「光の天使」 光と影のシンフォニー

夢織人

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神界編 第4章 二人の天使~エルフィンとルカ

第3話 蒼き焔エルフィンと謎の美女

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「エルフィンさま、そろそろ戻らなければなりません」

 青年は遠くから、その美しくも儚げで、哀しげにたたずむ女性を、黙って見ていた。生きているとも、死んでいるともわからず、ずっと探し続けていたのだ。
 その歳月を思うと切なくなるのだが、なぜか青年は歩を進めることが出来なかった。

「迎えのものが、来ています。帰らなければなりません。
 いくら辺境の星とは云え、ここは敵の星団が支配する星です。
 あなたさまのような敵の将軍が来ていると知ったら、大変なことになります」

 最近、青年は異例の速さで、将軍に抜擢されたばかりだった。
 とうぜんそのスピード出世には裏があるとみんな思っていた。
 マルデク総統ユリウスは、美青年しか愛せないと評判だったし、青年はどんな美女をも打ち負かす美貌の持ち主だった。彼は男であり、女である者、両性具有の種族の出身だった。普通はとうに、どちらかの性に変性するのだが、彼は珍しくいまだに未分化だった。彼のような美味しいごちそうは、ほとんど手に入らない。総統ユリウスはだからこそ、彼を将軍に任命した。どんなことがあっても、手放さないという決意のあらわれであり、彼をいつも側に置くためであった。

 連れの者は、なぜエルフィンが危険を冒してまで、この星へ来ているのかを知らなかった。
 女性はまれに見る美貌の持ち主だったが、エルフィンの恋人にしては、年齢が離れているように見えた。

 宇宙船はもう側まで、来ていた。
 結局、青年はその女性の側まで行くこと無く、その星を去るしかなかった。



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