「光の天使」 光と影のシンフォニー

夢織人

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マルデク編 第1章 オスカー・フォン・ブラウンの恋

第18話 あなたのルカを見る目は、明らかに恋人を見る目でした。

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「ところで、オスカーさま。我々の婚約破棄の決定はしばらくは伏せておきましょうよ。そのほう良いかと思います」
と、アメリアは言った。

「私はすぐ破棄されてもかまわないのですが、そうするとあなたはこの家への出入りを禁止される。あなたは愛するルカに会えなくなるから、困るでしょう?」
とアメリアは言った。

「兄は鈍感だから、気づかないけれど、ちょっと勘の良い人ならすぐ分かります。
 あなたのルカを見る目は、明らかに恋人を見る目でした」

 アメリアは女であったが、物事を見極める能力に長けていた。

「ルカも気の毒よね。あなたのような有能で素晴らし人に愛されなていながら、兄のような策略家に見初められて、無理矢理、結婚させられたのだから・・・」
と言った。

「私、兄とは母親が違うんです。だから子供のころから、兄とはいつも喧嘩をしていました。私は女に生まれた・・・、ということだけで、いつも差別されていたのです」
と言った。

「兄はすごい男尊女卑なのです。王家の血筋である私に対してさへ平気で馬鹿にする。ルカは平民出身だから、どんな扱いを受けるかは、聡明なオスカーさまなら、おわかりになると思いますが・・・」

 確かに、クラウスは学生時代から、そういうところがあった。

「美しく着飾らせたお人形。ルカは兄にとって、自分のコレクションを飾るにふさわしい、誰もがうらやむお人形でなければならないのです。だから兄は毎日、ルカを貴婦人にするために、厳しい躾をしています。でも、躾とは名ばかりで、本当は自分の欲望と気晴らしのためだけに、ルカをいじめているのと同じ。ルカは平民出身だから、それでも何も言えない。何をしても自分は許されると、兄は本当に思っています。だからルカは、本当に良く耐えていると感心します」
と、アメリアはオスカーに言った。
 
 そして最後にこう付け加えた。
「私だったら、とっくに逃げ出しています」
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