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マルデク&地球編 第1章 想い遙かに
第7話 明けの明星とよばれし頃
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「帝国軍総統ユリウスは、美し男しか愛せない」と人々に言われていたが、それは真実ではない。
ユリウスは生涯でふたりの美しい姫君を愛した。
一人は腹違いの妹アンジェリーナ、そしてもう一人は親が決めた許嫁エリザベートだった。若き日のユリウスは、美しい容貌と共にその聡明さでも人々を魅了した。文武両道で、彼にかなう者は久しくいなかった。
しかしあるとき、辺境の星からひとりの青年がマルデクへやってきて、ユリウスの前に現れた。その青年は、ユリウスにも負けない聡明さと武術の腕前を持ち、不思議な美しさに満ちていた。
最初に声をかけたのは、ユリウスの方だった。
「君の武術は今まで見たことがないのだが、我々とは違う星系の出身なのか?」
青年はシャンバラから派遣された武官だったのだが、潜伏捜査のためにマルデクへ来ていた。
「出身はアトランティスです。この星の先端医術を学ぶためにやってきました」
と青年は答えた。
「アトランティスというと、あの両性具有の種族がいるという、あの星か?」
「そうです」
「では、君も両性具有なのか?」
「見ての通り、私は違います。両性具有ではありません。
ただ、そういう民もおります」
と青年は答えた。
そのようなふたりを遠くから、遠巻きに見ている者がいた。
神智学の教授ウィルヘルムだった。
ウィルヘルムはマルデクの士官大学校で古の学問である魔術を教えていた。
大学校で生徒たちに教えていたのは白魔術だったが、ウィルヘルム自身は黒魔術を信奉していた。知られていないことだったが、彼は黒魔術の秘密結社を率いていて、マスターと呼ばれる影の実力者だった。
彼がこの星へやって来たのには、特別な理由があった。
それは当時、明けの明星と人々から呼ばれていた若きユリウスを黒魔術の信奉者にするためだった。
ユリウスは生涯でふたりの美しい姫君を愛した。
一人は腹違いの妹アンジェリーナ、そしてもう一人は親が決めた許嫁エリザベートだった。若き日のユリウスは、美しい容貌と共にその聡明さでも人々を魅了した。文武両道で、彼にかなう者は久しくいなかった。
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「そうです」
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「見ての通り、私は違います。両性具有ではありません。
ただ、そういう民もおります」
と青年は答えた。
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彼がこの星へやって来たのには、特別な理由があった。
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