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地上編 第2章 プリンス・チャーミングとジュンス
第3話 プリンス・チャーミング誕生秘話
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気がついたとき、少年は病院のベッドの上だった。
そしてすべての記憶を失っていた。
自分が何者なのかも思い出せないし、何があったのかも思い出せない。
何か事故に巻き込まらたらしいのだが、その事故と身元につながるような手掛かりは、何ひとつ無かった。
少年は瀕死の重傷を負っていて、そんな彼を偶然発見し、病院へ救急搬送したのがクラブ「パラダイス」のオーナーだった。
オーナーは毎日病院へ少年を見舞い、少年が退院できるまで回復したとき、すべての記憶を失い身寄りのない少年に自分の家へこないかと誘った。
そのようにして少年はオーナーの家の住人になった。
その家にはクラブ「パラダイス」のドールを生業とする、将来の成功を夢見ながら過酷な現実を生きていた美しい少年少女たちがたくさんいた。だからその名もなき少年が「プリンス・チャーミング」という新しい名前を得て、クラブ「パラダイス」で働き始めたのは自然な成り行きだった。
ある種、絆ともいえる悲しい連帯意識のもと過酷な現実を一緒に生るドール仲間は「プリンス・チャーミング」の家族のようなものであった。
そしてジュンスは、一緒に過ごしたあの夜、プリンス・チャーミングがジュンスに言った言葉を、なんとはなしに思い出していた。
「僕は戸籍がないんです。だから学校にも行けないし、きちんとした仕事にも就けない。戸籍が無くてもできる仕事って、限られるんです。
あなたの言いたいことはわかるけど、記憶を取り戻さない限り、僕にはすべてが無理なんです」
そう言った時の悲しそうなプリンス・チャーミングの顔が目に浮かんだ。
そしてすべての記憶を失っていた。
自分が何者なのかも思い出せないし、何があったのかも思い出せない。
何か事故に巻き込まらたらしいのだが、その事故と身元につながるような手掛かりは、何ひとつ無かった。
少年は瀕死の重傷を負っていて、そんな彼を偶然発見し、病院へ救急搬送したのがクラブ「パラダイス」のオーナーだった。
オーナーは毎日病院へ少年を見舞い、少年が退院できるまで回復したとき、すべての記憶を失い身寄りのない少年に自分の家へこないかと誘った。
そのようにして少年はオーナーの家の住人になった。
その家にはクラブ「パラダイス」のドールを生業とする、将来の成功を夢見ながら過酷な現実を生きていた美しい少年少女たちがたくさんいた。だからその名もなき少年が「プリンス・チャーミング」という新しい名前を得て、クラブ「パラダイス」で働き始めたのは自然な成り行きだった。
ある種、絆ともいえる悲しい連帯意識のもと過酷な現実を一緒に生るドール仲間は「プリンス・チャーミング」の家族のようなものであった。
そしてジュンスは、一緒に過ごしたあの夜、プリンス・チャーミングがジュンスに言った言葉を、なんとはなしに思い出していた。
「僕は戸籍がないんです。だから学校にも行けないし、きちんとした仕事にも就けない。戸籍が無くてもできる仕事って、限られるんです。
あなたの言いたいことはわかるけど、記憶を取り戻さない限り、僕にはすべてが無理なんです」
そう言った時の悲しそうなプリンス・チャーミングの顔が目に浮かんだ。
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