「光の天使」 光と影のシンフォニー

夢織人

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マルデク編 第2章 新しき希望の光ハリー

第8話 女王アメリアの突然の訪問に、オスカーは・・・

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「オスカーさま、大変です。アメリア女王が、お見えです」
と執事はオスカーに告げた。

 今、マルデク王朝に君臨するのは、かつてはオスカーの婚約者だったアメリアだった。アメリアは予言により、王座を手に入れたのだが、婚約者ハンネスが死んだため独身のまま王座についた。

 ハンネスは結局、最後まで、エルフィンへの愛を貫き、アメリアの愛を受け入れることはなかった。そしてアメリアにより王宮の牢に閉じ込められていたハンネスを救ったのは、総統ユリウスだった。

 総統ユリウスは甥ハンネスがエルフィンの恋人であったことを知ったとき、とても驚いた。しかし二人が会うことをあえて許した。そのようにして、ハンネスは愛するエルフィンと再会できたのだが、ユリウスの子を宿し死の床にあったエルフィンを救うすべは、すでに何もなかった。

 総統ユリウスとハンネスが和解できたのは、もちろんジャド師の働きかけもあったが、エルフィンがその命と引き換えに産み落とした赤子のハリーの存在が大きかった。

 二人はハリーの未来のために、魔界へと続く、異世界との扉を閉める闘いに共に身を投じることを決めた。
 そしてその命と引き換えにマルデクを救ったのだった。

 しかしアメリアはそうは思っていなかった。
 アメリアとハンネスを引き裂いたのは、妖女エルフィンであり、暗黒王ユリウスだと、今でも堅く思っていた。

「オスカーさま、私はあなたに息子がいることを、実は昨日まで知りませんでした。
 噂では、私に振られたあなたが、傷心のあまり遊び女と戯れていた時期に出来た子供だとか・・・」

 その言葉にオスカーは答えなかったが、
 (相変わらず、自分勝手な解釈をする女だ)
と、心のなかでつぶやいた。

「あなたの目に叶うほどだから、さぞ美しい遊び女だったんでしょうね。
 あなたの息子は、それは美しい少年だと聞きましたよ」
と言いながらアメリアは後ろを振り向き、連れの者に持参したプレゼントを出させた。

「遅くなりましたが、息子さんへの祝いの品を持参しました」
 そう言いながら、アメリアはにこやかに笑った。

 しかしオスカーはその意図をすぐに見抜いた。
 アメリアはハリーの母親が誰かを、確かめに来たのだ。

「先ほど、執事の方に聞いたら、息子さんは、ご在宅だとか・・・。
 そして名前は、ハリーだと、親切に教えてくれました。
 ぜひ、お会いしたいわ」
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