18 / 234
地上編 第2章 プリンス・チャーミングとジュンス
第13話 堕天使から護りの天使への覚醒
しおりを挟む
失脚した人間に、チャールズの遊び仲間は冷たかった。
ほとんどの取り巻きは、何も言わずに去って行った。
しかし驚いたことに、パラダイスのオーナーはチャールズを見捨てずに手を差し伸べた。
オーナーはプリンス・チャーミングから、チャールズに眠っている音楽の才能について話を聞いていたから、チャンスを与えてみることにした。
プリンス・チャーミングの願い出もあって、彼がチャールズと会うことも許した。
そしてチャールズには、「プリンス・チャーミングを絶対に護れ!」と言った。
それがチャールズにとっては、どういう意味なのか良くわかっていたし、救いとなった。
栄光と権力と云う名の虚飾に満ちた偽りの世界で、自分を偽り、自分は幸せだと無理やり思い込んで生きてきた。
真実の自分に目を伏せ、偽りの人生を演じて生きてきたのだ。
しかし成功を重ね、いくら栄光を手に入れても、決して心からの満足感など得られるべくもなく、ますます心は渇き、虚しくなるだけだった。
昔、学生時代に、天使のようなサーシャに出会ったとき、今までにない衝動にも似た感情が自分の中に目覚めるのを感じていた。その感情に突き動かされ、チャールズがしたことは、サーシャに対するいじめだったが、同性愛と云うものを否定していた少年にとって、それが唯一出来る愛情表現でもあった。
だから秘かに愛していた少年が、突然の事故で亡くなったとき、チャールズは複雑な気持ちに襲われた。
サーシャとの思い出は、ほとんどがいじめて泣かせた記憶だったからだ。でも本当は、いつも彼を抱きしめたい誘惑にかられていた。だからサーシャに良く似たプリンス・チャーミングに出会った時、眠っていた感情があふれ出すのを、押さえることは不可能だった。
自分がゲイであることを認めることは、すべてを失うことだとわかっていても、今度ばかりは、譲れなかった。
サーシャの死亡事故に、ジュンスの母親が深く関与していたことを、パパラッチとの写真取引で偶然、知ったからだった。このままジュンスとプリンス・チャーミングの偶然の逢引を、ほっておくのは危険だった。
またパパラッチに写真を撮られ、ジュンスの母親のもとへその写真が送られるかもしれない。
そうすれば、母親はまた息子の恋人を殺すように、部下のものに命じるはずだった。
チャールズは、プリンス・チャーミングをジュンスに近づけないために、少し卑怯な手を使い、自分も失脚することになったが、後悔はしていなかった。
少なくとも、これでプリンス・チャーミングの命を救うことはできたのだ。
それに、すべてを失ったと思ったが、そうではなかった。
今では心のままに生きる自由があり、おまけにプリンス・チャーミングまでがそばにいた。
これ以上何も望むことは無かった。
ほとんどの取り巻きは、何も言わずに去って行った。
しかし驚いたことに、パラダイスのオーナーはチャールズを見捨てずに手を差し伸べた。
オーナーはプリンス・チャーミングから、チャールズに眠っている音楽の才能について話を聞いていたから、チャンスを与えてみることにした。
プリンス・チャーミングの願い出もあって、彼がチャールズと会うことも許した。
そしてチャールズには、「プリンス・チャーミングを絶対に護れ!」と言った。
それがチャールズにとっては、どういう意味なのか良くわかっていたし、救いとなった。
栄光と権力と云う名の虚飾に満ちた偽りの世界で、自分を偽り、自分は幸せだと無理やり思い込んで生きてきた。
真実の自分に目を伏せ、偽りの人生を演じて生きてきたのだ。
しかし成功を重ね、いくら栄光を手に入れても、決して心からの満足感など得られるべくもなく、ますます心は渇き、虚しくなるだけだった。
昔、学生時代に、天使のようなサーシャに出会ったとき、今までにない衝動にも似た感情が自分の中に目覚めるのを感じていた。その感情に突き動かされ、チャールズがしたことは、サーシャに対するいじめだったが、同性愛と云うものを否定していた少年にとって、それが唯一出来る愛情表現でもあった。
だから秘かに愛していた少年が、突然の事故で亡くなったとき、チャールズは複雑な気持ちに襲われた。
