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地球編 第4章 ハリーと運命

第3話 自軍の兵士は敗走の混乱のなか二人を見捨てた状態だった。

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 実際に剣を交えたことは無かったのだが、オリオンとエルフィンが帝国軍の武官として、初めて参戦した戦いの敵軍の指揮官はヨハネだった。

 宮殿を守る美少年部隊プエル・アルクスでは、オリオンとエルフィンは共に勇名を馳せる精鋭として、有名だったのだが、宇宙連合軍との戦いに自ら望んで参戦したとき、二人は自分たちの甘さを思い知らされた。

 ほとんど戦闘の経験が無い王族の若者が王座を狙い参戦した戦いで、その若者が最高指揮官だった。
 バカとしか言いようのないこの指揮官と取り巻きは、相手の最高指揮官が宇宙連合軍でも屈指のフォースの達人であるアトランティスの四神戦士ヨハネであることを知ったとき、平気で兵士たちを見捨て我先にとマルデクへ逃げ帰った。

 そのことを知らなかったエルフィンとオリオンは、ふたり戦場に取り残された。そして運悪く、敵の兵士と出くわしてしまったのだった。
 エルフィンは女のように美しい、(女以上に美しいとも言われていた)、稀に見る美少年だった。美少年ばかりが集められたプエル・アルクスでも、彼の美しさは別次元の美しさだった。
 
 すでに勝敗は決し、自軍の兵士は敗走の混乱のなか二人を見捨てた状態だった。
 敵の兵士たちが多人数でエルフィンに襲いかかり蹂躙しようとするのを目にしながらも、オリオンは自分を守ることすら危うい状態で、エルフィンを助けるすべはまるで無かった。

 しかしその時だった。エルフィンの自由を奪い、その体を蹂躙しようとしていた荒くれ兵士たちが、轟音と共に吹き飛ばされたのだ。 

「本当に、困った奴らだ。いくら勝ったからといって、敵に何をしても良いわけではないのにな。
 それもこんな子供に手をだすとは・・・」

 そう言いながら、どこからか現れた敵の武将は、ショックで倒れているエルフィンを抱き起こした。

「大丈夫か?」
と言い、エルフィンを心配そうに見ていたが、
「君を見ていると、なぜだか私は知り合いを思い出す。
 君はもしかして、両性具有で、まだ未分化なのか?」
と、エルフィンに言った。

 エルフィンは黙ったまま、答えようとしなかった。

「強情なところまで、アシュラと良く似ている」と言い、武将は笑ったのだが、怒るでもなく、そのまま次の瞬間には、風のようにどこかへ行ってしまった。

 そのフォースも凄かったが、エルフィンを見て、何の関心も示さなかったことにオリオンは驚いた。
 普通はエルフィンの美しさに魅了され、エルフィンに執着するか、恋をするかのどちらかだった。

 その後すぐに、敵の指揮官であった戦神ヨハネは自ら望んで戦場を去り、銀河宇宙の辺境の星へなぜだか旅立った・・・、と聞いていたが、それが地球だったとは、オリオンは夢にも思わなかった。
 そしてあの時、自分たちを助けてくれた敵の武官が、敵の最高指揮官であった四神戦士ヨハネであったことをオリオンは初めて知ったのだった。

 
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