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地上編 第2章 プリンス・チャーミングとジュンス
第7話 写真を公開しない見返りは・・・
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その日、プリンス・チャーミングはジュンスと約束をしていたわけではなかったが、また図書館へ行くつもりだった。最近、ジュンスとプリンス・チャーミングは時々図書館で会うことが多かった。
約束をして会っているわけではなく、偶然会うのだから、問題ないとふたりは思っていた。
その日、プリンス・チャーミングは図書館へ出かける直前に、とつぜんオーナーから呼び出しがあり、先に特別室へ行くことになった。
彼はその日、休みをもらっていたので、「なんだろう?」と不思議に思いながらも、オーナーが待つ特別室へ向かった。そして特別室のドアを開けた時、そこに先客がいることを知りプリンス・チャーミングは驚いた。
そこにいたのは、プリンス・チャーミングに異常な執着心を見せる大富豪の息子チャールズ・スペンサーだったからだ。彼もプリンス・チャーミングにとっては避けたいクラブ会員だった。
ドアが閉められ、オーナーが重たい口を開いた。
「プリンス・チャーミング、君がパラダイスの規則を破って、会員と外で秘密裏に会っていると申し立てがあってね」
チャールズが意味深な笑顔をプリンス・チャーミングに投げかけた。
オーナーは静かに、プリンス・チャーミングに数枚の写真を見せた。
それはプリンス・チャーミングとジュンスの写真だった。
ジュンスと楽しそうに街中を歩く姿、二人で楽しそうに食事をする姿、そして別れ際のハグをしているところまでも撮られていた。
「君は知らなかったのか? この写真が出回ると、この会員はたぶん王位継承権を失うことになる」
「エッ・・・!」
「彼の国では、同性愛は御法度なんだ」
「僕たちはそんな関係ではありません」
と、とうぜんプリンス・チャーミングは反論した。
「事実など、関係ない。この写真を見て、受ける印象が問題なのだ。
この写真を見たら、ほとんどの人は君たちの関係を恋人同士だと思うはずだ」
と、オーナーは冷たく言い放った。
「しかし幸い、この写真の持ち主は、うちの会員だ。彼は、条件によってはこの写真を公表しないと、言ってくれた」
「最初に言うが、もう二度とジュンス皇子と個人的に会うことは許さない。個人的には会わないことを、誓ってもらう。そしてもし破れば、ジュンス皇子は絶対王になれないと思え!」
とオーナーはよりいっそう険しく厳しい口調でプリンス・チャーミングに言った。
「それからこの夏は特別に、スペンサーさまと一緒にバケーションを過ごすことを許そう。君がスペンサーさまのご好意を受け入れるならば、この写真は公表しないと約束してくれた」
この場の勝者は、すでに決まっていた。
チャールズは静かにプリンス・チャーミングの手を取り、
「さあ、話し合いはこれで終わりだ。
車を用意してあるから、さっそく行くとしよう」
と言うと、困惑しているプリンス・チャーミングを引き寄せ、抱きしめた。
「オーナーと話はついているから、君は何も心配しなくていい。
楽しいバケーションを過ごそう! 今年の夏は、君と僕はずっと一緒だ」
と、楽しそうに言った。
約束をして会っているわけではなく、偶然会うのだから、問題ないとふたりは思っていた。
その日、プリンス・チャーミングは図書館へ出かける直前に、とつぜんオーナーから呼び出しがあり、先に特別室へ行くことになった。
彼はその日、休みをもらっていたので、「なんだろう?」と不思議に思いながらも、オーナーが待つ特別室へ向かった。そして特別室のドアを開けた時、そこに先客がいることを知りプリンス・チャーミングは驚いた。
そこにいたのは、プリンス・チャーミングに異常な執着心を見せる大富豪の息子チャールズ・スペンサーだったからだ。彼もプリンス・チャーミングにとっては避けたいクラブ会員だった。
ドアが閉められ、オーナーが重たい口を開いた。
「プリンス・チャーミング、君がパラダイスの規則を破って、会員と外で秘密裏に会っていると申し立てがあってね」
チャールズが意味深な笑顔をプリンス・チャーミングに投げかけた。
オーナーは静かに、プリンス・チャーミングに数枚の写真を見せた。
それはプリンス・チャーミングとジュンスの写真だった。
ジュンスと楽しそうに街中を歩く姿、二人で楽しそうに食事をする姿、そして別れ際のハグをしているところまでも撮られていた。
「君は知らなかったのか? この写真が出回ると、この会員はたぶん王位継承権を失うことになる」
「エッ・・・!」
「彼の国では、同性愛は御法度なんだ」
「僕たちはそんな関係ではありません」
と、とうぜんプリンス・チャーミングは反論した。
「事実など、関係ない。この写真を見て、受ける印象が問題なのだ。
この写真を見たら、ほとんどの人は君たちの関係を恋人同士だと思うはずだ」
と、オーナーは冷たく言い放った。
「しかし幸い、この写真の持ち主は、うちの会員だ。彼は、条件によってはこの写真を公表しないと、言ってくれた」
「最初に言うが、もう二度とジュンス皇子と個人的に会うことは許さない。個人的には会わないことを、誓ってもらう。そしてもし破れば、ジュンス皇子は絶対王になれないと思え!」
とオーナーはよりいっそう険しく厳しい口調でプリンス・チャーミングに言った。
「それからこの夏は特別に、スペンサーさまと一緒にバケーションを過ごすことを許そう。君がスペンサーさまのご好意を受け入れるならば、この写真は公表しないと約束してくれた」
この場の勝者は、すでに決まっていた。
チャールズは静かにプリンス・チャーミングの手を取り、
「さあ、話し合いはこれで終わりだ。
車を用意してあるから、さっそく行くとしよう」
と言うと、困惑しているプリンス・チャーミングを引き寄せ、抱きしめた。
「オーナーと話はついているから、君は何も心配しなくていい。
楽しいバケーションを過ごそう! 今年の夏は、君と僕はずっと一緒だ」
と、楽しそうに言った。
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