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地球編 第3章 新興宗教「光の泉」と光の戦士たち
第14話 ハンネスも知らない、ハンネスの秘密
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ある時、エルフィンはシャンバラ出身の医官ジャド師のもとを訪れ、ハンネスのことで、ずっと気になっていたことを尋ねた。
「ジャド様、お尋ねしたいことがあります」
「何かね?」
「ハンネスのことです。ハンネスは子供のころからシャンバラで育ったと聞いております。シャンバラは女人禁制です。子供はいないはずなのに、赤子のころからシャンバラで育ったというのは、どう言うことなのですか?」
と、エルフィンはジャド師に問うた。
「ハンネスは赤子のころに、両親を失ったからです」
と、ジャド師は答えた。
「シャンバラは、特殊な能力を持った選ばれた者しか辿りつけ無い場所で、それ以外の者が入国しようとしても、入り口の扉を通ることが出来ず、死んでしまう場所だったと聞いております。
赤子のハンネスがその扉をなにゆえ通り抜けることができて、シャンバラへ入国できたのか、不思議でなりません」
と、またエルフィンはジャド師に問うた。
「それはハンネスが特殊な遺伝子を持った赤子だったからです」
と、ジャド師は静かに答えた。
「ハンネスの祖父に当たる者は、シャンバラの優秀な武官だったのですが、任務で訪れた星でシャンバラの禁を犯し、その星の女性と恋に落ちてしまったのです」
ジャド師は、遠くを見つめるような目をして、懐かしそうに何かを思い出していた。
そしてしばらく無言でその余韻に浸っていたのだが、やがて正気に戻りジャド師は続けた。
「その女性はその星の名門貴族の跡取り娘で、王を何人も輩出している名家の令嬢でした。
紆余曲折を経たのち、ふたりは結婚し子供にも恵まれたのですが、幸せはそう長くは続かなかったのです。
ある時、武官は密告により、謀反罪で逮捕されたのです。
シャンバラ出身であることを武官は隠していたので、身の潔白を晴らすことが出来ませんでした。
特殊な任務に就いていた武官だったため、シャンバラも動くことが出来なかったのです。
そして武官は処刑されてしまったのです」
ジャド師はエルフィンにそう言ったのち、哀しそうな表情を浮かべ、またしばらくのあいだ無言だった。
しかしまた気を取りなおし、なおも続けた。
「結局、その名家は取り潰しとなり、娘は子供と共に、夫を追う決意をして、それを実行したのです。しかし子供だけが生き残りました。
その子供が、ハンネスの父親なのです」
と、言った。
「シャンバラはその子供を、ずっと見守っていました。
そしてシャンバラへ迎え入れる準備が出来たとき、迎え入れたわけですが、その息子もまた、秘密の任務中に美しい娘と恋に落ち、禁を犯してしまったのです。
ハンネスの母親は、結婚前にハンネスを身もごったことを内緒にしていたのですが、あるとき、その星の為政者になる予定であった兄に知られてしまったのです。
そして城の奥に幽閉されてしまった。
そしてハンネスを産むと同時に死んでしまったのです。
娘の乳母はそのすべてを知っていました。
そしてその赤子をなんとか城から連れ出し、父親の元へ届けたのですが、それが娘の兄の罠だったのです、
娘の兄は、妹の恋人が誰か知らなかったのです。
乳母の行動によって、相手が誰であるかを知った娘の兄は、ハンネスの父親を謀略で殺害しました。
我々、シャンバラのものがハンネスの父親のもとへたどり着いた時には、ハンネスの父親は息も絶え絶えの状態でした。その瀕死の状態のなかで、生まれたばかりのハンネスを隠した場所を我々に伝えました。
我々はハンネスを見つけだし、赤子のハンネスがシャンバラの門を通り抜けることができるか不安だったのですが、シャンバラへ向かったのです。
そして私が思った通り、赤子のハンネスはシャンバラの入り口である扉を、通り抜けることが出来ました。
それは彼が、特別な子供だということを、意味していました。
“滅びの子”、そして“救いの子”、そのどちらなのかは分かりませんが、特殊な運命を背負って生まれてきたことは、事実です」
驚くエルフィンに、ジャド師は言った。
「あなたはハンネスにとって、とても大切な人のようだ。
だから、秘密をあえて打ち明けました」
そして続けた。
「あの子を、怖がらないでほしい。ひとりだけでは、運命は動かないのです」
とジャド師は言った。
「私はもうすぐ、この世を去らねばなりません。
私の亡きあと、あの子を助けてほしい。
導いてほしいのです」
「あの子は、シャンバラが滅んだのは、長い間、自分のせいだと思っていました。
でも、決してあの子だけのせいではないのです」
そしてジャド師は言った。
