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地球編 第2章 武官オリオンとアメリア
第10話 ハンネスと王女アメリアの語らう姿にジャド師は不吉な予感を感じた。
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ジャド師は、研究で忙しく、最近は医局をハンネスにまかて、研究室から出てくることも少なくなっていた。
しかし先日、ジャド師のもとを訪れ、その悩みを打ち明けた若者のことが気になり、久しぶりに研究室から外へ出た。
そして若者を探して、教団内を見て回っていたとき、偶然、ハンネスとアメリアの姿を見かけた。そしてアメリアのハンネスを見つめるその様子に、ジャド師はなぜか少なからぬ不安を感じた。
アメリアが去ったのち、ジャド師はハンネスのもとへ行き、
「ずいぶん親しげに話していたが、あの娘はお前の知り合いか?」
と聞いた。
「ああ、アメリアですか? 最近、マルデクからこの地球へ私とエルフィンのように逃げてきた、武官オリオンの恋人です」
と言った。
「武官オリオンの恋人?」
「はい。彼女には親が決めた婚約者がいて、それで地球へ逃げてきたのです」
ジャド師はオリオンの話から、オリオンとアメリアが実際は、恋人ではないことにすぐに気づいた。相談に来た若者は、旅の途中で見失った仲間を探していた。若者はその旅の連れをたぶん愛していた。
では先ほど見かけたアメリアという女性は、なぜここにいる?
「彼女はマルデク王朝の血を引いていて、プリンセスの称号を持つそうです。恋人のオリオンは優秀な武官だが、貴族ではなく平民出身だった。だからその恋は認められず、逃げてきたようなのです」
ジャド師の不吉な予感は、この時、完全に確信に変わった。
『あの娘は、なぜだかハンネスを以前から知っている。
そしてこの星までハンネスに会いにきたのだ』
と、口には出さなかったが、心の中でつぶやいた。
しかし先日、ジャド師のもとを訪れ、その悩みを打ち明けた若者のことが気になり、久しぶりに研究室から外へ出た。
そして若者を探して、教団内を見て回っていたとき、偶然、ハンネスとアメリアの姿を見かけた。そしてアメリアのハンネスを見つめるその様子に、ジャド師はなぜか少なからぬ不安を感じた。
アメリアが去ったのち、ジャド師はハンネスのもとへ行き、
「ずいぶん親しげに話していたが、あの娘はお前の知り合いか?」
と聞いた。
「ああ、アメリアですか? 最近、マルデクからこの地球へ私とエルフィンのように逃げてきた、武官オリオンの恋人です」
と言った。
「武官オリオンの恋人?」
「はい。彼女には親が決めた婚約者がいて、それで地球へ逃げてきたのです」
ジャド師はオリオンの話から、オリオンとアメリアが実際は、恋人ではないことにすぐに気づいた。相談に来た若者は、旅の途中で見失った仲間を探していた。若者はその旅の連れをたぶん愛していた。
では先ほど見かけたアメリアという女性は、なぜここにいる?
「彼女はマルデク王朝の血を引いていて、プリンセスの称号を持つそうです。恋人のオリオンは優秀な武官だが、貴族ではなく平民出身だった。だからその恋は認められず、逃げてきたようなのです」
ジャド師の不吉な予感は、この時、完全に確信に変わった。
『あの娘は、なぜだかハンネスを以前から知っている。
そしてこの星までハンネスに会いにきたのだ』
と、口には出さなかったが、心の中でつぶやいた。
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