「光の天使」 光と影のシンフォニー

夢織人

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マルデク編 第1章 オスカー・フォン・ブラウンの恋

第11話 オスカーにも縁談が・・・

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 オスカーが父グスタフに会い、ルカの秘密を打ち明けたのは、それから1週間以上も経ってからだった。

「実は父上、申し上げるのが遅くなりましたが、あの者は女ではなく男なのです」

 しかしオスカーの父グスタフは、まったく驚くもことなく、
「知っておる」と、言った。

「エッ・・・?」

「医官のマクシムから聞いておる」
 父は息子にそう告げた。

「だったら、なぜ、クラウスの申し出をお受けになったのですか?」
 オスカーは父グスタフを責めるように言った。

「あの者は最近、体に変調をきたし、医官マクシムのところへ行ったそうなのだ。
 それで分かったのだ。変性が始まったせいで、具合が悪いらしいのだ。

 医官が言うには、女性へ変性するらしい。
 変性が全部終わるには、一年ぐらいかかるそうだ」
 グスタフは、冷たく息子にそう言った。

「クラウスに結婚は早くても一年後になることは、もう伝えてある」

 そしてあきれたような口調で、
「あやつよほどあの娘のことが気に入ったようで、こちらが断れないように、あやつの妹とお前の縁談話までもってきた」
と付け加えた。

 それはふたつの縁談が、共にまとまることがベストではあったが、どうしても嫌なら、ひとつは断っても良いという選択肢を提示したものだった。

 フォン・マイヤー家の令嬢は、王族の血を引き、実は次の女王になることが、予言によって決っていた。彼女と結婚すると言うことは、次の王になると言うことだった。フォン・ブラウン家は大貴族だったが、身分的には王家がやはり上だった。だからその縁談は逆玉と言えた。しかしオスカーは、気が進まなかった。

 アメリア・フォン・マイヤーは知的で背が高く、楽しい会話で人々を魅了したが、ルカの天使のような美しさの前では、比べようがなかった。

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