12 / 234
地上編 第2章 プリンス・チャーミングとジュンス
第7話 写真を公開しない見返りは・・・
しおりを挟む
その日、プリンス・チャーミングはジュンスと約束をしていたわけではなかったが、また図書館へ行くつもりだった。最近、ジュンスとプリンス・チャーミングは時々図書館で会うことが多かった。
約束をして会っているわけではなく、偶然会うのだから、問題ないとふたりは思っていた。
その日、プリンス・チャーミングは図書館へ出かける直前に、とつぜんオーナーから呼び出しがあり、先に特別室へ行くことになった。
彼はその日、休みをもらっていたので、「なんだろう?」と不思議に思いながらも、オーナーが待つ特別室へ向かった。そして特別室のドアを開けた時、そこに先客がいることを知りプリンス・チャーミングは驚いた。
そこにいたのは、プリンス・チャーミングに異常な執着心を見せる大富豪の息子チャールズ・スペンサーだったからだ。彼もプリンス・チャーミングにとっては避けたいクラブ会員だった。
ドアが閉められ、オーナーが重たい口を開いた。
「プリンス・チャーミング、君がパラダイスの規則を破って、会員と外で秘密裏に会っていると申し立てがあってね」
チャールズが意味深な笑顔をプリンス・チャーミングに投げかけた。
オーナーは静かに、プリンス・チャーミングに数枚の写真を見せた。
それはプリンス・チャーミングとジュンスの写真だった。
ジュンスと楽しそうに街中を歩く姿、二人で楽しそうに食事をする姿、そして別れ際のハグをしているところまでも撮られていた。
「君は知らなかったのか? この写真が出回ると、この会員はたぶん王位継承権を失うことになる」
「エッ・・・!」
「彼の国では、同性愛は御法度なんだ」
「僕たちはそんな関係ではありません」
と、とうぜんプリンス・チャーミングは反論した。
「事実など、関係ない。この写真を見て、受ける印象が問題なのだ。
この写真を見たら、ほとんどの人は君たちの関係を恋人同士だと思うはずだ」
と、オーナーは冷たく言い放った。
「しかし幸い、この写真の持ち主は、うちの会員だ。彼は、条件によってはこの写真を公表しないと、言ってくれた」
「最初に言うが、もう二度とジュンス皇子と個人的に会うことは許さない。個人的には会わないことを、誓ってもらう。そしてもし破れば、ジュンス皇子は絶対王になれないと思え!」
とオーナーはよりいっそう険しく厳しい口調でプリンス・チャーミングに言った。
「それからこの夏は特別に、スペンサーさまと一緒にバケーションを過ごすことを許そう。君がスペンサーさまのご好意を受け入れるならば、この写真は公表しないと約束してくれた」
この場の勝者は、すでに決まっていた。
チャールズは静かにプリンス・チャーミングの手を取り、
「さあ、話し合いはこれで終わりだ。
車を用意してあるから、さっそく行くとしよう」
と言うと、困惑しているプリンス・チャーミングを引き寄せ、抱きしめた。
「オーナーと話はついているから、君は何も心配しなくていい。
楽しいバケーションを過ごそう! 今年の夏は、君と僕はずっと一緒だ」
と、楽しそうに言った。
約束をして会っているわけではなく、偶然会うのだから、問題ないとふたりは思っていた。
その日、プリンス・チャーミングは図書館へ出かける直前に、とつぜんオーナーから呼び出しがあり、先に特別室へ行くことになった。
彼はその日、休みをもらっていたので、「なんだろう?」と不思議に思いながらも、オーナーが待つ特別室へ向かった。そして特別室のドアを開けた時、そこに先客がいることを知りプリンス・チャーミングは驚いた。
そこにいたのは、プリンス・チャーミングに異常な執着心を見せる大富豪の息子チャールズ・スペンサーだったからだ。彼もプリンス・チャーミングにとっては避けたいクラブ会員だった。
ドアが閉められ、オーナーが重たい口を開いた。
「プリンス・チャーミング、君がパラダイスの規則を破って、会員と外で秘密裏に会っていると申し立てがあってね」
チャールズが意味深な笑顔をプリンス・チャーミングに投げかけた。
オーナーは静かに、プリンス・チャーミングに数枚の写真を見せた。
それはプリンス・チャーミングとジュンスの写真だった。
ジュンスと楽しそうに街中を歩く姿、二人で楽しそうに食事をする姿、そして別れ際のハグをしているところまでも撮られていた。
「君は知らなかったのか? この写真が出回ると、この会員はたぶん王位継承権を失うことになる」
「エッ・・・!」
「彼の国では、同性愛は御法度なんだ」
「僕たちはそんな関係ではありません」
と、とうぜんプリンス・チャーミングは反論した。
「事実など、関係ない。この写真を見て、受ける印象が問題なのだ。
この写真を見たら、ほとんどの人は君たちの関係を恋人同士だと思うはずだ」
と、オーナーは冷たく言い放った。
「しかし幸い、この写真の持ち主は、うちの会員だ。彼は、条件によってはこの写真を公表しないと、言ってくれた」
「最初に言うが、もう二度とジュンス皇子と個人的に会うことは許さない。個人的には会わないことを、誓ってもらう。そしてもし破れば、ジュンス皇子は絶対王になれないと思え!」
とオーナーはよりいっそう険しく厳しい口調でプリンス・チャーミングに言った。
「それからこの夏は特別に、スペンサーさまと一緒にバケーションを過ごすことを許そう。君がスペンサーさまのご好意を受け入れるならば、この写真は公表しないと約束してくれた」
この場の勝者は、すでに決まっていた。
チャールズは静かにプリンス・チャーミングの手を取り、
「さあ、話し合いはこれで終わりだ。
車を用意してあるから、さっそく行くとしよう」
と言うと、困惑しているプリンス・チャーミングを引き寄せ、抱きしめた。
「オーナーと話はついているから、君は何も心配しなくていい。
楽しいバケーションを過ごそう! 今年の夏は、君と僕はずっと一緒だ」
と、楽しそうに言った。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
芙蓉は後宮で花開く
速見 沙弥
キャラ文芸
下級貴族の親をもつ5人姉弟の長女 蓮花《リェンファ》。
借金返済で苦しむ家計を助けるために後宮へと働きに出る。忙しくも穏やかな暮らしの中、出会ったのは翡翠の色の目をした青年。さらに思いもよらぬ思惑に巻き込まれてゆくーーー
カクヨムでも連載しております。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
放浪探偵の呪詛返し
紫音
ミステリー
※第7回ホラー・ミステリー小説大賞にて異能賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。
【あらすじ】
観光好きで放浪癖のある青年・永久天満は、なぜか行く先々で怪奇現象に悩まされている人々と出会う。しかしそれは三百年前から定められた必然だった。怪異の謎を解き明かし、呪いを返り討ちにするライトミステリー。
※2024/11/7より第二部(第五章以降)の連載を始めました。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
3024年宇宙のスズキ
神谷モロ
SF
俺の名はイチロー・スズキ。
もちろんベースボールとは無関係な一般人だ。
21世紀に生きていた普通の日本人。
ひょんな事故から冷凍睡眠されていたが1000年後の未来に蘇った現代の浦島太郎である。
今は福祉事業団体フリーボートの社員で、福祉船アマテラスの船長だ。
※この作品はカクヨムでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる