「光の天使」 光と影のシンフォニー

夢織人

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マルデク編 第1章 オスカー・フォン・ブラウンの恋

第7話 名前は何にする?

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 総統はエルフィンに未練を残しつつも、新しく出現した美しい獲物に、内心、狂喜していた。
 エルフィンを諦めたわけではなかったが、いつ捕獲できるか見通しが立たない以上、新しい獲物を捕獲するほうが、カラカラに乾いたこころを速く満たせそうだった。

 総統は異例の早さで、高額な報償金をつけ、ジェイドを指名手配した。
 それを知っていたオスカーは、少年に言った。

「お前は賞金付きで、帝国中に指名手配されている。
 今、外に出ると危ないと思うが、この帝都に、頼れる知り合いはいるのか?」

「いません」
 少年は小さな声で、うつむいたままそう言った。
 もう泣き止んではいたが、うなだれ、力なく立ちすくんでいる姿は、やはり哀れであった。

「乗りかかった舟だ。しかたがない」
とオスカーはため息をつきながら、少年に言った。

「お前が望むなら、かくまってやるが、この屋敷から絶対に外へ出るなよ」
と、念を押した。やはりオスカーと言えども、ジェイドをかくまっていることが総統にばれたなら、罪は免れ得なく、打ち首ものだった。

「イヤかもしれないが、髪を染めて、女装してもらう」
とオスカーは少年に言った。そして、

「名前は何にする? 別人に生まれ変わるのだ」
と、付け加えた。

 少年はしばらく考えていたが、おずおずと、
「ルカがいい」
と、小さな声だったがはっきりと言った。

 それは少年の、本当の名前だった。
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