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地上編 第2章 プリンス・チャーミングとジュンス
第2話 クラブ「パラダイス」のオークションとゲーム
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「オークションの勝者が、あなたで良かった」
と、プリンス・チャーミングはジュンスに言った。
ジュンスはその言葉に、
「君はなんで、こんなことをしているんだ?
とてもまともとは思えない」
と答えた。
「どんな理由があるかは知らないけれど、こんな仕事は早くやめたほうがいい」
と言い捨てると、部屋から出て行こうとした。
そんなジュンスに対してプリンス・チャーミングは、
「僕が気に入らないんですね。でも・・・、もう少しこの部屋にいてくれませんか?」
と、おどおどとした口調で言った。
「今、あなたがこの部屋を出て行くと、今夜、あなたが得た僕というドールに対するさまざまな権利がその時点ですべて消費されたことになります」
「だとしても何も問題ないと思うが・・・」
「僕には、大問題なんです」
とプリンス・チャーミングは顔を曇らせながら言った。
「まだ晩さん会は始まったばかりで、夜は長い。
世界中から集まった会員はこれから始まるゲームをとても楽しみにしているんです」
「どんなゲームを?」
「そのゲームは、“ハイド&シーク”と呼ばれて、ドールが隠れ、それを会員が見つけて、アバンチュールを楽しむものなんだけど、会員はそのゲームを『ペット狩り』と呼んでいます。オークションで相手が決まったドールは別ですが、それ以外のドールはすべて、このゲームの対象となり、『ペット狩り』の獲物ということになるんです。あなたが部屋を出て行った時点で、あなたのオークションの権利はすべて消費されたことになり、僕も狩りの対象にされてしまう。
その時を待っている会員も、たぶん外にはたくさんいるはずです。
僕はこの部屋からルールで出れないことになっていますから、会員にすれば、簡単に見つけられる獲物なんです。
あなたみたいに良い人だったら僕もうれしいけれど、そうじゃない場合のほうが今日は多そうだ。
さっきのオークション、すごく異常だったと思いませんでしたか?」
そう言われてみると、ちょっと異常な雰囲気があった。
「だから、できればこの部屋に、とどまっていてほしいのです」
と、プリンス・チャーミングは少し潤んだ瞳でジュンスに訴えた。
ジュンスは彼のことが、嫌いなわけではなかった。
ただあまりにサーシャに似ていて、つらくなるのだった。
「プリンス・チャーミング」は髪の色が違うだけで、あとはサーシャと瓜二つ・・・と言ってもよいほどよく似ていた。
「君の本当の名前はなんていうの?」
とジュンスが聞くと、
「それはルールで教えられないんです」
とプリンス・チャーミングは答えた。
ジュンスはその答えにむっとなり、怒って立ち去ろうとしたのだが、その時、プリンス・チャーミングがジュンスに抱きついてきて、
「あなたの好きな名前で、呼んでください」
と言った。
間近で見る少年は、本当にサーシャと瓜二つで、ジュンスは思わず、
「サーシャ」と呼んでしまった。
その夜、ジュンスは結局、プリンス・チャーミングの願いを聞き入れ、朝まで彼と一緒にいた。
「あなたはなぜ、あんな大金を払って、オークションで僕を買ったのですか? 何もする気がないのに、あんな大金を払うなんて、あなたこそ気がふれたとしか思えない。
第一、こういうことに興味がないようなのに、なぜオークションに?」
「学生時代、大嫌いだった奴に街中で会ってさ、そいつが私の友人サーシャのことを侮辱して、“サーシャよりも何倍も可愛い新しい愛人を見つけた。見せてやる”、と自慢するから見に来たんだ。それが君だよ」
「それで嫌な友達への腹いせに、オークションで僕を買ったんですか?」
「そうじゃない。君があまりにサーシャに似ていたので、サーシャがオークションにかけられているようなそんな気がした。それもあの、嫌な奴に買われようとしていたから、あまりに可哀そうで、見ていられなかったんだ」
と、プリンス・チャーミングはジュンスに言った。
ジュンスはその言葉に、
「君はなんで、こんなことをしているんだ?
