「光の天使」 光と影のシンフォニー

夢織人

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神界編 第4章 二人の天使~エルフィンとルカ

第9話 医官ハンネスの過去とエルフィンの秘密

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 エルフィンは目覚めたとき、医官ハンネスが部屋の片隅で武術の練習をしていることに気づき、驚いた。
 ハンネスは刀を使い、フォースを操る練習をしていた。
 見事な剣さばきだった。帝国軍の精鋭ぞろいであるエルフィンの部隊にも、これほどのフォースの使い手はいなかった。

「凄い剣さばきだ」
と、エルフィンは目を丸くしながら、ハンネスの練習を見ていた。

「こんなに武術ができるのに、なぜ隠していたんだ?」
とエルフィンは微笑みながらハンネスに言った。

「“能ある鷹は、爪を隠す・・・”、って言うだろう。だからだよ。
 私は自分が認めた主人にしか、武人としては仕えない」
とハンネスは答えた。

「昔、あるご婦人と子供たちの命を、刺客から守るように、シャンバラの大神官ユダさまから命令を受け、密かに潜伏したことがあった。しかしその任務に失敗して、子供たちは謎の軍団に連れ去られ、殺されてしまったんだ。
 そのとき、もう剣は持つまいと思った。
 でも、そのときの子が生きていることを、昨日、知った」
 ハンネスは刀を鞘に収めると、エルフィンを見つめ微笑んだ。そして、

「私はユダさまからの言いつけを守り、その子の命を守るつもりだ」
とエルフィンに、ハンネスはきっぱりと言った。 そしてエルフィンの側へ来ると、
「もう隠すな、エルフィン。お前、アトランティスの統治神<シ>の妹、ヨシュアさまの子供なんだろう?」
と言った。

「お前は誤解して逃げたが、私はお前を助けに行っていたんだ」
 エルフィンはおぼろげながらも、あの時のことを思い出した。
 突然、大人数の刺客たちが現れ、エルフィンたちを襲った。

 母は子供たちに逃げるように言い、エルフィンとルカは必死で走り、逃げようとした。その時、一人のまだ若い、少年のような武人が現れ、エルフィンたちに向かって走ってくるなり、黒装束の刺客たちを次々と倒していった。
 しかしエルフィンはその武人が怖くなり、逃げた。
 そしてひたすら走った。そして気が付いたときルカとも離れ離れになっていた。

「秘密の指令だったから、ユダさまの名前を出すわけにはゆかなかったんだ。
 そして私はあまりに若く、未熟だった」
と、ハンネスはエルフィンに言った。

「とにかく、生きていてくれて、ありがとう」
と、ハンネスは涙を浮かべて言った。

 そして驚くエルフィンを、やさしく、強く抱きしめた。そして、
「それから、お前が、お前の母上に聞きたかったことの答えを、私は知っている」
と、言った。

「お前の思っている通りだ。お前はシャンバラの遺伝子を、受け継いでいる。だから変成しないんだ」

 エルフィンは、自分がいつまでも変成しないことを、不思議に思っていた。
 変成しない者は、アトランティスでもまれにはいたのだが、その者たちは、いつも、明らかに何かが欠けていた。しかしエルフィンは違っていた。未分化だが、その状態は健康な若者と何ら変わらず、いや、それ以上であり、だから変性していない状態であることが、不思議だったのだ。

 そしてある時、エルフィンは聞いたのだ。
 シャンバラではまれにそういうものが生まれ育つと。
 そしてその者は、シャンバラの高僧の生まれ変わりであることが多いと・・・
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