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神界編 第3章 ヨシュアとユダ~終わりの始まり
第5話 シャンバラへ行きたいのですが・・・
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「これから、シャンバラへ行きたいのですが、どのように行けばいいのか、教えていただけますか?」
と、旅人はプレアデスの王都ラサの簡易食堂で、食事をしながら、食堂の主人に聞いた。
小太りの人の良さそうな主人は、少し驚きながらも親切に旅人に言った。
「あそこへは、簡単には行けません。特別な許可証が必要なんです」
それを聞いた旅人は、
「特別な許可とは、どのようなものなのですか?」
と、主人に訊いた。
「あそこは招待されたものしか行けません。
誰でも入れる場所ではないのです」
主人はしかし、旅人に興味をもったのか、
「お客さまはなぜ、シャンバラへ行かれたいのですか?」
とその若者に聞いた。
旅人は行けないと聞いてかなり落胆していた。
「もう何年も会っていない弟が、そこにいるはずなのです。
事情があって、シャンバラからつかわされた方に、5年前、弟を託したのです。
すぐ迎えに来るつもりだったのですが、5年もかかってしまって、ずっと弟に申し訳ないと思っていました」
食堂の主人は旅人を気の毒に思った。と云うのは、この10年、シャンバラに新しいラマ僧が誕生したとは、聞いていなかったからだ。旅人は貧しい身なりをしていたが、気品のある顔立ちで、まれにみる美青年だった。弟もさぞ美しいのだろうと、食堂の主人は思った。
この宇宙には、貧しい家庭の美しい子供たちを、ことば巧みに騙して連れ去り、闇奴隷市へ売り飛ばすような悪徳商人も多い。旅人の弟も、そのような悪徳商人の毒牙にかかり、犠牲になったのだろうと思った。
しかしそれでも、何か手助け出来ることがあるかもしれないとも思った。
「知り合いに、シャンバラとの連絡係をしている者がおりますので、そのものに頼んで聞いてみましょう」
と、簡易食堂の主人は落胆する旅人に言った。
「弟さまをあずけたシャンバラの使いの方は、なんというお名前でしたか?」
「ユダという、若い学者でした」
と、旅人は答えた。
「えっ、ユダさまですか?」
と、食堂の主人はその名前を聞いて、驚きの表情を浮かべた。
シャンバラには、ユダという名前の僧がひとりだけいた。
しかしその僧は特別な存在で、めったに姿を見せることはなかった。
そのお方は、実は次期大神官になることが決まっている、クムランの若き予言者だったのだ。
ラサの市民でさへ、実は誰も顔を知らないような、謎に包まれた人物だった。
と、旅人はプレアデスの王都ラサの簡易食堂で、食事をしながら、食堂の主人に聞いた。
小太りの人の良さそうな主人は、少し驚きながらも親切に旅人に言った。
「あそこへは、簡単には行けません。特別な許可証が必要なんです」
それを聞いた旅人は、
「特別な許可とは、どのようなものなのですか?」
と、主人に訊いた。
「あそこは招待されたものしか行けません。
誰でも入れる場所ではないのです」
主人はしかし、旅人に興味をもったのか、
「お客さまはなぜ、シャンバラへ行かれたいのですか?」
とその若者に聞いた。
旅人は行けないと聞いてかなり落胆していた。
「もう何年も会っていない弟が、そこにいるはずなのです。
事情があって、シャンバラからつかわされた方に、5年前、弟を託したのです。
すぐ迎えに来るつもりだったのですが、5年もかかってしまって、ずっと弟に申し訳ないと思っていました」
食堂の主人は旅人を気の毒に思った。と云うのは、この10年、シャンバラに新しいラマ僧が誕生したとは、聞いていなかったからだ。旅人は貧しい身なりをしていたが、気品のある顔立ちで、まれにみる美青年だった。弟もさぞ美しいのだろうと、食堂の主人は思った。
この宇宙には、貧しい家庭の美しい子供たちを、ことば巧みに騙して連れ去り、闇奴隷市へ売り飛ばすような悪徳商人も多い。旅人の弟も、そのような悪徳商人の毒牙にかかり、犠牲になったのだろうと思った。
しかしそれでも、何か手助け出来ることがあるかもしれないとも思った。
「知り合いに、シャンバラとの連絡係をしている者がおりますので、そのものに頼んで聞いてみましょう」
と、簡易食堂の主人は落胆する旅人に言った。
「弟さまをあずけたシャンバラの使いの方は、なんというお名前でしたか?」
「ユダという、若い学者でした」
と、旅人は答えた。
「えっ、ユダさまですか?」
と、食堂の主人はその名前を聞いて、驚きの表情を浮かべた。
シャンバラには、ユダという名前の僧がひとりだけいた。
しかしその僧は特別な存在で、めったに姿を見せることはなかった。
そのお方は、実は次期大神官になることが決まっている、クムランの若き予言者だったのだ。
ラサの市民でさへ、実は誰も顔を知らないような、謎に包まれた人物だった。
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