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神界編 第4章 二人の天使~エルフィンとルカ
第6話 帝国軍情報省長官オスカー・フォン・ブラウンと総統ユリウス
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「あやつめ・・・」
つい先ほどまで総統は、エルフィンが誰に会っていたのかを吐かせようとして、エルフィンに執拗な拷問を加えていた。しかしエルフィンはついに口を割らず、総統の方が先に疲れてしまい、休まざるを得なかったのだ。
総統の激しい拷問にじっと耐え、血まみれになってもついに口を割らなかったエルフィン。総統はかなり苛立っていた。
口を割るまで、このままでは拷問を続けなければならなくなる。それではエルフィンが死んでしまうかもしれない。
それは美しく高価な宝を自ら壊し、永遠に失うことと同じだ。
それは総統の望むことではなかった。
「あやつめ、命乞いもせんとは、可愛げのないやつだ」
自分が始めたゲームではあったが、総統は落としどころを見つけ出せず、困っていた。そのような時であった。
「総統閣下、情報省長官のフォン・ブラウンが、謁見を願い出ておりますが、どうされますか?」
と部下が告げたのだ。
「今回のエルフィン様の件について、急ぎお伝えしなければならないことがあると申しております」
オスカー・フォン・ブラウンは、元老院の重鎮を父親に持つ、帝国でも有数の大貴族の息子だった。
総統は無感情を装い、
「良い、通せ」と部下に伝えた。
オスカー・フォン・ブラウンもまれに見る美青年なのだが、実は訳あって総統の愛人リストには決して載ることのない若者だった。総統はオスカーを見ると哀しくなるのだ。総統はかつて愛した人の面影を宿すオスカーが苦手だった。オスカーはそういう意味で、初めから特別待遇の存在だった。
それでも総統はあまり期待せずに、フォン・ブラウンの話を聞いた。
「申し上げるのが遅れましたが、エルフィン将校は私の要請を受け、地球へ秘密裏に潜入したのです」
とオスカーは総統に告げた。そして、
「私は以前から、あの星の異常な動きに注目して参りました」
と言った。
「どのような異常がみられたと?」
「辺境の星であるにも関わらず、あの星を守る宇宙連合軍将校は、宇宙連合軍の四大戦士のひとりである、あのヨハネ戦士でした。あまりに異常な人事です。
それで私は密かに密偵を送っていたのですが、最近、大きな動きがあったと報告があったのです」
「どのような動きだ?」
「驚いたことに、あのルシファーと統治神<シ>の右腕ミカエルまでも、あの星にいるというのです」
「なんだと?」
「密偵は実際にあの二人の戦士と戦ったことがなかったので、本人かどうかを確かめるために、実際に戦った経験のある、エルフィンを送ったのです」
総統は言葉にも、表情にも出さなかったが、安堵していた。
これでエルフィンの拷問をしなくて済む。まだ不明な点はあるが、それはどうでも良いことにしよう。エルフィンが総統の言うことを聞き素直に従えば、総統は許す決意をすでにしていた。
償わせ方は、色々ある。
拷問よりも別の償い方をさせるほうが、総統は好んだ。
今回はエルフィンも拒めない。
総統は嬉しそうな笑みをうかべ、
「ところで、ハンネス医官の治療は、終わったようだったか?」
と部下の者に聞いた。
「ハンネス医官が言うには、まだだそうです」
「いつまでかかると言っていた?」
「数日は絶対安静だと、申しておりました」
つい先ほどまで総統は、エルフィンが誰に会っていたのかを吐かせようとして、エルフィンに執拗な拷問を加えていた。しかしエルフィンはついに口を割らず、総統の方が先に疲れてしまい、休まざるを得なかったのだ。
総統の激しい拷問にじっと耐え、血まみれになってもついに口を割らなかったエルフィン。総統はかなり苛立っていた。
口を割るまで、このままでは拷問を続けなければならなくなる。それではエルフィンが死んでしまうかもしれない。
それは美しく高価な宝を自ら壊し、永遠に失うことと同じだ。
それは総統の望むことではなかった。
「あやつめ、命乞いもせんとは、可愛げのないやつだ」
自分が始めたゲームではあったが、総統は落としどころを見つけ出せず、困っていた。そのような時であった。
「総統閣下、情報省長官のフォン・ブラウンが、謁見を願い出ておりますが、どうされますか?」
と部下が告げたのだ。
「今回のエルフィン様の件について、急ぎお伝えしなければならないことがあると申しております」
オスカー・フォン・ブラウンは、元老院の重鎮を父親に持つ、帝国でも有数の大貴族の息子だった。
総統は無感情を装い、
「良い、通せ」と部下に伝えた。
オスカー・フォン・ブラウンもまれに見る美青年なのだが、実は訳あって総統の愛人リストには決して載ることのない若者だった。総統はオスカーを見ると哀しくなるのだ。総統はかつて愛した人の面影を宿すオスカーが苦手だった。オスカーはそういう意味で、初めから特別待遇の存在だった。
それでも総統はあまり期待せずに、フォン・ブラウンの話を聞いた。
「申し上げるのが遅れましたが、エルフィン将校は私の要請を受け、地球へ秘密裏に潜入したのです」
とオスカーは総統に告げた。そして、
「私は以前から、あの星の異常な動きに注目して参りました」
と言った。
「どのような異常がみられたと?」
「辺境の星であるにも関わらず、あの星を守る宇宙連合軍将校は、宇宙連合軍の四大戦士のひとりである、あのヨハネ戦士でした。あまりに異常な人事です。
それで私は密かに密偵を送っていたのですが、最近、大きな動きがあったと報告があったのです」
「どのような動きだ?」
「驚いたことに、あのルシファーと統治神<シ>の右腕ミカエルまでも、あの星にいるというのです」
「なんだと?」
「密偵は実際にあの二人の戦士と戦ったことがなかったので、本人かどうかを確かめるために、実際に戦った経験のある、エルフィンを送ったのです」
総統は言葉にも、表情にも出さなかったが、安堵していた。
これでエルフィンの拷問をしなくて済む。まだ不明な点はあるが、それはどうでも良いことにしよう。エルフィンが総統の言うことを聞き素直に従えば、総統は許す決意をすでにしていた。
償わせ方は、色々ある。
拷問よりも別の償い方をさせるほうが、総統は好んだ。
今回はエルフィンも拒めない。
総統は嬉しそうな笑みをうかべ、
「ところで、ハンネス医官の治療は、終わったようだったか?」
と部下の者に聞いた。
「ハンネス医官が言うには、まだだそうです」
「いつまでかかると言っていた?」
「数日は絶対安静だと、申しておりました」
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