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マルデク編 第1章 オスカー・フォン・ブラウンの恋
第5話 けたたまし音とともに、何かが壁にぶつかる音がした。
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総統の寝室の一つである奥の間の扉の前で、兵士たちは賭けをしながら、時が経つのを待っていた。
総統が奥の間に入ってから、すでに30分が経っていた。
「今日も俺の勝ちのようだな。あの少年は、これから何日もつかなあ?」
そう言いながら、兵士はあくびをした。そしてまた別の賭けを始めた。
「一週間がいいとこだろう。華奢な、ひ弱そうな子だった」
「可哀そうにな・・・」
その時だった。
けたたまし音とともに、何かが壁にぶつかる音がした。
そして中からものすごい衝撃音がしたと思ったら、扉がバリバリと割れ、少年の体が転げ落ちてきた。
見ると部屋の中では総統が、頭から血を流しながら、意味不明の言葉を吐き、必死に起き上がろうとしていた。そして、
「何をしている!
あやつをすぐ、捕まえるのだ。
逃がすな~!」
と総統は烈火のごとく怒鳴り散らしていた。
二人の兵士は、必死で逃げる少年にやっとのことで追いついた。
そして必死で抵抗する少年を羽交い絞めにした。
しかし捕まえるふりをしながら、兵士は小さな声で、少年に言った。
「ここをまっすぐ行くと、門に囲まれた、大きな宮殿のような家がある。
その家の門を右に向かって走れ。やがて小さな入口が見えてくる。
その入り口を通って、中に入るんだ。
そしてオスカーさまから言われた、と言え。助けてもらえる」
総統が奥の間に入ってから、すでに30分が経っていた。
「今日も俺の勝ちのようだな。あの少年は、これから何日もつかなあ?」
そう言いながら、兵士はあくびをした。そしてまた別の賭けを始めた。
「一週間がいいとこだろう。華奢な、ひ弱そうな子だった」
「可哀そうにな・・・」
その時だった。
けたたまし音とともに、何かが壁にぶつかる音がした。
そして中からものすごい衝撃音がしたと思ったら、扉がバリバリと割れ、少年の体が転げ落ちてきた。
見ると部屋の中では総統が、頭から血を流しながら、意味不明の言葉を吐き、必死に起き上がろうとしていた。そして、
「何をしている!
あやつをすぐ、捕まえるのだ。
逃がすな~!」
と総統は烈火のごとく怒鳴り散らしていた。
二人の兵士は、必死で逃げる少年にやっとのことで追いついた。
そして必死で抵抗する少年を羽交い絞めにした。
しかし捕まえるふりをしながら、兵士は小さな声で、少年に言った。
「ここをまっすぐ行くと、門に囲まれた、大きな宮殿のような家がある。
その家の門を右に向かって走れ。やがて小さな入口が見えてくる。
その入り口を通って、中に入るんだ。
そしてオスカーさまから言われた、と言え。助けてもらえる」
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