「光の天使」 光と影のシンフォニー

夢織人

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地上編 第2章 プリンス・チャーミングとジュンス

第16話 メモリー①

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 クラブ「パラダイス」の売りはもちろん自慢の美しいドールだちだったが、毎夜繰り広げられる華麗なステージもその魅力のひとつだった。

 世界中からショービジネスの本場アメリカでの成功を夢見る、才能溢れるアーティストたちが集まってきていた。
 そのステージは華麗で、ハイレベルなものだった。そしてそのステージの芸術監督は、現在はチャールズ・スペンサーが勤めていた。

 その夜のステージは、名前は伏せられていたが、特別なゲストが加わることになっていた。その謎のパフォーマーの名前を知っていたのは、チャールズとダニエル・リーだけだった。

 その日、プリンス・チャーミングはダニエル・リーにとって重要な情報を持つ、ある国の政府高官の接待を任されていた。その政府高官は以前からプリンス・チャーミングに異常なまでの執着を示し、いつもプリンス・チャーミングを指名していた男だった。しかしほとんどの場合は、門前払いに近い客だった。しかし今回は違っていた。

 そのときその政府高官は、共産主義のある国の王族についてのレアな情報を持っていた。その王族は近々国を捨て、西側へ亡命することになっていたのだ。その計画は西側の諜報機関も加わった、かなり大がかりなものだった。当然のごとく、その決行日は秘密にされていた。

 その日、政府高官と対峙したプリンス・チャーミングは、相手を誘惑し、その気にさせ、情報を引き出そうとしていた。情報を引き出すための、熱い口づけ。男はすっかりその気になっていた。しかしその時、ステージから世にも美しく哀しい、バイオリンの調べが流れてきたのだ。その調べを聞いた時、プリンス・チャーミングは、稲妻にでも撃たれたかのように心に痛みが走るのを感じた。そして次の瞬間、プリンス・チャーミングの体を抱きよせ覆いかぶさろうとした政府高官を、突き飛ばしていた。
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