155 / 234
マルデク&地球編 第1章 想い遙かに
第2話 オリオンの告白
しおりを挟む
「そなたたちは恋仲で、地球へ逃げてきたのではなかったのか?」
とミカエルはオリオンに尋ねた。
「いいえ、違います。しかし片思いではありましたが、私が秘かに恋慕う方と、マルデクを出るときは一緒でした。
その方との逃避行、それが最初の筋書きでした」
オリオンはアメリアの引き起こしたエルフィン誘拐事件の共犯者として、統治神<シ>の前に引き出され、ミカエルの尋問を受けていた。
「アメリアさまは、何年も前に暴徒に襲われた時、自分を助けてくれた青年をずっと探し続けていました」
オリオンは苦しそうだったが、続けた。
「そして偶然、その方が婚約者オスカーさまの親友で、医官ハンネスであることを知ったのです。
そしてアメリアさまは、ハンネスが今、地球にいることも知りました。
そして半年ほど経った時、オスカーさまに今回の計画を持ちかけてきたのです。
初めの計画は、エルフィンさまを誘拐するような、そのような恐ろしい計画ではなかったのです。
オスカーさまが愛するルカさまを連れだし、地球へ逃げる手助けをする代わりに、医官ハンネスを自分の婚約者としてマルデクへ連れ帰るのを許して、助けてほしいというものでした。
オスカーさまはハンネスさまがマルデクへ来ることは絶対にないと思っていましたが、取りあえずその計画を受け入れたのです。そしてこの地球へ私はやってきました」
と、オリオンは苦痛に、顔をゆがめながらも続けた。
苦しそうにあえぎ、ポツリ、ポツリとそれでも答え続けるオリオンの姿は、見ている方がつらくなるほど、悲しく哀れだった。
「その方は、アメリアさまの兄の妻で、私の上官オスカーさまの恋人でした。色々な事情から、お二人は結婚できなかったのです。
その方を不幸な結婚から救うために、そのかたを地球までお連れし護ることが、オスカーさまから私に与えられた任務でした。
ただその方を、旅の途中で私は見失ってしまったのです」
そう言った後、オリオンはしばらく押し黙っていたのだが、また声を絞り出すようにして、続けた。
「地球へつく寸前に、その方はワープトンネルの中で、突然、消えてしまったのです」
オリオンはなおも、声を絞り出すようにして話し続けた。
「うろたえる私にアメリアさまは言いました。
『こんなことで、うろたえるとは、情けない! まだ確立されていないルートのワープトンネルから侵入したのだ。危険はつきものだ。ルカは後で探せば良いのだ」と・・・。
私もこのままではマルデクへは帰れない、と思い、私とアメリアさまが恋仲で、駆け落ちしてきたことにしたのです」
そして涙を浮かべ、ミカエルに哀願した。
「お願いです。どこかで生きているかもしれない、あの方を、ルカさまを、探して助け出してください」
ルカという名前を聞いて、ミカエルはなぜか急に初恋の相手ルカを思い出し、オリオンの悲しい恋に胸が熱くなった。そしてそれ以上、尋問を続けることができなかった。
とミカエルはオリオンに尋ねた。
「いいえ、違います。しかし片思いではありましたが、私が秘かに恋慕う方と、マルデクを出るときは一緒でした。
その方との逃避行、それが最初の筋書きでした」
オリオンはアメリアの引き起こしたエルフィン誘拐事件の共犯者として、統治神<シ>の前に引き出され、ミカエルの尋問を受けていた。
「アメリアさまは、何年も前に暴徒に襲われた時、自分を助けてくれた青年をずっと探し続けていました」
オリオンは苦しそうだったが、続けた。
「そして偶然、その方が婚約者オスカーさまの親友で、医官ハンネスであることを知ったのです。
そしてアメリアさまは、ハンネスが今、地球にいることも知りました。
そして半年ほど経った時、オスカーさまに今回の計画を持ちかけてきたのです。
初めの計画は、エルフィンさまを誘拐するような、そのような恐ろしい計画ではなかったのです。
オスカーさまが愛するルカさまを連れだし、地球へ逃げる手助けをする代わりに、医官ハンネスを自分の婚約者としてマルデクへ連れ帰るのを許して、助けてほしいというものでした。