サーシャとの思い出は、ほとんどがいじめて泣かせた記憶だったからだ。でも本当は、いつも彼を抱きしめたい誘惑にかられていた。だからサーシャに良く似たプリンス・チャーミングに出会った時、眠っていた感情があふれ出すのを、押さえることは不可能だった。
自分がゲイであることを認めることは、すべてを失うことだとわかっていても、今度ばかりは、譲れなかった。
サーシャの死亡事故に、ジュンスの母親が深く関与していたことを、パパラッチとの写真取引で偶然、知ったからだった。このままジュンスとプリンス・チャーミングの偶然の逢引を、ほっておくのは危険だった。
またパパラッチに写真を撮られ、ジュンスの母親のもとへその写真が送られるかもしれない。
そうすれば、母親はまた息子の恋人を殺すように、部下のものに命じるはずだった。
チャールズは、プリンス・チャーミングをジュンスに近づけないために、少し卑怯な手を使い、自分も失脚することになったが、後悔はしていなかった。
少なくとも、これでプリンス・チャーミングの命を救うことはできたのだ。
それに、すべてを失ったと思ったが、そうではなかった。
今では心のままに生きる自由があり、おまけにプリンス・チャーミングまでがそばにいた。
これ以上何も望むことは無かった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

【完結】貴方達から離れたら思った以上に幸せです!
なか
恋愛
「君の妹を正妻にしたい。ナターリアは側室になり、僕を支えてくれ」
信じられない要求を口にした夫のヴィクターは、私の妹を抱きしめる。
私の両親も同様に、妹のために受け入れろと口を揃えた。
「お願いお姉様、私だってヴィクター様を愛したいの」
「ナターリア。姉として受け入れてあげなさい」
「そうよ、貴方はお姉ちゃんなのよ」
妹と両親が、好き勝手に私を責める。
昔からこうだった……妹を庇護する両親により、私の人生は全て妹のために捧げていた。
まるで、妹の召使のような半生だった。
ようやくヴィクターと結婚して、解放されたと思っていたのに。
彼を愛して、支え続けてきたのに……
「ナターリア。これからは妹と一緒に幸せになろう」
夫である貴方が私を裏切っておきながら、そんな言葉を吐くのなら。
もう、いいです。
「それなら、私が出て行きます」
……
「「「……え?」」」
予想をしていなかったのか、皆が固まっている。
でも、もう私の考えは変わらない。
撤回はしない、決意は固めた。
私はここから逃げ出して、自由を得てみせる。
だから皆さん、もう関わらないでくださいね。
◇◇◇◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
あはれの継続
宮島永劫
ミステリー
一人の学芸員が行方不明になった。その学芸員はある美術品を追って片田舎の山田村に入ったらしい。その山田村は財政が健全で、美しい町並み、手つかずの自然が残っている。そこに目を付けた隣の市長・酒井は国から財政優遇措置を受けるため『平成の大合併』という名の侵略を企む。拒む山田村村長・宮本に対し、県知事・柳沢、秘書・柳生、秘境映像を狙うTVディレクター・水野、美術品を狙う学芸員・田沼など欲の深い人間が攻めてくる。祖父の田舎・山田村を守るために主人公・中島良文が立ち上がる。『あはれ』と美術品を巡る青春ミステリー。

シニカル ショート ストーリーズ
直木俊
ミステリー
一話完結、3分で読める、日常のなかの異世界、ハッピーエンドではないけど笑える、意外でざまぁでコメディギャグホラーミステリーで切ない結末の短編集。恋愛物語やファンタジーや美少女や転生やラブコメはないけど、いつでもスキマ時間で楽しむことができるコンパクト設計。今、一部限定地区で評判の腹の出たオッサンが綴る、愛と感動と涙と別れと小じわ、噂の超大作ここに誕生、とSEO対策しまくった紹介文で乙
夢追い旅
夢人
ミステリー
働き始めた頃、繰り返し繰り返し山手線をぐるぐる回っている夢を見続けていました。これは仕事に慣れないノイローゼかと思っていました。何度も駅に降りてみるのですが自分の駅でないのです。それが初めてここではないかと思って降りて見ました。でも降りた駅が今度は思い出せないのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる