「光の天使」 光と影のシンフォニー

夢織人

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マルデク編 第1章 オスカー・フォン・ブラウンの恋

第10話 学生時代の学友クラウス・フォン・マイヤー

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 ある日、執務室にいたオスカーに部下から連絡が入った。

「オスカーさま、元老院のクラウス・フォン・マイヤー議員が、オスカーさまにお会いしたいと、お越しなのですが、どうされますか?」

 クラウス・フォン・マイヤーは学友ではあったが、それほど親しい間柄ではなかった。しかしマイヤー家はブラウン家と並ぶマルデクの名門貴族だった為、会わないわけにも行かず、オスカーはクラウスを執務室に案内させた。

「やあ、オスカー。久しぶりだな。
 君の活躍ぶりは、みんなから聞いてるよ。
 君無くして、帝国は成り立たない」

「お世辞を言うなんて、君らしくない。何か頼み事か?」

「当たり! 実は、君にどうしても力になってもらいたいことがあって、今日はやって来た」

「何だろう? 君がそんなことを言うなんて、何か、怖いな」

「そんなに、怖がるなよ。ただ、恋のキューピッドをお願いしたいだけだ」

「恋のキューピッド?」

 意外な展開だった。クラウスは自意識過剰な男で、王家の血を引く腹違いの妹が予言により、次期女王に確定していることもあり、少し傲慢なところがあった。

「君の家にいる、親戚のお嬢さんを紹介してほしい」

「誰のことだろう?」

「先日、君の父上に急な用事が出来て、フォン・ブラウン家へ行ったのだが、その時、庭園で、ものすごく綺麗なお嬢さんを見かけてね。
 君の家の使用人に聞いたら、親戚のお嬢さんで、名はルカだと教えてくれた」

 オスカーは嫌な予感がした。
 クラウス・フォン・マイヤーは女遊びをするタイプでは無かった。
 この男の場合、紹介してくれは、結婚を前提にした付き合いを認めてくれ、ということだった。

「君の父上にも、実は、もう話してある。
 君の父上は、結婚を前提として付き合うことを、許してくれた」

 クラウス・フォン・マイヤーが帰るとすぐに、オスカーは元老院へ行き、父を訪ねた。

「ルカのことで、二人きりでお話ししたいことがあります」
と、オスカーは父グスタフに言った。

 グスタフは何も言わず、オスカーを手招きした。そして、
「ここは元老院だ。盗聴器も仕掛けられている。
 後で家に帰ってから、ゆっくり話を聞くことにしよう」
と言った。

 しかしその夜、総統がまた夜の街へ出かけ“ペット狩り”をすると言い出し、オスカーは総統に張り付かねばならず、結局は家に帰れなかった。
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