134 / 234
地球編 第3章 新興宗教「光の泉」と光の戦士たち
第14話 ハンネスも知らない、ハンネスの秘密
しおりを挟む
ある時、エルフィンはシャンバラ出身の医官ジャド師のもとを訪れ、ハンネスのことで、ずっと気になっていたことを尋ねた。
「ジャド様、お尋ねしたいことがあります」
「何かね?」
「ハンネスのことです。ハンネスは子供のころからシャンバラで育ったと聞いております。シャンバラは女人禁制です。子供はいないはずなのに、赤子のころからシャンバラで育ったというのは、どう言うことなのですか?」
と、エルフィンはジャド師に問うた。
「ハンネスは赤子のころに、両親を失ったからです」
と、ジャド師は答えた。
「シャンバラは、特殊な能力を持った選ばれた者しか辿りつけ無い場所で、それ以外の者が入国しようとしても、入り口の扉を通ることが出来ず、死んでしまう場所だったと聞いております。
赤子のハンネスがその扉をなにゆえ通り抜けることができて、シャンバラへ入国できたのか、不思議でなりません」
と、またエルフィンはジャド師に問うた。
「それはハンネスが特殊な遺伝子を持った赤子だったからです」
と、ジャド師は静かに答えた。
「ハンネスの祖父に当たる者は、シャンバラの優秀な武官だったのですが、任務で訪れた星でシャンバラの禁を犯し、その星の女性と恋に落ちてしまったのです」
ジャド師は、遠くを見つめるような目をして、懐かしそうに何かを思い出していた。
そしてしばらく無言でその余韻に浸っていたのだが、やがて正気に戻りジャド師は続けた。
「その女性はその星の名門貴族の跡取り娘で、王を何人も輩出している名家の令嬢でした。
紆余曲折を経たのち、ふたりは結婚し子供にも恵まれたのですが、幸せはそう長くは続かなかったのです。
ある時、武官は密告により、謀反罪で逮捕されたのです。
シャンバラ出身であることを武官は隠していたので、身の潔白を晴らすことが出来ませんでした。
特殊な任務に就いていた武官だったため、シャンバラも動くことが出来なかったのです。
そして武官は処刑されてしまったのです」
ジャド師はエルフィンにそう言ったのち、哀しそうな表情を浮かべ、またしばらくのあいだ無言だった。
しかしまた気を取りなおし、なおも続けた。
「結局、その名家は取り潰しとなり、娘は子供と共に、夫を追う決意をして、それを実行したのです。しかし子供だけが生き残りました。
その子供が、ハンネスの父親なのです」
と、言った。
「シャンバラはその子供を、ずっと見守っていました。
そしてシャンバラへ迎え入れる準備が出来たとき、迎え入れたわけですが、その息子もまた、秘密の任務中に美しい娘と恋に落ち、禁を犯してしまったのです。
ハンネスの母親は、結婚前にハンネスを身もごったことを内緒にしていたのですが、あるとき、その星の為政者になる予定であった兄に知られてしまったのです。
そして城の奥に幽閉されてしまった。
そしてハンネスを産むと同時に死んでしまったのです。
娘の乳母はそのすべてを知っていました。
そしてその赤子をなんとか城から連れ出し、父親の元へ届けたのですが、それが娘の兄の罠だったのです、
娘の兄は、妹の恋人が誰か知らなかったのです。
乳母の行動によって、相手が誰であるかを知った娘の兄は、ハンネスの父親を謀略で殺害しました。
我々、シャンバラのものがハンネスの父親のもとへたどり着いた時には、ハンネスの父親は息も絶え絶えの状態でした。その瀕死の状態のなかで、生まれたばかりのハンネスを隠した場所を我々に伝えました。
我々はハンネスを見つけだし、赤子のハンネスがシャンバラの門を通り抜けることができるか不安だったのですが、シャンバラへ向かったのです。
そして私が思った通り、赤子のハンネスはシャンバラの入り口である扉を、通り抜けることが出来ました。
それは彼が、特別な子供だということを、意味していました。
“滅びの子”、そして“救いの子”、そのどちらなのかは分かりませんが、特殊な運命を背負って生まれてきたことは、事実です」
驚くエルフィンに、ジャド師は言った。
「あなたはハンネスにとって、とても大切な人のようだ。
だから、秘密をあえて打ち明けました」
そして続けた。
