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地球編 第3章 新興宗教「光の泉」と光の戦士たち
第2話 君のこと、何と呼べばいいのかな?
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「君のこと、なんと呼べばいいのかな?」
とミカエルはエルフィンに聞いた。
「君の母上は、統治神<シ>の妹ぎみだと、ハンネス医官から聞いた。
統治神<シ>は我々の主だから、そう無下には扱えない。
しかし君は死んだことになっている前アトランティス王の息子でもある」
「ただのエルフィンでいいよ。
帝国ではそう呼ばれることが多かった」
エルフィンはどう呼ばれようと、どうでも良かった。
「では、エルフィンと呼ぼう」
とミカエルはエルフィンに言った。
「君を見ていると、奇妙な気持ちになる。
子供のころの友だちに君はとても良く似ているんだ」
ミカエルは執務室の窓から、外を見た。数人の子どもたちが草むらで遊んでいた。ミカエルはそれをしばらく黙って見ていたのだが、突然、振り返ってエルフィンに言った。
「驚くなよ。名前まで一緒なんだ」
エルフィンは少し首をかしげながら、ミカエルの顔を見た。
「友だちには弟がいた。
でもその子は、いつもなぜか、女の子の格好をしていた。
すごくかわいい子だったので、僕は女の子だとばかり思っていた。
僕だけじゃなく、周囲の者は皆、その子は女の子だとばかりずっと思っていた。
それであるときその子に、花束を贈って告白したんだ。
好きだって・・・」
「それで?」
「思いっきりフラれた。
僕は男だから、君とは結婚できない・・・
と言われて、花束を突っ返された」
「僕にも弟がいたけど、その女の子のような男の子の名前はなんていうんだい?」
とエルフィンは笑いながらミカエルに聞いた。
「ルカだ」
「ルカ?」
「そう、ルカ」
エルフィンはその時、初めて、ミカエルが子供のころよく遊んだ近所の男の子であることに気づいたのだった。
「君とルカは、15年前、死んだのだとばかり思っていたよ」
とミカエルはエルフィンに言った。
「いつから、僕だと気づいていたんだ?」
「医官ハンネスが、君は統治神<シ>の妹ヨシュアさまのお子だと言ったときに、気づいた」
「統治神<シ>に仕えるようになってからだが、君たちの母上が統治神<シ>の妹ヨシュアさまだということを、偶然、知ってな」
「とにかく、驚いた」
そう言ったのち、ミカエルはエルフィンの両肩に手をのせ、笑顔でこう言った。
「とにかくまた君に会えて、嬉しいよ、エルフィン」
そして二人は、旧友にあえた喜びを、再会の抱擁で分かちあった。
そしてしばらく間をおいてから、ミカエルは少し躊躇しながら、あることをエルフィンに尋ねた。
「ところでルカは、今、どうしている?
あの時、ルカはたぶんまだ、未分化だったはずだ。
僕は女性に変性することを願っていたのだが・・・」
また笑いながら、ミカエルはエルフィンに懐かしそうにそう言った。
ミカエルはけっこう、真剣な目をしていた。
エルフィンは思わず、笑ってしまった。
「すまない。君があんまり、真剣そうな表情をするから、おかしくて」
「笑うことはないだろう。
あの時、けっこう傷ついたんだ。
挽回のチャンスがほしくてさ・・・」
「残念ながら、その質問には、答えられない。
15年前から、ルカとは会っていないんだ」
エルフィンは素直に本当のことを言った。
「逃げる途中でルカと、離れ離れになってしまい、それ以後、僕もルカとは会えないでいる。ずっと探してはいるんだが、まだ見つからない・・・」
その答えに、ミカエルは少し落胆した。
「しかし、それはさておき、さっきのジュリアという女性は、何なんだ?
お前の婚約者なんだろう?」
「いや、違う。ガールフレンドだ」
「彼女はそう思ってないぞ」
とエルフィンはミカエルに言った。
「ルカが生きていて、女性に変性していたとしても、そんな不実な男に、ルカはやれない。兄として断る」
「おい、おい、エルフィン。
俺とお前の仲だろう?
