「光の天使」 光と影のシンフォニー

夢織人

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マルデク&地球編 第1章 想い遙かに

第6話 帝国軍総統ユリウスの肖像

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「グスタフ殿下、総統が、極秘でお見えになっています」
と、執事はオスカーの父グスタフに伝えた。

 グスタフは
「そうか・・・」
とつぶやくと、総統が待つ客間へと姿を消した。

 そして二人は、どこかへ出掛けてしまったのだが、オスカーはそんな二人をいぶかしく思った。

 オスカーは執事に、
「父が総統とどこへ行ったのかわからないか?」
と、期待はしていなかったが聞いてみた。

 すると執事は驚いたことに、行き先を知っていた。
「たぶんフォン・ブラウン家の霊廟かと・・・」

 驚くオスカーに執事は静かに告げた。

「今日はグスタフさまの妹エリザベートさまの命日です。
 エリザベートさまは、親が決めたマルデク総統ユリウスさまの許嫁(いいなずけ)でしたから・・・」
と言った。

 初めて聞く、話だった。
 そもそもエリザベートという名の叔母がいたことを、オスカーは知らなかった。

「不幸な出来事があって、その出来事のせいでエリザベートさまは心の病を発症し、入水自殺されたのです。
 総統にとっても、フォン・ブラウン家にとっても、自殺はやはり不名誉なことでしたから、一族の歴史からエリザベートさまの記録はすべて消されることとなったのです」

 執事はその遠い記憶を懐かしむように、慈しむように、しかし哀しげに言った。

「エリザベートさまは、それは優しく、美しいかたでした。
 あの方が生きておられたならば、ユリウスさまも、今の恐ろしい、残忍な総統にはならず、もっと違った姿になっていたはずです」
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