「“滅びの子”はハンネス以外にも、生まれているはずなのです。
その子供たちに、この世界の者たちがどんな扱いをしたかによって、結末も変わるのです」
と、ジャド師はエルフィンに言った。
「ジャド様、お尋ねしたいことがあります」
「何かね?」
「ハンネスのことです。ハンネスは子供のころからシャンバラで育ったと聞いております。シャンバラは女人禁制です。子供はいないはずなのに、赤子のころからシャンバラで育ったというのは、どう言うことなのですか?」
と、エルフィンはジャド師に問うた。
「ハンネスは赤子のころに、両親を失ったからです」
と、ジャド師は答えた。
「シャンバラは、特殊な能力を持った選ばれた者しか辿りつけ無い場所で、それ以外の者が入国しようとしても、入り口の扉を通ることが出来ず、死んでしまう場所だったと聞いております。
赤子のハンネスがその扉をなにゆえ通り抜けることができて、シャンバラへ入国できたのか、不思議でなりません」
と、またエルフィンはジャド師に問うた。
「それはハンネスが特殊な遺伝子を持った赤子だったからです」
と、ジャド師は静かに答えた。
「ハンネスの祖父に当たる者は、シャンバラの優秀な武官だったのですが、任務で訪れた星でシャンバラの禁を犯し、その星の女性と恋に落ちてしまったのです」
ジャド師は、遠くを見つめるような目をして、懐かしそうに何かを思い出していた。
そしてしばらく無言でその余韻に浸っていたのだが、やがて正気に戻りジャド師は続けた。
「その女性はその星の名門貴族の跡取り娘で、王を何人も輩出している名家の令嬢でした。
紆余曲折を経たのち、ふたりは結婚し子供にも恵まれたのですが、幸せはそう長くは続かなかったのです。
ある時、武官は密告により、謀反罪で逮捕されたのです。
シャンバラ出身であることを武官は隠していたので、身の潔白を晴らすことが出来ませんでした。
特殊な任務に就いていた武官だったため、シャンバラも動くことが出来なかったのです。
そして武官は処刑されてしまったのです」
ジャド師はエルフィンにそう言ったのち、哀しそうな表情を浮かべ、またしばらくのあいだ無言だった。
しかしまた気を取りなおし、なおも続けた。
「結局、その名家は取り潰しとなり、娘は子供と共に、夫を追う決意をして、それを実行したのです。しかし子供だけが生き残りました。
その子供が、ハンネスの父親なのです」
と、言った。
「シャンバラはその子供を、ずっと見守っていました。
そしてシャンバラへ迎え入れる準備が出来たとき、迎え入れたわけですが、その息子もまた、秘密の任務中に美しい娘と恋に落ち、禁を犯してしまったのです。
ハンネスの母親は、結婚前にハンネスを身もごったことを内緒にしていたのですが、あるとき、その星の為政者になる予定であった兄に知られてしまったのです。
そして城の奥に幽閉されてしまった。
そしてハンネスを産むと同時に死んでしまったのです。
娘の乳母はそのすべてを知っていました。
そしてその赤子をなんとか城から連れ出し、父親の元へ届けたのですが、それが娘の兄の罠だったのです、
娘の兄は、妹の恋人が誰か知らなかったのです。
乳母の行動によって、相手が誰であるかを知った娘の兄は、ハンネスの父親を謀略で殺害しました。
我々、シャンバラのものがハンネスの父親のもとへたどり着いた時には、ハンネスの父親は息も絶え絶えの状態でした。その瀕死の状態のなかで、生まれたばかりのハンネスを隠した場所を我々に伝えました。
我々はハンネスを見つけだし、赤子のハンネスがシャンバラの門を通り抜けることができるか不安だったのですが、シャンバラへ向かったのです。
そして私が思った通り、赤子のハンネスはシャンバラの入り口である扉を、通り抜けることが出来ました。
それは彼が、特別な子供だということを、意味していました。
“滅びの子”、そして“救いの子”、そのどちらなのかは分かりませんが、特殊な運命を背負って生まれてきたことは、事実です」
驚くエルフィンに、ジャド師は言った。
「あなたはハンネスにとって、とても大切な人のようだ。
だから、秘密をあえて打ち明けました」
そして続けた。
「あの子を、怖がらないでほしい。ひとりだけでは、運命は動かないのです」
とジャド師は言った。
「私はもうすぐ、この世を去らねばなりません。
私の亡きあと、あの子を助けてほしい。
導いてほしいのです」
「あの子は、シャンバラが滅んだのは、長い間、自分のせいだと思っていました。
でも、決してあの子だけのせいではないのです」
そしてジャド師は言った。
「“滅びの子”はハンネス以外にも、生まれているはずなのです。
その子供たちに、この世界の者たちがどんな扱いをしたかによって、結末も変わるのです」
と、ジャド師はエルフィンに言った。
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