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マルデク&地球編 第1章 想い遙かに
第2話 オリオンの告白
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「そなたたちは恋仲で、地球へ逃げてきたのではなかったのか?」
とミカエルはオリオンに尋ねた。
「いいえ、違います。しかし片思いではありましたが、私が秘かに恋慕う方と、マルデクを出るときは一緒でした。
その方との逃避行、それが最初の筋書きでした」
オリオンはアメリアの引き起こしたエルフィン誘拐事件の共犯者として、統治神<シ>の前に引き出され、ミカエルの尋問を受けていた。
「アメリアさまは、何年も前に暴徒に襲われた時、自分を助けてくれた青年をずっと探し続けていました」
オリオンは苦しそうだったが、続けた。
「そして偶然、その方が婚約者オスカーさまの親友で、医官ハンネスであることを知ったのです。
そしてアメリアさまは、ハンネスが今、地球にいることも知りました。
そして半年ほど経った時、オスカーさまに今回の計画を持ちかけてきたのです。
初めの計画は、エルフィンさまを誘拐するような、そのような恐ろしい計画ではなかったのです。
オスカーさまが愛するルカさまを連れだし、地球へ逃げる手助けをする代わりに、医官ハンネスを自分の婚約者としてマルデクへ連れ帰るのを許して、助けてほしいというものでした。
オスカーさまはハンネスさまがマルデクへ来ることは絶対にないと思っていましたが、取りあえずその計画を受け入れたのです。そしてこの地球へ私はやってきました」
と、オリオンは苦痛に、顔をゆがめながらも続けた。
苦しそうにあえぎ、ポツリ、ポツリとそれでも答え続けるオリオンの姿は、見ている方がつらくなるほど、悲しく哀れだった。
「その方は、アメリアさまの兄の妻で、私の上官オスカーさまの恋人でした。色々な事情から、お二人は結婚できなかったのです。
その方を不幸な結婚から救うために、そのかたを地球までお連れし護ることが、オスカーさまから私に与えられた任務でした。
ただその方を、旅の途中で私は見失ってしまったのです」
そう言った後、オリオンはしばらく押し黙っていたのだが、また声を絞り出すようにして、続けた。
「地球へつく寸前に、その方はワープトンネルの中で、突然、消えてしまったのです」
オリオンはなおも、声を絞り出すようにして話し続けた。
「うろたえる私にアメリアさまは言いました。
『こんなことで、うろたえるとは、情けない! まだ確立されていないルートのワープトンネルから侵入したのだ。危険はつきものだ。ルカは後で探せば良いのだ」と・・・。
私もこのままではマルデクへは帰れない、と思い、私とアメリアさまが恋仲で、駆け落ちしてきたことにしたのです」
そして涙を浮かべ、ミカエルに哀願した。
「お願いです。どこかで生きているかもしれない、あの方を、ルカさまを、探して助け出してください」
ルカという名前を聞いて、ミカエルはなぜか急に初恋の相手ルカを思い出し、オリオンの悲しい恋に胸が熱くなった。そしてそれ以上、尋問を続けることができなかった。
とミカエルはオリオンに尋ねた。
「いいえ、違います。しかし片思いではありましたが、私が秘かに恋慕う方と、マルデクを出るときは一緒でした。
その方との逃避行、それが最初の筋書きでした」
オリオンはアメリアの引き起こしたエルフィン誘拐事件の共犯者として、統治神<シ>の前に引き出され、ミカエルの尋問を受けていた。
「アメリアさまは、何年も前に暴徒に襲われた時、自分を助けてくれた青年をずっと探し続けていました」
オリオンは苦しそうだったが、続けた。
「そして偶然、その方が婚約者オスカーさまの親友で、医官ハンネスであることを知ったのです。
そしてアメリアさまは、ハンネスが今、地球にいることも知りました。
そして半年ほど経った時、オスカーさまに今回の計画を持ちかけてきたのです。
初めの計画は、エルフィンさまを誘拐するような、そのような恐ろしい計画ではなかったのです。
オスカーさまが愛するルカさまを連れだし、地球へ逃げる手助けをする代わりに、医官ハンネスを自分の婚約者としてマルデクへ連れ帰るのを許して、助けてほしいというものでした。
オスカーさまはハンネスさまがマルデクへ来ることは絶対にないと思っていましたが、取りあえずその計画を受け入れたのです。そしてこの地球へ私はやってきました」
と、オリオンは苦痛に、顔をゆがめながらも続けた。
苦しそうにあえぎ、ポツリ、ポツリとそれでも答え続けるオリオンの姿は、見ている方がつらくなるほど、悲しく哀れだった。
「その方は、アメリアさまの兄の妻で、私の上官オスカーさまの恋人でした。色々な事情から、お二人は結婚できなかったのです。
その方を不幸な結婚から救うために、そのかたを地球までお連れし護ることが、オスカーさまから私に与えられた任務でした。
ただその方を、旅の途中で私は見失ってしまったのです」
そう言った後、オリオンはしばらく押し黙っていたのだが、また声を絞り出すようにして、続けた。
「地球へつく寸前に、その方はワープトンネルの中で、突然、消えてしまったのです」
オリオンはなおも、声を絞り出すようにして話し続けた。
「うろたえる私にアメリアさまは言いました。
『こんなことで、うろたえるとは、情けない! まだ確立されていないルートのワープトンネルから侵入したのだ。危険はつきものだ。ルカは後で探せば良いのだ」と・・・。
私もこのままではマルデクへは帰れない、と思い、私とアメリアさまが恋仲で、駆け落ちしてきたことにしたのです」
そして涙を浮かべ、ミカエルに哀願した。
「お願いです。どこかで生きているかもしれない、あの方を、ルカさまを、探して助け出してください」
ルカという名前を聞いて、ミカエルはなぜか急に初恋の相手ルカを思い出し、オリオンの悲しい恋に胸が熱くなった。そしてそれ以上、尋問を続けることができなかった。
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