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神界編 第4章 二人の天使~エルフィンとルカ
第7話 オスカーとハンネス
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「エルフィンは大丈夫か?」
医務室に入ってくるなり、いつもクールなオスカーには珍しく、慌てふためいていた様子で、ハンネスに聞いた。
医務官ハンネスは、そんな親友オスカーを見て、驚きながらも笑いながら答えた。
「大丈夫だ。今、眠っている」
それを聞いて安堵したオスカーは、やっといつもの平静さを取り戻した。
「総統と謁見しているときに、総統の部下が、エルフィンはまだ絶対安静な状態だ、とお前が言っていたというから、本当に驚いたんだぞ」
「そう言わないと総統は、エルフィンにすぐ来いと言うだろうが・・・」
と云って、ハンネスは少し躊躇しながらこう付け加えた。
「総統は今回のことを許す代わりに、忠誠心を示せと言って、エルフィンに色々なことを無理強いするはずだ。エルフィンを永遠に総統の魔の手から守ることはできないが、少し落ち着くまでは守ってやろうと思ってな」
と、ハンネスは悲しそうに言った。
「方法はあるぞ。エルフィンを女性に変性させろ。そうしたら私がエルフィンを妻に迎えてエルフィンを守る。フォン・ブラウン家の嫁なら、総統も手だしができないはずだ」
「なんだよ、それ・・・」
「知ってるぞ、エルフィンがまだ未分化だってこと。
お前がそのフォースで変成を抑えてるんだろう?
エルフィンの望みを聞いてさ・・・」
実際、エルフィンはまだ未分化だった。ただそれは、オスカーが考えているような理由のせいではなかった。もっと特別な理由だった。それゆえハンネスはエルフィンを総統の欲望から守れない自分を恥じた。
医務室に入ってくるなり、いつもクールなオスカーには珍しく、慌てふためいていた様子で、ハンネスに聞いた。
医務官ハンネスは、そんな親友オスカーを見て、驚きながらも笑いながら答えた。
「大丈夫だ。今、眠っている」
それを聞いて安堵したオスカーは、やっといつもの平静さを取り戻した。
「総統と謁見しているときに、総統の部下が、エルフィンはまだ絶対安静な状態だ、とお前が言っていたというから、本当に驚いたんだぞ」
「そう言わないと総統は、エルフィンにすぐ来いと言うだろうが・・・」
と云って、ハンネスは少し躊躇しながらこう付け加えた。
「総統は今回のことを許す代わりに、忠誠心を示せと言って、エルフィンに色々なことを無理強いするはずだ。エルフィンを永遠に総統の魔の手から守ることはできないが、少し落ち着くまでは守ってやろうと思ってな」
と、ハンネスは悲しそうに言った。
「方法はあるぞ。エルフィンを女性に変性させろ。そうしたら私がエルフィンを妻に迎えてエルフィンを守る。フォン・ブラウン家の嫁なら、総統も手だしができないはずだ」
「なんだよ、それ・・・」
「知ってるぞ、エルフィンがまだ未分化だってこと。
お前がそのフォースで変成を抑えてるんだろう?
エルフィンの望みを聞いてさ・・・」
実際、エルフィンはまだ未分化だった。ただそれは、オスカーが考えているような理由のせいではなかった。もっと特別な理由だった。それゆえハンネスはエルフィンを総統の欲望から守れない自分を恥じた。
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