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神界編 第3章 ヨシュアとユダ~終わりの始まり
第21話 旅の僧侶と二人の天使
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ある夜、プレアデスの城都の街外れで小さな簡易食堂を営む親子の前に、婦人とふたりの小さな子供を伴った旅の僧侶が姿を現した。
簡易食堂の娘はすぐにその僧侶が誰であるかに気がついた。
何年も前に一度会ったきりだったが、シャンバラの次期大神官ユダに間違いなかった。
そして一緒のご婦人にも見覚えがあった。
プレアデスの宮殿で王女ラクシュミーと一緒にいた異国の姫君だった。
ふたりの小さな子供たちを見て、娘はさらに驚いたのだが、僧侶はそれに対して、笑いながら
「私の子供だと思ったか?」
言った。
そして僧侶は、少し嬉しそうに笑っていたが、
「そなたが思ったように私の子供ならば良かったのだが、残念ながら、私の子供ではないのだ」
言った。
それを聞いて、娘は少し安心したようだった。
しかしすぐに、少し怒った口調で、
「それは当たり前です。あなた様はシャンバラの次期大神官。すべてをこの宇宙の平和に捧げなければならない特別なお方なのですから」
と言った。
「突然現れて、このような頼み事をするのは心苦しいのだが、この親子を少しの間、かくまってやってはくれまいか」
とユダは娘に言った。
「このご婦人と子供たちは、訳あって敵対する二つの組織から追われているのだ」
「この子たちは高貴な血を引いているのだが、それ故、ある者たちが政争の道具にしようとしている」
とユダは子供たちを見ながら言った。
「確かこの姫君には、お兄様がいたはずですが・・・」
と娘はユダに言った。
「その兄君と対立する前アトランティス王の息子が、彼女の夫で、この子たちの父親なのだ。
兄を頼れば、この子たちは謀反を防ぐために彼女の兄に殺されることになる」
と、ユダは子供たちを見やり哀しそうに言った。
「上の子は、前アトランティス王アレスが王朝を継ぐ者としてて遺言を残した王子なので、どうすることも出来ないのだが、下の子の存在は、あまり公にはなっていない。
私の子ではないが、もし彼女の兄の部下たちが現れ、彼女と子供たちを連れ去ろうとしたならば、下の子は、私の子ということにしてほしい」
と言った。
「そうすれば、下の子は、少なくとも殺されないですむ」
とも言った。
ヨシュアの子供だちがユダの子供ではないと云うことを知ったとき、簡易食堂の娘は同じくユダに恋心を抱いたことがあるものとして、ヨシュアの心情を痛いほど理解できた。
簡易食堂の娘はすぐにその僧侶が誰であるかに気がついた。
何年も前に一度会ったきりだったが、シャンバラの次期大神官ユダに間違いなかった。
そして一緒のご婦人にも見覚えがあった。
プレアデスの宮殿で王女ラクシュミーと一緒にいた異国の姫君だった。
ふたりの小さな子供たちを見て、娘はさらに驚いたのだが、僧侶はそれに対して、笑いながら
「私の子供だと思ったか?」
言った。
そして僧侶は、少し嬉しそうに笑っていたが、
「そなたが思ったように私の子供ならば良かったのだが、残念ながら、私の子供ではないのだ」
言った。
それを聞いて、娘は少し安心したようだった。
しかしすぐに、少し怒った口調で、
「それは当たり前です。あなた様はシャンバラの次期大神官。すべてをこの宇宙の平和に捧げなければならない特別なお方なのですから」
と言った。
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とユダは娘に言った。
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「この子たちは高貴な血を引いているのだが、それ故、ある者たちが政争の道具にしようとしている」
とユダは子供たちを見ながら言った。
「確かこの姫君には、お兄様がいたはずですが・・・」
と娘はユダに言った。
「その兄君と対立する前アトランティス王の息子が、彼女の夫で、この子たちの父親なのだ。
兄を頼れば、この子たちは謀反を防ぐために彼女の兄に殺されることになる」
と、ユダは子供たちを見やり哀しそうに言った。
「上の子は、前アトランティス王アレスが王朝を継ぐ者としてて遺言を残した王子なので、どうすることも出来ないのだが、下の子の存在は、あまり公にはなっていない。
私の子ではないが、もし彼女の兄の部下たちが現れ、彼女と子供たちを連れ去ろうとしたならば、下の子は、私の子ということにしてほしい」
と言った。
「そうすれば、下の子は、少なくとも殺されないですむ」
とも言った。
ヨシュアの子供だちがユダの子供ではないと云うことを知ったとき、簡易食堂の娘は同じくユダに恋心を抱いたことがあるものとして、ヨシュアの心情を痛いほど理解できた。
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