オスカーさまはハンネスさまがマルデクへ来ることは絶対にないと思っていましたが、取りあえずその計画を受け入れたのです。そしてこの地球へ私はやってきました」
と、オリオンは苦痛に、顔をゆがめながらも続けた。
苦しそうにあえぎ、ポツリ、ポツリとそれでも答え続けるオリオンの姿は、見ている方がつらくなるほど、悲しく哀れだった。
「その方は、アメリアさまの兄の妻で、私の上官オスカーさまの恋人でした。色々な事情から、お二人は結婚できなかったのです。
その方を不幸な結婚から救うために、そのかたを地球までお連れし護ることが、オスカーさまから私に与えられた任務でした。
ただその方を、旅の途中で私は見失ってしまったのです」
そう言った後、オリオンはしばらく押し黙っていたのだが、また声を絞り出すようにして、続けた。
「地球へつく寸前に、その方はワープトンネルの中で、突然、消えてしまったのです」
オリオンはなおも、声を絞り出すようにして話し続けた。
「うろたえる私にアメリアさまは言いました。
『こんなことで、うろたえるとは、情けない! まだ確立されていないルートのワープトンネルから侵入したのだ。危険はつきものだ。ルカは後で探せば良いのだ」と・・・。
私もこのままではマルデクへは帰れない、と思い、私とアメリアさまが恋仲で、駆け落ちしてきたことにしたのです」
そして涙を浮かべ、ミカエルに哀願した。
「お願いです。どこかで生きているかもしれない、あの方を、ルカさまを、探して助け出してください」
ルカという名前を聞いて、ミカエルはなぜか急に初恋の相手ルカを思い出し、オリオンの悲しい恋に胸が熱くなった。そしてそれ以上、尋問を続けることができなかった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
この欠け落ちた匣庭の中で 終章―Dream of miniature garden―
至堂文斗
ミステリー
ーーこれが、匣の中だったんだ。
二〇一八年の夏。廃墟となった満生台を訪れたのは二人の若者。
彼らもまた、かつてGHOSTの研究によって運命を弄ばれた者たちだった。
信号領域の研究が展開され、そして壊れたニュータウン。終焉を迎えた現実と、終焉を拒絶する仮想。
歪なる領域に足を踏み入れる二人は、果たして何か一つでも、その世界に救いを与えることが出来るだろうか。
幻想、幻影、エンケージ。
魂魄、領域、人類の進化。
802部隊、九命会、レッドアイ・オペレーション……。
さあ、あの光の先へと進んでいこう。たとえもう二度と時計の針が巻き戻らないとしても。
私たちの駆け抜けたあの日々は確かに満ち足りていたと、懐かしめるようになるはずだから。
ビジュアル系弁護士✨💕シンゴ✨✨💕『ラストソングは歌えない』✨💕 鳴かぬなら裁いてくれようホトトギス✨💕天に代わってお前の悪事を
オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
ミステリー
『鳴かぬなら✨裁いてくれようホトトギス✨
天に代わって、お前の罪を❗❗』
オレ、シンゴはビジュアル系バンド『ワイルド プリンス』のギター&ボーカルをしながら弁護士をしていた。
親友のギタリスト・ユウキが謎の変死を遂げ、オレは彼の恋人を突き止めようと躍起になった。
ゆく先で青い髪の美少女が密室で殺されかけ、謎の事件が巻き起こる。
ついにユウキの幻しの恋人を見つけるが……。
ビジュアル系弁護士シンゴが追い詰める❗❗
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。


【完結】人形と皇子
かずえ
BL
ずっと戦争状態にあった帝国と皇国の最後の戦いの日、帝国の戦闘人形が一体、重症を負って皇国の皇子に拾われた。
戦うことしか教えられていなかった戦闘人形が、人としての名前を貰い、人として扱われて、皇子と幸せに暮らすお話。
性表現がある話には * マークを付けています。苦手な方は飛ばしてください。
第11回BL小説大賞で奨励賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる