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神界編 第3章 ヨシュアとユダ~終わりの始まり
第7話 食堂の娘は父親の耳元で何やら囁いた。
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簡易食堂の主人はじきに戻ってきたのだが、その言葉はやはりパリスを落胆させるものだった。
「お客さん、こんなことを言いたくはないのだが、あまり期待しない方がいい。
シャンバラは特殊な能力の持ち主しか、とにかく入れないんだ。
そうでないものが入ろうとしても、扉を通り抜け出来ないばかりか、死んでしまいます。招待された者以外、近寄ることさえできない特殊な場所、それがシャンバラです」
そしてさらに付け加えた。
「それにこの10年、新しいラマが誕生したとは、やはり誰も聞いていませんでした。
弟さんはきっと、この星にさえ来てないと思います」
その話に旅人がうろたえ、悲しむさまをみて、慰めるように食堂の主人は言った。
「それでもシャンバラのユダさまに、パリスというお客人が来ていて、お会いしたいと言っていることを伝えてくれるように、頼んではきました」
その様子を見ていた娘は、父親のもとへ走って行き、耳元で何か囁いた。
食堂の主人は、娘の話に少し驚いたようだった。
「ああ、それから、今日中に返事がくるとは、思わない方がいいですよ」
と言った後、しばらく考え込んでいた。
しかし、ついに決心がついたようで、食堂の主人は旅人に言った。
「それから、どちらの宿にお泊まりですか?
まだ決まっていないのでしたら、私どもの家にお泊まりください。
乗りかかった船なので、最後までお世話します。
娘がそうしてやってくれと、せがむのでね」
食堂の主人は、そう言って娘を見た。娘は真っ赤な顔をして、そこから走り去っていった。
「お客さん、こんなことを言いたくはないのだが、あまり期待しない方がいい。
シャンバラは特殊な能力の持ち主しか、とにかく入れないんだ。
そうでないものが入ろうとしても、扉を通り抜け出来ないばかりか、死んでしまいます。招待された者以外、近寄ることさえできない特殊な場所、それがシャンバラです」
そしてさらに付け加えた。
「それにこの10年、新しいラマが誕生したとは、やはり誰も聞いていませんでした。
弟さんはきっと、この星にさえ来てないと思います」
その話に旅人がうろたえ、悲しむさまをみて、慰めるように食堂の主人は言った。
「それでもシャンバラのユダさまに、パリスというお客人が来ていて、お会いしたいと言っていることを伝えてくれるように、頼んではきました」
その様子を見ていた娘は、父親のもとへ走って行き、耳元で何か囁いた。
食堂の主人は、娘の話に少し驚いたようだった。
「ああ、それから、今日中に返事がくるとは、思わない方がいいですよ」
と言った後、しばらく考え込んでいた。
しかし、ついに決心がついたようで、食堂の主人は旅人に言った。
「それから、どちらの宿にお泊まりですか?
まだ決まっていないのでしたら、私どもの家にお泊まりください。
乗りかかった船なので、最後までお世話します。
娘がそうしてやってくれと、せがむのでね」
食堂の主人は、そう言って娘を見た。娘は真っ赤な顔をして、そこから走り去っていった。
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