とてもまともとは思えない」
と答えた。
「どんな理由があるかは知らないけれど、こんな仕事は早くやめたほうがいい」
と言い捨てると、部屋から出て行こうとした。
そんなジュンスに対してプリンス・チャーミングは、
「僕が気に入らないんですね。でも・・・、もう少しこの部屋にいてくれませんか?」
と、おどおどとした口調で言った。
「今、あなたがこの部屋を出て行くと、今夜、あなたが得た僕というドールに対するさまざまな権利がその時点ですべて消費されたことになります」
「だとしても何も問題ないと思うが・・・」
「僕には、大問題なんです」
とプリンス・チャーミングは顔を曇らせながら言った。
「まだ晩さん会は始まったばかりで、夜は長い。
世界中から集まった会員はこれから始まるゲームをとても楽しみにしているんです」
「どんなゲームを?」
「そのゲームは、“ハイド&シーク”と呼ばれて、ドールが隠れ、それを会員が見つけて、アバンチュールを楽しむものなんだけど、会員はそのゲームを『ペット狩り』と呼んでいます。オークションで相手が決まったドールは別ですが、それ以外のドールはすべて、このゲームの対象となり、『ペット狩り』の獲物ということになるんです。あなたが部屋を出て行った時点で、あなたのオークションの権利はすべて消費されたことになり、僕も狩りの対象にされてしまう。
その時を待っている会員も、たぶん外にはたくさんいるはずです。
僕はこの部屋からルールで出れないことになっていますから、会員にすれば、簡単に見つけられる獲物なんです。
あなたみたいに良い人だったら僕もうれしいけれど、そうじゃない場合のほうが今日は多そうだ。
さっきのオークション、すごく異常だったと思いませんでしたか?」
そう言われてみると、ちょっと異常な雰囲気があった。
「だから、できればこの部屋に、とどまっていてほしいのです」
と、プリンス・チャーミングは少し潤んだ瞳でジュンスに訴えた。
ジュンスは彼のことが、嫌いなわけではなかった。
ただあまりにサーシャに似ていて、つらくなるのだった。
「プリンス・チャーミング」は髪の色が違うだけで、あとはサーシャと瓜二つ・・・と言ってもよいほどよく似ていた。
「君の本当の名前はなんていうの?」
とジュンスが聞くと、
「それはルールで教えられないんです」
とプリンス・チャーミングは答えた。
ジュンスはその答えにむっとなり、怒って立ち去ろうとしたのだが、その時、プリンス・チャーミングがジュンスに抱きついてきて、
「あなたの好きな名前で、呼んでください」
と言った。
間近で見る少年は、本当にサーシャと瓜二つで、ジュンスは思わず、
「サーシャ」と呼んでしまった。
その夜、ジュンスは結局、プリンス・チャーミングの願いを聞き入れ、朝まで彼と一緒にいた。
「あなたはなぜ、あんな大金を払って、オークションで僕を買ったのですか? 何もする気がないのに、あんな大金を払うなんて、あなたこそ気がふれたとしか思えない。
第一、こういうことに興味がないようなのに、なぜオークションに?」
「学生時代、大嫌いだった奴に街中で会ってさ、そいつが私の友人サーシャのことを侮辱して、“サーシャよりも何倍も可愛い新しい愛人を見つけた。見せてやる”、と自慢するから見に来たんだ。それが君だよ」
「それで嫌な友達への腹いせに、オークションで僕を買ったんですか?」
「そうじゃない。君があまりにサーシャに似ていたので、サーシャがオークションにかけられているようなそんな気がした。それもあの、嫌な奴に買われようとしていたから、あまりに可哀そうで、見ていられなかったんだ」
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