「あの子を、怖がらないでほしい。ひとりだけでは、運命は動かないのです」
とジャド師は言った。
「私はもうすぐ、この世を去らねばなりません。
私の亡きあと、あの子を助けてほしい。
導いてほしいのです」
「あの子は、シャンバラが滅んだのは、長い間、自分のせいだと思っていました。
でも、決してあの子だけのせいではないのです」
そしてジャド師は言った。
「“滅びの子”はハンネス以外にも、生まれているはずなのです。
その子供たちに、この世界の者たちがどんな扱いをしたかによって、結末も変わるのです」
と、ジャド師はエルフィンに言った。
「ジャド様、お尋ねしたいことがあります」
「何かね?」
「ハンネスのことです。ハンネスは子供のころからシャンバラで育ったと聞いております。シャンバラは女人禁制です。子供はいないはずなのに、赤子のころからシャンバラで育ったというのは、どう言うことなのですか?」
と、エルフィンはジャド師に問うた。
「ハンネスは赤子のころに、両親を失ったからです」
と、ジャド師は答えた。
「シャンバラは、特殊な能力を持った選ばれた者しか辿りつけ無い場所で、それ以外の者が入国しようとしても、入り口の扉を通ることが出来ず、死んでしまう場所だったと聞いております。
赤子のハンネスがその扉をなにゆえ通り抜けることができて、シャンバラへ入国できたのか、不思議でなりません」
と、またエルフィンはジャド師に問うた。
「それはハンネスが特殊な遺伝子を持った赤子だったからです」
と、ジャド師は静かに答えた。
「ハンネスの祖父に当たる者は、シャンバラの優秀な武官だったのですが、任務で訪れた星でシャンバラの禁を犯し、その星の女性と恋に落ちてしまったのです」
ジャド師は、遠くを見つめるような目をして、懐かしそうに何かを思い出していた。
そしてしばらく無言でその余韻に浸っていたのだが、やがて正気に戻りジャド師は続けた。
「その女性はその星の名門貴族の跡取り娘で、王を何人も輩出している名家の令嬢でした。
紆余曲折を経たのち、ふたりは結婚し子供にも恵まれたのですが、幸せはそう長くは続かなかったのです。
ある時、武官は密告により、謀反罪で逮捕されたのです。
シャンバラ出身であることを武官は隠していたので、身の潔白を晴らすことが出来ませんでした。
特殊な任務に就いていた武官だったため、シャンバラも動くことが出来なかったのです。
そして武官は処刑されてしまったのです」
ジャド師はエルフィンにそう言ったのち、哀しそうな表情を浮かべ、またしばらくのあいだ無言だった。
しかしまた気を取りなおし、なおも続けた。
「結局、その名家は取り潰しとなり、娘は子供と共に、夫を追う決意をして、それを実行したのです。しかし子供だけが生き残りました。
その子供が、ハンネスの父親なのです」
と、言った。
「シャンバラはその子供を、ずっと見守っていました。
そしてシャンバラへ迎え入れる準備が出来たとき、迎え入れたわけですが、その息子もまた、秘密の任務中に美しい娘と恋に落ち、禁を犯してしまったのです。
ハンネスの母親は、結婚前にハンネスを身もごったことを内緒にしていたのですが、あるとき、その星の為政者になる予定であった兄に知られてしまったのです。
そして城の奥に幽閉されてしまった。
そしてハンネスを産むと同時に死んでしまったのです。
娘の乳母はそのすべてを知っていました。
そしてその赤子をなんとか城から連れ出し、父親の元へ届けたのですが、それが娘の兄の罠だったのです、
娘の兄は、妹の恋人が誰か知らなかったのです。
乳母の行動によって、相手が誰であるかを知った娘の兄は、ハンネスの父親を謀略で殺害しました。
我々、シャンバラのものがハンネスの父親のもとへたどり着いた時には、ハンネスの父親は息も絶え絶えの状態でした。その瀕死の状態のなかで、生まれたばかりのハンネスを隠した場所を我々に伝えました。
我々はハンネスを見つけだし、赤子のハンネスがシャンバラの門を通り抜けることができるか不安だったのですが、シャンバラへ向かったのです。
そして私が思った通り、赤子のハンネスはシャンバラの入り口である扉を、通り抜けることが出来ました。
それは彼が、特別な子供だということを、意味していました。