子どもの頃の親友の恋路を邪魔する気か?」
「だったら彼女のところへ、私を連れてゆかなければ良かったんだ」
とミカエルはエルフィンに聞いた。
「君の母上は、統治神<シ>の妹ぎみだと、ハンネス医官から聞いた。
統治神<シ>は我々の主だから、そう無下には扱えない。
しかし君は死んだことになっている前アトランティス王の息子でもある」
「ただのエルフィンでいいよ。
帝国ではそう呼ばれることが多かった」
エルフィンはどう呼ばれようと、どうでも良かった。
「では、エルフィンと呼ぼう」
とミカエルはエルフィンに言った。
「君を見ていると、奇妙な気持ちになる。
子供のころの友だちに君はとても良く似ているんだ」
ミカエルは執務室の窓から、外を見た。数人の子どもたちが草むらで遊んでいた。ミカエルはそれをしばらく黙って見ていたのだが、突然、振り返ってエルフィンに言った。
「驚くなよ。名前まで一緒なんだ」
エルフィンは少し首をかしげながら、ミカエルの顔を見た。
「友だちには弟がいた。
でもその子は、いつもなぜか、女の子の格好をしていた。
すごくかわいい子だったので、僕は女の子だとばかり思っていた。
僕だけじゃなく、周囲の者は皆、その子は女の子だとばかりずっと思っていた。
それであるときその子に、花束を贈って告白したんだ。
好きだって・・・」
「それで?」
「思いっきりフラれた。
僕は男だから、君とは結婚できない・・・
と言われて、花束を突っ返された」
「僕にも弟がいたけど、その女の子のような男の子の名前はなんていうんだい?」
とエルフィンは笑いながらミカエルに聞いた。
「ルカだ」
「ルカ?」
「そう、ルカ」
エルフィンはその時、初めて、ミカエルが子供のころよく遊んだ近所の男の子であることに気づいたのだった。
「君とルカは、15年前、死んだのだとばかり思っていたよ」
とミカエルはエルフィンに言った。
「いつから、僕だと気づいていたんだ?」
「医官ハンネスが、君は統治神<シ>の妹ヨシュアさまのお子だと言ったときに、気づいた」
「統治神<シ>に仕えるようになってからだが、君たちの母上が統治神<シ>の妹ヨシュアさまだということを、偶然、知ってな」
「とにかく、驚いた」
そう言ったのち、ミカエルはエルフィンの両肩に手をのせ、笑顔でこう言った。
「とにかくまた君に会えて、嬉しいよ、エルフィン」
そして二人は、旧友にあえた喜びを、再会の抱擁で分かちあった。
そしてしばらく間をおいてから、ミカエルは少し躊躇しながら、あることをエルフィンに尋ねた。
「ところでルカは、今、どうしている?
あの時、ルカはたぶんまだ、未分化だったはずだ。
僕は女性に変性することを願っていたのだが・・・」
また笑いながら、ミカエルはエルフィンに懐かしそうにそう言った。
ミカエルはけっこう、真剣な目をしていた。
エルフィンは思わず、笑ってしまった。
「すまない。君があんまり、真剣そうな表情をするから、おかしくて」
「笑うことはないだろう。
あの時、けっこう傷ついたんだ。
挽回のチャンスがほしくてさ・・・」
「残念ながら、その質問には、答えられない。
15年前から、ルカとは会っていないんだ」
エルフィンは素直に本当のことを言った。
「逃げる途中でルカと、離れ離れになってしまい、それ以後、僕もルカとは会えないでいる。ずっと探してはいるんだが、まだ見つからない・・・」
その答えに、ミカエルは少し落胆した。
「しかし、それはさておき、さっきのジュリアという女性は、何なんだ?
お前の婚約者なんだろう?」
「いや、違う。ガールフレンドだ」
「彼女はそう思ってないぞ」
とエルフィンはミカエルに言った。
「ルカが生きていて、女性に変性していたとしても、そんな不実な男に、ルカはやれない。兄として断る」
「おい、おい、エルフィン。
俺とお前の仲だろう?
子どもの頃の親友の恋路を邪魔する気か?」
「だったら彼女のところへ、私を連れてゆかなければ良かったんだ」
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