「光の天使」 光と影のシンフォニー

夢織人

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マルデク編 第2章 新しき希望の光ハリー

第14話 オスカーはアメリアのつくり話にあきれた。

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 宮殿から帰った後、ハリーは何日も父オスカーと口をきこうとしなかった。
 オスカーはその異変にすぐ気づいた。

「どうしたのだ?」
とオスカーはハリーに尋ねた。

「なぜ私に本当のことを、言ってくださらなかったのですか?
 私が父上の本当の子供ではないと・・・」

「誰がそんなことをお前に言ったのだ?」

「アメリア女王です。女王は私の父親は女王の死んだ婚約者ハンネスという方で、私の母親は自分だとおっしゃったのです。そしてずっと私を探していたとも言われました」

 オスカーはアメリアのつくり話にあきれた。
 しかしハリーはすっかりアメリアの作り話を信じていた。
 オスカーはついに真実を教える日がきたと感じ、ハリーに真実を話すことにした。

「わかった。それでは、本当のことを教えよう。
 まず、母親のことだが、断じてアメリア女王ではない。
 お前の母は、エルフィンと言う名の、アトランティス王家の姫とシャンバラの大神官の間に生まれた女性だ。そしてお前の父は、今はアメリアの策略のせいで、暗黒王と呼ばれるようになってしまった前帝国軍総統ユリウスだ」

 そしてオスカーは書斎のデスクから、長い間秘かに保管していた1枚の写真を出した。それはハリーを抱くエルフィンと総統ユリウスの写真だった。

「お前は母親似だ。そっくりだろう。そしてその髪の色は、たぶん父親から受け継いだものだ」
とオスカーは言った。 

 女性は確かに、ハリーにそっくりだった。
 そして総統ユリウスの髪の色は、ハリーと同じ色だった。

 学校のマルデクの近代史で前マルデク総統ユリウスについて、ハリーは学んだことがあった。
 学校では、暗黒王ユリウスは極悪非道の悪人で、最低の王だった。そしてその妻エルフィンは稀に見る美女だったが、男を破滅へ導く妖婦だったと、教えられていた。
 ハリーはショックで、茫然自失の状態だった。

 それを見て取ったオスカーは、ハリーに言った。
「お前の両親は、アメリアのお前の母親に対する憎しみのせいで、事実をゆがめられた姿で伝えられている。事実は違うのだ。
 
 マルデクを救ったのは、アメリアと亡き婚約者ハンネスだと伝えられているが、アメリアは一度も戦場に行ったことがないし、ハンネスはアメリアと婚約などしていなかった。
 ハンネスは生涯、お前の母エルフィンを愛し、アメリアの想いを決して受け入れることはなかったのだ。

 そしてこのマルデクを黒魔術に支配された暗黒の世界から解放し救ったのは、お前の父である総統ユリウスとお前の叔父ハンネスだ。
 アメリアは偽りの予言をたてに、自分と婚約者ハンネスがマルデクを救ったと主張しているだけだ」

 オスカーの話に、ハリーはますます混乱した。
 そして何も言わず、自室に閉じこもった。
 そしてそれからずっと、ハリーは自室に閉じこもったまま、外に出てこようとしなかった。
 
 オスカーがハリーを地球へ送る決意をしたのは、こういう背景があってのことだった。
 失意のハリーの心を癒やすことができるのは、地球へ去ったあのクラスメートしかいないことを、オスカーは敏感に感じとっていた。
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