利なんです?」

「宇宙連合が、俺たちを疑っているとしたらだよ」

「疑われるようなことを、何もしていないのにですか?」

「お前がアシュラに下された刑の執行を、いつまでもしないから、危険分子としてマークされたのかもしれないぞ」
と、ルシファーは言った。

 その言葉に、ヨハネは憮然とした表情で、
「だったら、私は罪人になってもかまいません」
と、きっぱりと言い切った。

 その言葉に、ミカエルは笑いながら、あることをルシファーに教えた。
「こいつは今日、プリンス・チャーミングに会ったんです。
 私が目を覚まさせようと思って、会わせたんです。
 ところが、逆効果でした」
と、ミカエルが言った。

 「命の恩人に会いたかった、とプリンス・チャーミングが言いましてね。あのキラー・スマイルの連発だったのです。あのキラー・スマイルには、だれも逆らえません」

「そうか・・・」
とルシファーは言ったが、明らかに哀れむような表情でヨハネを見ていた。

「それからパリスさまも、プリンス・チャーミングと会ってから、なぜか考えを変えられました。
 それで処刑は、延期になりました」
とミカエルは付け加えた。





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