“滅びの子”、そして“救いの子”、そのどちらなのかは分かりませんが、特殊な運命を背負って生まれてきたことは、事実です」
驚くエルフィンに、ジャド師は言った。
「あなたはハンネスにとって、とても大切な人のようだ。
だから、秘密をあえて打ち明けました」
そして続けた。
「あの子を、怖がらないでほしい。ひとりだけでは、運命は動かないのです」
とジャド師は言った。
「私はもうすぐ、この世を去らねばなりません。
私の亡きあと、あの子を助けてほしい。
導いてほしいのです」
「あの子は、シャンバラが滅んだのは、長い間、自分のせいだと思っていました。
でも、決してあの子だけのせいではないのです」
そしてジャド師は言った。
「“滅びの子”はハンネス以外にも、生まれているはずなのです。
その子供たちに、この世界の者たちがどんな扱いをしたかによって、結末も変わるのです」
と、ジャド師はエルフィンに言った。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

幼なじみは謎が解けない
壱ノ瀬和実
ミステリー
謎を解きたい!でも解けない!そんな幼なじみ水都恋(みとれん)と、いつも付き合わされる綾里七瀬(あやさとななせ)。
謎が解けない幼なじみによって、七瀬は今日も日常の謎解きに巻き込まれる!

戦いに行ったはずの騎士様は、女騎士を連れて帰ってきました。
新野乃花(大舟)
恋愛
健気にカサルの帰りを待ち続けていた、彼の婚約者のルミア。しかし帰還の日にカサルの隣にいたのは、同じ騎士であるミーナだった。親し気な様子をアピールしてくるミーナに加え、カサルもまた満更でもないような様子を見せ、ついにカサルはルミアに婚約破棄を告げてしまう。これで騎士としての真実の愛を手にすることができたと豪語するカサルであったものの、彼はその後すぐにあるきっかけから今夜破棄を大きく後悔することとなり…。
公主の嫁入り
マチバリ
キャラ文芸
宗国の公主である雪花は、後宮の最奥にある月花宮で息をひそめて生きていた。母の身分が低かったことを理由に他の妃たちから冷遇されていたからだ。
17歳になったある日、皇帝となった兄の命により龍の血を継ぐという道士の元へ降嫁する事が決まる。政略結婚の道具として役に立ちたいと願いつつも怯えていた雪花だったが、顔を合わせた道士の焔蓮は優しい人で……ぎこちなくも心を通わせ、夫婦となっていく二人の物語。
中華習作かつ色々ふんわりなファンタジー設定です。
【なろう430万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ
海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。
衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。
絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。
ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。
大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。
はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?
小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。
カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。

完結 王室スキャンダル 巻き込まれた伯爵令嬢は推理するし恋もする!
音爽(ネソウ)
ミステリー
王家主催の夜会にて宴もたけなわとなった頃、一騒動が起きた。「ボニート王女が倒られた」と大騒ぎになった。控室は騒ぎを聞きつけた貴族達が群がり、騎士達と犇めきあう。現場を荒らされた騎士隊長は激怒する。
ところが肝心の姫がいないことに気が付く……
一体王女は何処へ消えたのか。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる