「光の天使」 光と影のシンフォニー

夢織人

文字の大きさ
上 下
108 / 234
マルデク編 第1章 オスカー・フォン・ブラウンの恋

第17話 ハンネスには恋人がいます。

しおりを挟む
 一途にハンネスを恋い慕うアメリアの言葉に、オスカーは真実を告げるべきかどうか悩んだ。しかしアメリアの純粋な気持ちに心打たれたオスカーは、つらい真実をアメリアに伝えることにした。

「アメリアさま、申し上げてよいものかどうか迷ったのですが、知っていて知らんぷりもできないので、お教えします。
 あなたが恋慕うハンネスは、たぶん私の親友だと思います。
 そしてハンネスには、恋人がいます」
と告げた。

「エっ?」

「彼はその恋人と駆け落ちをして、このマルデクからすでに去りました。
 気の毒だが、あなたが彼の心に入り込む余地は、1%もありません」
と、言った。

「あなたが怪我をしたとき、一緒にいたものがその恋人です」

「エっ・・・!
 一緒にいた方は、女のように美しい方でしたが、男性のかたでしたよ」

「ハンネスと一緒にいた、女のように綺麗な者は、髪はこの星では珍しい、淡いブルーだったはずです」

「はい、そうでしたが・・・」

「間違いありません。あなたが会った命の恩人は、帝国軍のエルフィン将軍とハンネス医官です。そしてエルフィン将軍は、あなたがさっき狂っていると言った、総統の一番のお気に入りだった者です」
とオスカーは言った。

 驚くアメリアに、オスカーはなおも二人の話を続けた。
「総統は狂おしいほど、エルフィンを愛していました。
 そしてその狂気の愛はエルフィンの命さへも、奪いかねないものでした。

 エルフィンは、ある時、些細なことで総統の怒りを買い、総統からの拷問で死にそうになったのです。それを見たハンネスは、その命を救うために、エルフィンと共にこの帝国から去る決意をし、二人は帝国軍から離脱したのです」

「総統の一番のお気に入りと、本当に、駆け落ちしたのですか?」

「そうです。そして二人は今、帝国の重罪人として、賞金付きで指名手配されています。だから二人はもう、マルデクには戻りません」

「総統は美しい男しか、愛せない。そう聞いています。
 だから連れの美しい方が、総統の心を奪ったのは解るのですが・・・。

 あの方たちは、親しい友だち同士にしか見えませんでした。
 とても恋人同士のようには、見えませんでした」

「エルフィン将軍は、ルカもそうですが、両性具有の種族の出身なのです。
 彼らは変性の時を迎えるまでは、男でもあり、女でもある。

 エルフィン将軍はまだ未分化で、異常なほど美しかった。エルフィンに出会ったものは、誰もが心を奪われたものです。実は私もエルフィンに恋をしていました。

 エルフィンが女性に変性したならば、結婚したいとまで思っていました。
 この年まで独身だったのは、そのせいです」
とオスカーはアメリアに言った。

「それでも、私は、信じません。諦めません。
 あの方は、私の運命の方なのです。
 あの方がいたから、私は今、こうして生きているのです。
 私とあの方の出会いには、何か特別なものがあるはずなのです。
 占い師が、そう申しておりました」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

女子高生探偵:千影&柚葉

naomikoryo
ミステリー
【★◆毎朝6時更新◆★】名門・天野家の令嬢であり、剣道と合気道の達人——天野千影。  彼女が会長を務める「ミステリー研究会」は、単なる学園のクラブ活動では終わらなかった。  ある日、母の失踪に隠された謎を追う少女・相原美咲が、  不審な取引、隠された地下施設、そして国家規模の陰謀へとつながる"闇"を暴き出す。  次々と立ちはだかる謎と敵対者たち。  そして、それをすべて見下ろすように動く謎の存在——「先生」。  これは、千影が仲間とともに"答え"を求め、剣を抜く物語。  学園ミステリー×クライムサスペンス×アクションが交錯する、極上の戦いが今、始まる——。

それは奇妙な町でした

ねこしゃけ日和
ミステリー
 売れない作家である有馬四迷は新作を目新しさが足りないと言われ、ボツにされた。  バイト先のオーナーであるアメリカ人のルドリックさんにそのことを告げるとちょうどいい町があると教えられた。  猫神町は誰もがねこを敬う奇妙な町だった。

【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。 番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。 ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。 そして安定のヤンデレさん☆ ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。 別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。 お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

ヘリオポリスー九柱の神々ー

soltydog369
ミステリー
古代エジプト 名君オシリスが治めるその国は長らく平和な日々が続いていた——。 しかし「ある事件」によってその均衡は突如崩れた。 突如奪われた王の命。 取り残された兄弟は父の無念を晴らすべく熾烈な争いに身を投じていく。 それぞれの思いが交錯する中、2人が選ぶ未来とは——。 バトル×ミステリー 新感覚叙事詩、2人の復讐劇が幕を開ける。

猫の探偵社

久住岳
ミステリー
北海道で育った野上尚樹は不思議な特性?がある事に気づく。それは動物の意思や想いを読み取る能力…彼は富良野の草原で動物達と意識を共有して育った。成長した尚樹は千葉の叔母と暮らす事になった。 大学卒業を控えやりたい仕事が見つからない尚樹、彼の選んだ道は『迷子猫の捜索だ』だった。尚樹は半径300メートル程度まで探す猫の意識とコンタクトできる。その事を知っている妹が猫の探偵になる事を進めた。 猫の捜索依頼から人が絡む事件や謎、神がかり的なサスペンスが尚樹を待っている。事件の中で出会う事になる探偵社の副所長、本条尚子…卒業度同時に探偵社の副所長になった空手の達人、そして優秀な探偵。彼女は猫の捜索ではなくミステリアスな案件を好む そして…探偵社の所長・黒猫のノアール 漆黒の毛並みとつぶらな瞳の生後三カ月の子猫は、不思議な能力を持つ《進化した猫》だった。 二人と一匹のミステリーな旅が始まる。

処理中です...