「光の天使」 光と影のシンフォニー

夢織人

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神界編 第3章 ヨシュアとユダ~終わりの始まり

第9話 夜半過ぎ、食堂の主人と共に現れた人物にパリスは・・・

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 夜半過ぎ、簡易食堂の主人と共に現れた人物を見て、パリスは心からほっとした。

 5年前、父アキレウスの死を伝えに来た宇宙連合の使者にして、動乱が勃発する前夜のアトランティスから、弟ヨシュアを安全な場所へ連れてゆくと約束してくれた青年が、そこに立っていたからだ。

「お久しぶりです、パリスさま」

 青年はパリスににこやかにほほ笑むと、後ろを振り向き、簡易食堂の主人と連れの者に、
「大事な話があるので、しばし二人きりにしてほしい」
と言った。

「パリスさま、またお会いできて嬉しいです。
 ずいぶん心配していました。
 そしてずいぶん、たくましくなられた」

 ユダはパリスに親しみを込めてそう言った。  
 将軍の放った刺客がパリスを捕え、彼を殺そうとしていることは、みな知っていた。
 その監視の目をくぐり抜け、ここまでたどり着いたパリスはすでに王者の風格を身に付け始めていた。

「ヨシュアのことが、やはり心配で参りました。
 あの子は人見知りが激しく、なかなか人になじめないところがあった。
 新しい環境になじめず、孤立してつらい日々を送っているのではないかと、ずっと心配していました」

「明日、ヨシュアさまのところへ、パリスさまをお連れ致します」
 ユダは、心配するパリスにそう言った。

「明日の朝、扉が開くころ、プレアデスの宮殿へお越しください。
 中庭でお待ちしています」

 それだけい言うと、ユダは風のように去っていった。
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