「光の天使」 光と影のシンフォニー

夢織人

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神界編 第4章 二人の天使~エルフィンとルカ

第11話 美しい星空の下、ふたりは秘密を打ち明た。

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 星空を見上げながら、エルフィンはハンネスに言った。
「そんなに多くはないけれど、シャンバラの最後の大神官ユダさまとは、何回か、会ったことがある」

 満開に広がる星空は、いつになく美しかった。
「ちょうど祖父が亡くなり、王位を継いだ父上が今の統治神<シ>との戦いに敗れ、敗走したころだ。母上は私と弟を連れて、なぜだか将軍家を出たんだ。その時、母を助けてくれたのがシャンバラの大神官ユダさまだった」

「父上と母上はあまり仲が良くなかった。と言いうより、母上が父上を嫌っていた。
 そのせいで父上は、僕を嫌っているのだと思っていたけれど、たぶん父上は、本能的に感じていたんだろうな。僕が父上の子供でないことを・・・。
 父上は僕にはつらくあたったけれど、弟のルカには優しかったから・・・」

 ハンネスはエルフィンの複雑な胸中を思い、何も言えなかった。

「僕を拉致したものたちは、僕が将軍家の血を引く最後の正当な後継者だと思っていたようだ。だから僕を探し、捕まえて拉致した。でも本当は、弟ルカこそが、彼らが捜していた後継者だったのにね。少女のなりをしていたルカを彼らは見向きもしなかった」

 慰めようにも、慰める言葉が無かった。
 エルフィンの父親はたぶんユダさまで、ユダさまはたぶんそれを知らなかった可能性が高かった。

「母上がユダさまを見つめるまなざしは悲しげではあったけれど、幸せそうでもあったから、子供心に、母上はこの人を本当に好きなんだ、と感じていた」

 エルフィンはハンネスに、今まで隠していた心の内をすべて明かした。

「ユダさまは僕にもとても優しかったけれど、僕がユダさまの子供だとは、思っていないような感じだった」

「ユダさまは、たぶん知らなったと思う」

 ハンネスはエルフィンに思ったとおりを伝えた。
 そしてハンネスもエルフィンにある秘密を打ち明けた。

「実は、私もお前に話していなかったことがある。
 私の両親のことだ。私の本当の両親は私が生れてすぐに死んでいたのだ」

 エルフィンはハンネスの告白に驚いた。

「父親はシャンバラの武官だったから、身寄りのない私を哀れんだジャド師が、私を引取り育てたのだ」

 ふたりはそれ以上、お互いに何も言わなかったが、言わずともその心は手に取るように良くわかった。
 ふたりは寝転がったまま、互いの手をいつしか握っていた。
 握った手から、相手の思いが、黙っていても伝わってくるかのようだった。
 ふたりは魂が共鳴するのを感じていた。 


「もう少し休んだら、行くぞ、エルフィン。
 早く境界に、たどりつかなければならない」
 ハンネスはそう言うと、起き上がり、エルフィンを見た。

 本当は病み上がりのエルフィンを、もっと休ませてあげたいのだが、状況を考えるとそうも行かない。そろそろ総統が、エルフィンががいないことに気づくころだった。

「もうすでに追手が放たれたかもしれない。急ごう・・・」

 地球へ続く、ワープの入り口までは、まだかなりの距離があった。エルフィンは大きな傷を負い、回復したばかりだった。体の傷は消えていたが、病み上がりに変わりはなかった。
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