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地上編 第2章 プリンス・チャーミングとジュンス
第5話 偶然の再会
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プリンス・チャーミングはオークションの日に初めてジュンスと出会ったのだが、なぜだか初めて出会った気がしなかった。以前から知っているような気がして、ならなかった。
出会った日から、プリンス・チャーミングは不思議な夢を見るようになった。
いつしか不思議な夢は、毎日見る夢となり、夢と云うよりは、現実の出来事であるかのような生々しさを増していった。
それは今までまったく見たことのない世界にいる夢で、夢の中でプリンス・チャーミングは女性だった。
そしていつも一人の青年が絶対絶命の危機のときに現れ、助けてくれるのだが、その命の恩人の顔を見ようとするといつもそこで目が覚めてしまうのだった。
プリンス・チャーミングは時どき正夢を見ることがあった。
そしてこの毎日見る夢が、失われた記憶に何か関連があるような気がしてならなかった。
その日、プリンス・チャーミングは夢の手掛かりが何かつかめるのではないかと思い、図書館と博物館へ行って調べてみることにした。そして外出許可を取り、ひとり街中を歩き、図書館へ向かっていた。
その時、彼の姿を見かけ、プリンス・チャーミングを追いかけたクラブ・パラダイスの会員が二人いた。
一人はジュンスで、プリンス・チャーミングに追い付き、声をかけた。
「プリンス・チャーミング、歩くのが早いね」
突然、現れたジュンスにプリンス・チャーミングは驚いたが、それは嬉しい驚きでもあった。
「僕のこと、忘れた?」
「いえ、覚えてます。この間は、どうもありがとうございました。
初対面で、あんなことを頼んでしまって、恥ずかしいです。でも本当に、助かりました」
目の前の青年は、先日の艶やかで妖艶な姿とは違い、青年と云うよりは、少年のような爽やかさと初々しさに満ちていた。それはまるでサーシャが少し成長して、髪の色を変えて現れたかのようだった。
「昼間、街中で見るとまったく違う印象で驚いたけど、このほうが君に似合っていると思うよ」
ジュンスは一緒に歩きながら、プリンス・チャーミングにそう言った。
その日、ふたりは図書館と博物館へ行き、楽しいひと時を共に過ごした。
お腹がすいたので帰りにレストランで一緒に食事もした。
別れ際にプリンス・チャーミングはジュンスに言った。
「本当の名前ではないんですけれど、親しい友だちは僕のことを『ラブリー』と呼びます。だから今回のように、もし外で出会った時は、そう呼んでください」
偶然出会い、ただ一緒にいて、話していただけだった。
だから、ふたりはそれが後に、大きな問題になるとは、まったく思っていなかった。しかし実際は、違っていた。
出会った日から、プリンス・チャーミングは不思議な夢を見るようになった。
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それは今までまったく見たことのない世界にいる夢で、夢の中でプリンス・チャーミングは女性だった。
そしていつも一人の青年が絶対絶命の危機のときに現れ、助けてくれるのだが、その命の恩人の顔を見ようとするといつもそこで目が覚めてしまうのだった。
プリンス・チャーミングは時どき正夢を見ることがあった。
そしてこの毎日見る夢が、失われた記憶に何か関連があるような気がしてならなかった。
その日、プリンス・チャーミングは夢の手掛かりが何かつかめるのではないかと思い、図書館と博物館へ行って調べてみることにした。そして外出許可を取り、ひとり街中を歩き、図書館へ向かっていた。
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一人はジュンスで、プリンス・チャーミングに追い付き、声をかけた。
「プリンス・チャーミング、歩くのが早いね」
突然、現れたジュンスにプリンス・チャーミングは驚いたが、それは嬉しい驚きでもあった。
「僕のこと、忘れた?」
「いえ、覚えてます。この間は、どうもありがとうございました。
初対面で、あんなことを頼んでしまって、恥ずかしいです。でも本当に、助かりました」
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「昼間、街中で見るとまったく違う印象で驚いたけど、このほうが君に似合っていると思うよ」
ジュンスは一緒に歩きながら、プリンス・チャーミングにそう言った。
その日、ふたりは図書館と博物館へ行き、楽しいひと時を共に過ごした。
お腹がすいたので帰りにレストランで一緒に食事もした。
別れ際にプリンス・チャーミングはジュンスに言った。
「本当の名前ではないんですけれど、親しい友だちは僕のことを『ラブリー』と呼びます。だから今回のように、もし外で出会った時は、そう呼んでください」
偶然出会い、ただ一緒にいて、話していただけだった。
だから、ふたりはそれが後に、大きな問題になるとは、まったく思っていなかった。しかし実際は、違っていた。
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